報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「ガス爆発」

2020-08-22 20:37:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月22日08:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は土曜日だが、片付けておきたい事務作業があるので、午前中だけ事務所に行くつもりだ。
 私が自室から出てリビングに行くと、テレビの音がした。
 そこでは夏休みに入ったリサが、ソファに座ってテレビを観ていた。

 リサ:「あ、おはよう、先生」
 愛原:「おはよう。もう起きてたのか。今日から夏休みなんだから、もう少し寝てていいんだぞ」

 コロナ禍の影響でリサ達の学校も、夏休みが今日からたったの10日間という異例の短さになってしまっていた。
 お盆でも休みが無いとは、いやはやコロナ禍凄いものだ。
 辛うじてお盆から夏休みに入れた学校もあったようで、本当に学校によって悲喜こもごもだ。

 リサ:「いつもはもっと早い時間に起きてるから、何だか目が覚めちゃって……」
 愛原:「そうか」
 リサ:「先生は?事務所は土日祝日休みでしょ?」
 愛原:「そうなんだけど、今日は片付けておきたい仕事があるから、午前中だけ行くよ」
 リサ:「先生、私も一緒に行っていい?」
 愛原:「ん?どうしたんだ?斉藤さんは……」
 リサ:「サイトー、今日はお父さん達と那須の別荘だって」
 愛原:「羨ましい限りだ。てか、夏は斉藤社長休めるんだ。そういえば、娘さんの旅行のお守りの仕事の依頼が無かったなぁ!」
 リサ:「他の友達も出掛けたりするみたいだから、ヒマなの」
 愛原:「東京はGoToキャンペーンが除外されたのにねぇ……」

 そういった意味では斉藤家は完全に自費で行くのだろうが、コロナ禍でも行動力のある家族だ。
 あ、でもあれか。
 別荘で家族水入らずで過ごすわけだから、感染の心配とかは無いのか。

 愛原:「分かった分かった。取りあえず今日は事務所へ行こう。いずれ、近場で良ければどこか連れて行ってあげるから」
 リサ:「! おー!」

 リサは私の言葉に喚起し、両手を挙げた。
 リサの癖でハイテンションになると、両手を挙げる。
 少し前まではハイテンションになると、第一形態になってしまったが、今は上手くコントロールできているようだ。

 高橋:「先生、おはようございます!」

 そこへ高橋が部屋から飛び出して来た。

 高橋:「何で言ってくれなかったんスか!言ってくれたら、すぐ朝飯作って用意してたのに……!」
 愛原:「元々休みだし、俺が勝手に休日出勤するだけだからいいかなと思って……」
 高橋:「俺は先生の助手であり、弟子です!どこまでも付いて行きますよ!ええ、地獄の果ての果てまでも!」
 リサ:「うっ……!」

 その時、リサが両手で頭を抱え、ソファに倒れ込んだ。

 愛原:「どうした!?」
 リサ:「な、何でも無い……」

 だが、リサはショックで第一形態になってしまった。

 リサ:「『化け物の……鬼の行く所なんて、どうせ地獄の果てでしかない』」
 愛原:「何だそりゃ?」
 リサ:「昔、研究所で言われたことがあったの。それで私より先に不合格になったコは……」

 リサの目から涙がポロポロ落ちて来た。

 愛原:「これ以上思い出さなくていい。ここは研究所じゃないし、化け物じゃない。安心していいからな」

 私はリサの肩を抱いてあげた。

 高橋:「いや、俺に言わせてもらえれば、こいつは化け物ですって」
 愛原:「高橋!」
 高橋:「サーセン。でも、まだ涙を流せるだけマシってもんだと思います。人間でも、人殺しが平気なヤツは涙1つ流しません」
 愛原:「高橋……」
 高橋:「って、あぁ!?」

 その時、テレビを観た高橋が大声を上げた。
 リサが何を観ていたのか分からなかったが、テレビ画面が報道フロアのような所になっていた。

〔「……繰り返し速報をお送りします。今日午前6時頃、宮城県仙台市若林区○○の住宅街で、大規模な爆発がありました。これは7月30日に発生しました福島県郡山市のガス爆発事故とよく似ており、警察と消防では……」〕

 愛原:「え……?」
 高橋:「この辺って、先生の御実家のある辺りでは?」
 愛原:「そ、そうだよ!」
 高橋:「まだ俺、行ったこと無いんスよねぇ」
 愛原:「当たり前だ!俺自身、何年も帰ってないんだから!」

 私はチャンネルをNHKに変えた。
 高い受信料払ってやってるんだからな!ちゃんといち早く現場を映せよ!

〔「……はい、こちら仙台市若林区○○の爆発現場の近くに来ています」〕

 よっしゃ!さすがNHK!

〔「御覧頂けますでしょうか?物凄い爆発だったらしく、現場周辺の家屋に大きな被害が出ています!何が爆発したのかまでは分かっておりませんが……あっ、すいません!今、警察から現場規制線の拡大が行われました!我々も至急移動するようにとのことです!」〕

 高橋:「せ、先生?今の映像に見覚えが……?」
 愛原:「見覚えがあるも何も……今、リポーターが立ってた道、俺が小学生の頃から通学路に使ってた道だで!?思いっきり近所じゃん!」

 え、まさか私の家が爆発したんじゃあるまいな!?
 私は急いで自分のスマホを取り出した。
 それで実家に掛けてみる。

 愛原:「……ダメだ、繋がらない!」
 高橋:「先生、現場周辺は停電してるみたいっスよ!?」
 愛原:「くそっ!」
 高橋:「先生、早く行きましょう!先生の御家族が心配です!」
 愛原:「あ、ああ!……って、オマエは関係無いだろ!」
 高橋:「言ったじゃないスか!俺は地獄の果てまで付いて行きますって!」
 愛原:「いや、しかしだな!事務所の仕事、どうするんだよ?!むしろオマエにやってもらいたいくらいだよ!」
 高橋:「それにしたって……」

 その時、私のスマホに着信があった。
 画面を見ると、高野君からだった。

 愛原:「もしもし!?」
 高野:「先生、おはようございます。テレビ、ご覧になりましたか?」
 愛原:「俺の実家の近所が大爆発したって話か?」
 高野:「そうです。それで、先生の御家族は?」
 愛原:「まだ安否が分からない。どうも、停電してるみたいで……」
 高野:「でしょうね。先生、今日御出勤でしたっけ?」
 愛原:「午前中、片付けておきたかった事務作業がある」
 高野:「それでしたら事務員の私にお任せください。先生は急いで支度して、現場に向かってくださいな」
 愛原:「そ、そうか!悪いな、高野君!休日出勤手当は弾むから」

 私は電話を電話を切った。

 高橋:「よし、先生!俺は準備万端です!ちょっぱやで支度しました!」
 愛原:「オマエなぁ!」
 高橋:「因みにタクシーも手配済みです」
 愛原:「早っ!」
 リサ:「私も行く!」
 高橋:「オマエは留守番だ!」
 リサ:「やー!」
 高橋:「やーじゃねぇ!」
 愛原:「いや、いいよ!リサも連れて行く!」
 高橋:「いいんスか!?」
 愛原:「リサも事務所の一員だ」
 リサ:「おー!」
 高橋:「俺は先生の一番弟子だぞ!?」
 リサ:「私は先生のお嫁さん」
 高橋:「あぁ!?ンだコラァ!!」
 愛原:「ケンカするなら、2人とも連れて行かないぞ!てかリサ、勝手に嫁宣言するな!読者に誤解される!」

 私はリサを『娘』だと思ってるくらいなんだが、どちらかというと……。

 高橋:「サーセンっした!」
 リサ:「はーい……」

 こうして、私達の緊急旅行が開始された。
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“私立探偵 愛原学” 「この話のラスボスはBOWではなく、人間だった!」

2020-08-21 20:15:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日20:04.天候:晴 東京都大田区羽田空港 京浜急行電鉄羽田空港第1・第2ターミナル駅]

 

 

 空港ターミナルのレストランで食事をした私達は、京浜急行空港線の乗り場に向かった。

 愛原:「あー、歳のせいか、最近はフライ物を食べるともたれやすくなったねぇ……」
 リサ:「先生。まだ40歳にもなってないでしょ」
 愛原:「り、リサ!読者に歳がバレるからやめてくれ!」
 斉藤:「でもアラフォーということは公表してるじゃないですか。うちの担任の先生より若いですよ」
 愛原:「うちの高野君くらいの歳か。あんまり女教師モノは好きじゃないんだよなぁ……」
 リサ:「ん?何の話?」
 愛原:「い、いや、何でもない!」

 地下のホームに行くと、多くのインバウンド客を迎える為か、それは幅広く造られている。
 が、昨今のコロナ禍のせいで飛行機利用客が少ないせいか、明らかに利用客数は通常の3倍……もとい、通常の3分の1くらいの少なさではなかろうか。
 コロナ不況は絶対これから猛威を振るう。
 私の探偵の仕事も大丈夫なのかどうか、とても気になる。

〔「1番線、ご注意ください。折り返し20時11分発、都営地下鉄浅草線、京成線直通、快特、京成高砂行きが参ります。……」〕

 トンネルの向こうからやってきた電車は、東京都交通局の車両だった。
 東京都のマークでもあるイチョウのマークは緑色だ。

〔「ご乗車ありがとうございました。羽田空港第1・第2ターミナル、羽田空港第1・第2ターミナル、終点です。……」〕

 

 京浜急行の車両ならボックスシートもあっただろうが、都営地下鉄の車両となるとロングシートしか無い。
 まあ、腰かけてみると、結構フカフカであるが。

〔「ご案内致します。この電車は20時11分発、京急蒲田、品川、泉岳寺方面、都営地下鉄浅草線、京成線直通、快特、京成高砂行きです。羽田空港第3ターミナル、京急蒲田、品川、泉岳寺の順に停車致します。泉岳寺から先、都営地下鉄浅草線内、京成線内は各駅に止まります。途中通過となります天空橋、穴守稲荷、大鳥居、糀谷でお降りのお客様は、2番線の20時15分発、エアポート急行、逗子・葉山行きをご利用ください。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ:「宿題やった?」
 斉藤:「バッチリ。リサさんとの婚前旅行ですもの。もう即行で終わらせたわよ」
 リサ:「ちょっと待って。今、何旅行って言った?」
 斉藤:「もちろん、婚z……」
 リサ:「あー、聞こえない聞こえない!」

 リサは両耳を押さえた。

 リサ:「何せ第0形態じゃ、耳の聞こえが悪くってw」
 斉藤:「じゃあ第1形態になって!鬼の姿なら聞こえるでしょ!?」
 愛原:「却下!」
 リサ:「先生の許可が下りないので、応対致しかねます」
 斉藤:「パールみたいなこと言ってぇ……」

 どうやら霧崎さん、ワガママ御嬢様に対しては、『旦那様の許可が下りないので、応対致しかねます』と答えているらしい。
 それをリサも聞いていたので、真似したというわけだ。
 というか、こんな公衆の面前で第1形態ですら変化無理だろう。
 善場主任の見解によると、リサの額に鬼の角のようなものが生えるのは、そこが弱点だと分かり易いようにする為らしい。
 リサの体を改造した旧アンブレラの狂科学者達は、万が一リサの牙が自分達に向けられた時の対策を施していたようだ。

[同日20:11.京浜急行電鉄空港線2017T電車先頭車内]

 私達を乗せた快特電車は時刻表通りに発車した。
 あまりスピードの出なさそうな地下鉄の車両だが、これでも快特を名乗る以上、本線で時速120キロ運転をするのだろうか。

〔「ご乗車ありがとうございます。20時11分発、快特、京成高砂行きです。次は羽田空港第3ターミナル、羽田空港第3ターミナルです」〕

 詳しい案内は次の駅を出てから行うようである。
 携帯で調べたところ、乗り換え先の東日本橋駅まではここから30分以上掛かるらしい。
 京急線内は快特として駅を飛ばして行くから良いが、そこから先が遠く感じるのだろう。

 

 リサ:「兄ちゃんは家にいるの?」
 愛原:「まあ、そうだろうな」
 斉藤:「パールには『いい加減にしなさい』と言っておきますから」
 愛原:「申し訳無いねぇ……」
 リサ:「今、メイドさんは家にいるの?」
 斉藤:「いないみたいね。だから、菊川駅には代理の別のメイドが迎えに来ることになっているわ」
 愛原:「最悪クビになるんじゃないか?そんな勝手なことしてたら……」
 斉藤:「そうかもしれませんねぇ……」

[同日21:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学のマンション]

 私達の帰りは順調だった。
 だからその描写がカットされるのは当然だ。
 字数には制限がある。
 しかし、さすがに東日本橋駅から馬喰横山駅へ乗り換える時にあった不思議な電話に関してはカットするべきではないだろう。
 駅名は違えど、都営浅草線の東日本橋駅と都営新宿線の馬喰横山駅は地下道で繋がっており、徒歩連絡可能である。
 その地下道を歩いている時に掛かって来たのが、高橋からの電話だ。
 私が電話に出ると、

 高橋:「先生!た、助けてくだs……うわなにをするやめr」
 愛原:「あ!?」
 高橋:「お、鬼が……鬼が出たーっ!くぁwせdrftgyふじこlp」

 というやり取りがあった。
 何だか分からないが、急いで帰る必要がありそうだ。
 で、私が急いて帰ってみると……。

 霧崎:「お帰りなさいませ。愛原先生……&御嬢様」

 メイドカフェの店員みたいな愛想の良い笑顔と挨拶で霧崎さんに出迎えられた。
 部屋の中に入ると、どうやら霧崎さんがしたのか、部屋中ピカピカに掃除されていた。

 愛原:「な、何をしてるんだ?斉藤さんも帰宅したんだぞ?早いとこ帰ってやれよ」
 霧崎:「もちろん、そうさせて頂きます。ですが、その前に1つお願いがあるのです」
 愛原:「お願い?」

 リサが鼻をフンフンと引くつかせて、高橋の部屋のドアを開けた。

 高橋:「んー!んー!」
 愛原:「なっ!?」

 そこからぐるぐる巻きに縛られ、SMプレイ用のギャグを噛まされた高橋が出て来た。
 しかも、高橋はボコボコにされた後のようである。
 霧崎さんの後ろには鞭やらローソクやら……。
 な、何だ?私達が留守の間、2人でSMプレイでもやってたのか?
 普通はメイドさんコス側がMのはずだが……。

 霧崎:「これです」

 霧崎さんはドヤ顔で婚姻届を私に出して来た。
 既に高橋のサインもされている。
 だが、高橋の名前の所には血が滲んでいた。

 霧崎:「ここに保証人を書く欄が2つあります。1つは旦那様にお願いしました。しかしもう1つは旦那様の御命令で、愛原先生に署名をもらえとのことでございます!」

 しかし、そのもう1つの欄には斉藤社長のサインは無く、空欄だった。

 霧崎:「まずは愛原先生にサインを頂戴し、そうして頂ければ旦那様にもサインを頂けるのです。どうか、よろしくお願いします」
 愛原:「お~ま~え~ら~……!!」

 私の頭の中で何かがキレた。

 愛原:「その前に言う事があるだろぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 その後はリサの回想である。
 私もその後、何が起きたか覚えていないのでリサに解説して頂く。

 リサ:「メイドさんがナイフを振るってきましたが、先生はそれを素手で弾き飛ばしました。で、メイドさんと高橋兄ちゃんを折檻していたんですが、あまりの大惨事に警察は来るわ、マスコミは来るわで、それはもう大変でした。で、婚姻届は先生の手で破り捨てられ、高橋兄ちゃんとメイドさんは血と涙を流しながら土下座を強要されたわけです。ええ、お怒り状態の先生には、私が鬼に変化しても勝てないような気がしました。私、元々先生に逆らうつもりはありませんでしたが、これからもっと気をつけたいと思います」
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“私立探偵 愛原学” 「羽田空港到着」

2020-08-21 11:20:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日18:30.天候:晴 東京都大田区羽田空港 東京国際空港第2ターミナル]

 私達を乗せた飛行機は羽田の上空までやってきた。

 愛原:「今日は天気がいいから、夕日に映える滑走路がきれいだな」
 リサ:「おー!」
 斉藤:「飛行機の旅は、こういう所がいいんですよね」
 愛原:「なるほどな」

 機内のモニタでも、機外の映像が映し出されている。
 滑走路に着陸するところまでが醍醐味かな。

 ドスン!という音がして、タイヤが滑走路の地に付いたことが分かる。

 リサ:「おー!」

 着陸の衝撃もそうだが、その後のフルブレーキによる重圧もなかなかだ。
 もっとも、離陸時の重圧に比べれば何てことはないが。

 愛原:「帰って来たねぇ……」
 リサ:「うん、帰って来た」
 斉藤:「帰って来ました」

 外が薄暗いせいか、地上の誘導員はパドルではなく、誘導灯を振っている。
 その様子もモニターで見ることができる。
 パドルや誘導灯を交差させると、それが停止合図だというのは見ていて分かる。

〔「お待たせ致しました。……」〕

 愛原:「おっ、やっと降りられるみたいだ」

 私達は席を立つとハットラックから荷物を出し、出入口へと向かった。
 飛行機では必ず、出入口は進行方向左側と決まっている。
 これは船舶の習慣から来ているという。
 確かに往路で乗った船も、進行方向左側から乗り降りしたような気がする。
 なので、船の左舷側の事を『ポートサイド(港側)』と呼ぶことがある。

 スッチーCA:「御搭乗ありがとうございました」
 愛原:「お世話さまでした」
 斉藤:「どうもー」
 リサ:「おー!見送りしてくれる!」

 飛行機を降りて、到着ロビーを進む。

 愛原:「リサは飛行機に乗るの、初めてだったか?」
 リサ:「うん。ヘリコプターと輸送機ならある」
 愛原:「ゆ、輸送機!?」
 リサ:「タイラント君やハンターと一緒に、ああいうのに入れられて」

 リサは窓の外を指さした。
 そこでは、別の機体に積み下ろししているコンテナがあった。

 リサ:「船は貨物船だったし」
 愛原:「リサ、俺と一緒にいるからには心配ないぞ!移動は全部旅客車、旅客機、旅客船だ!」
 斉藤:「そうよ。しかも、私とも一緒ならビジネスクラスにも乗れるのよ。……今日は諸事情でエコノミーだったけど」
 愛原:「……すまん。予算が……」
 リサ:「ありがとう。研究所にいた時は『動物扱い』だったけど、研究所を出てからは人間扱いしてくれるようになった」
 愛原:「暴走したら研究所に逆戻りになるだろうから、気をつけないとな」
 リサ:「うん……」

 その時、リサの腹がグーッと鳴った。

 リサ:「お腹空いた」

 リサの右目が多少、金色に変わった。
 リサの話では他のBOWと違い、人間の血肉でないと栄養補給ができんということはなく、普通の食事でOKとのこと。
 だが、あまりにも飢餓状態になると、本当に暴走する。
 リサの場合、1食抜いて『減速』、2食抜いて『注意』、3食抜いて『警戒』、そして4食目には『停止』……いや、【お察しください】。

 愛原:「ああ、分かった。早いとこ高橋と合流して、何か食べよう。幸い羽田空港には、レストランが何軒もある」

 私は鉄道の5灯式信号に例えたが、善場主任の見解だと、3灯式信号らしい。
 1食抜いて『注意』、2食抜いて【お察しください】。
 幸いリサはグルメ思考派ではないので、人間の食べる物なら何でもいいらしい。
 しかし、1食抜くだけで暴走に注意しなければならないとは……。
 面倒臭そうな話に聞こえるが、これでもアメリカのエヴリンよりマシらしい。

 愛原:「いねーじゃん!」

 預けていた荷物を受け取り、それからやっとセキュリティエリアの外に出る。
 出迎えの人達が待ち受けていたが、その中に高橋の姿は無かった。

 リサ:「うーん……兄ちゃんの匂いがしない……」

 リサ、鼻をフンフンと鳴らしながら言った。

 愛原:「匂いで分かるのか。さすがBOW。ちょっと待て。電話してみる」

 私はスマホを取り出した。
 しかし、着信拒否のままにされていた。

 愛原:「ちょっとメールしてみよう!」

 私はメールを送ってみた。
 すると、今度はすぐに返信が来た。

 高橋:『先生、申し訳ありません。寝坊しました(泣)』
 愛原:「こ、こいつは……!」
 リサ:「先生、説教よろしく」
 愛原:「説教だな」
 リサ:「先生、お腹空いた」

 リサは後ろから斉藤さんに抱き付き、斉藤さんの右肩に噛み付く仕草をした。
 もちろん第0形態のままであり、目も人間の目であるから、半分冗談であろう。
 しかし、それが冗談のうちに食事に在りつかせてやらなくては。

 愛原:「分かった分かった。高橋抜きで夕食にしよう。あいつのことは知らん」

 私はそう言うと、ターミナル内のレストランを探すことにした。

 愛原:「八丈島空港のレストランは1軒だけだったが、ここはもう何十軒とあるからな。何が食べたい?」
 リサ:「いっぱい食べれれば何でもいい」
 斉藤:「八丈島では食べれなかった物を食べるというのはどうですか?」
 愛原:「おっ、それはいいな。八丈島では食べれなかった物となると……」

 私がレストランを見繕っている時、善場主任から電話が掛かって来た。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「善場です。羽田空港には着きましたか?」
 愛原:「はい、先ほど。これからターミナルのどこかで、夕食を取ってから帰るつもりです」
 善場:「分かりました。実は今うちの部署で、リサ・トレヴァーにとある装置を着けてもらおうという話が出ていまして……。詳細は明日以降にお話ししたいと思います
 愛原:「リサに装置?実験か何かですか?」
 リサ:「!?」

 リサは『装置』と『実験』という言葉に敏感に反応した。
 姿形は人間のままでありながら、瞳だけは両目とも金色に変化してしまった。

 善場:「実験と言いますか、要はリサ・トレヴァーの状態を管理する装置です。『百聞は一見に如かず』と言います。後日、その装置をお持ちしますので、それでもって直接御説明させて頂きたいと思います」
 愛原:「分かりました。ああ、申し訳ないですが、明日はちょっと予定がありまして……。ええ、明後日なら大丈夫です。……はい。分かりました。それではお待ちしております。……はい。それじゃ、失礼します」

 私は電話を切った。

 リサ:「私、また実験させられるの……?」
 愛原:「どうも話しぶりからして、リサの体をどうこうという話ではないみたいだよ。リサの状態を管理する装置ができたんだって。ま、どんなヤツかは善場さんが直接見せてくれるみたいだから、その時次第だな。リサは学校に行ってる間だから、俺が話を聞くことになるだろう」

 私はそう説明した。

 リサ:「私を研究所に戻す話じゃない?」

 リサは不安そうに聞いた。

 愛原:「ああ。そんなことは一言も出なかった。だから安心していい」

 そう言うと、リサはホッとした顔になった。
 アメリカのエヴリンもまた、研究所に連れて行かれるのを拒絶した為に暴走したらしい。
 それほどまでに、彼女達にとって研究所という所は地獄のような所だということだ。
 彼女達の身に何があったのかは、あえて触れるまい。
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“私立探偵 愛原学” 「いざさらば 八丈島に 別れ告げ 機上の旅も 風情あるかな」

2020-08-20 19:46:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日16:30.天候:晴 東京都八丈町 某レンタカーショップ→八丈島空港]

 八丈島の旅もまもなく終わる。
 私達は借りたレンタカーを返しに、レンタカーショップへ向かった。
 レンタカーを返却する時には必ずガソリンを満タンに入れなければならないが、幸い私が借りた所はガソリンスタンドが併設されている。
 それはまた別料金。
 まあ幸いポイントカードがあるので、それでポイントを貯めることができるか。
 だいぶ貯まったな。
 今度どこかで使おうかな。

 店員:「それでは空港までお送りします」
 愛原:「あ、どうもすいません」

 送迎サービスがあり、私達はショップのワンボックスに乗り込んで空港に向かった。

 斉藤:「先生。父が、『明日の15時くらいでいいか?』だそうです」

 私のすぐ後ろに座っている斉藤さんが、スマホ片手に言った。

 愛原:「15時ね。了解。それでよろしくお願いしますと伝えてくれる?」
 斉藤:「分かりました」

 空港までは、だいたい5~6分程度で到着する。

 店員:「ありがとうございました」
 愛原:「どうもお世話さまでした」
 店員:「お気をつけて」

 空港ターミナルの入口で降ろしてもらう。
 その足で空港内に入った。

 愛原:「先にお土産から見て行こうか」
 リサ:「お土産……」
 斉藤:「クラスの皆に持って行くの、何がいいかしら?」
 愛原:「斉藤さん、律儀だねぇ。でも、学校に持って行っていいの?」
 斉藤:「うちは別に構いませんよ」

 学校への持ち込み品については、本当に学校ごとによって違う。
 この辺はまだ東京中央学園は自由らしい。

 愛原:「俺は高橋と高野君に買って行ってあげよう。ボスにはもう送ったし」

 お騒がせの高橋君にも買って行ってあげるとは、私も律儀だな。
 しかし、空港の売店だから無難な物しか置いていないだろうと思ったが、意外と色々な物があった。
 高橋には適当でいいが、高野君には何がいいか、ついつい迷ってしまう。
 何とか決めた時には、離陸30分前になっていた。
 急いで保安検査場に向かう。

 愛原:「コロナ禍のせいか、あまり人がいないな。いつもなら、きっと俺達みたいな帰り客で賑わってただろうに……」
 斉藤:「こういうのも報告書に書くんですか?」
 愛原:「そういうことになるな」

 コロナ禍の今だからこそ、私達の行動範囲はハッキリしておかなければならない。
 セキュリティエリアの中に入ると、待合ロビーがあり、そこに小さいながらも売店もあるし、トイレも自販機もあった。
 あとは搭乗開始まで、ここで待っていればいい。

 愛原:「高橋からのメール、来ねぇな……」

 私は高橋に予定通りの最終便に乗り、それで帰る旨のメールを送っていた。
 この飛行機が羽田空港のどこに到着するのかもしっかり確認し、その旨も書いている。
 にも関わらず、こいつは返信してこない。
 私からのメールは1分以内に返信してくるヤツなのに……って、また何かあったんじゃないだろうな?
 私は電話してみることにした。
 だが、『お掛けになった電話番号は、お客様の都合により、お繋ぎできません』というメッセージが流れて来た。
 メッセージの内容からするに、どうやら私からの番号をまだ着信拒否にしているようだ。
 しょうがない奴だ。
 トイレの横に公衆電話が1台あるので、それで高橋の携帯に掛けてみた。
 すると、今度は繋がった。
 だが、何回コールしても出ない。
 全くもう……。
 電話を切ってロビーに戻ると、私の携帯が震えた。
 画面を見ると、高橋からのメール。

 高橋:『返信遅れて申し訳ありません!さっきの件、了解です!どうかお気をつけて!』

 とのこと。
 何だよ、ちゃんと返信できるじゃないか。
 帰ったら、説教だな。

[同日17:30.天候:晴 全日空1896便機内]

 予定通り、私達は機上の人となった。
 飛行機はボーイング737-800という、あまり大きくない機体だった。
 中央に通路があり、その両脇にプレミアムシートは2列シート、エコノミークラスは3列シートが置かれている。
 優先搭乗権のあるプレミアムクラスの旅客が先に乗り込めることになっているが、後から私達が乗り込むと、その席には誰も座っていなかった。
 私達は後ろの席に向かう。
 エコノミークラスは、中・近距離高速バスの4列シート並みの広さだ。
 しかし少女達にとっては、お互いに密着しやすいからいいらしい。
 濃厚接触はダメだぞ。

 愛原:「マスクを外していいのは飲み食いしてる時だけな?」
 リサ:「私は大丈夫なのにぃ……」
 愛原:「見た目が人間だからしょうがないだろう。だからといって、第一形態になるのもダメだぞ」
 リサ:「はーい……」

 私は指定された座席の通路側に座ると、前の座席のシートポケットから、ヘッドホンを取り出した。

 リサ:「何それ!?」
 愛原:「これでオーディオが聴けるんだよ」

 もっとも、機内放送が最優先なので、それが入ると容赦なく音楽が途中でも切られてしまい、その放送がガンガン入って来る。

 リサ:「おー!」
 愛原:「俺は音楽でも聴いてるよ」

 リサは空港で買ったお菓子を開けようとした。

 愛原:「それ、お土産じゃないの?」
 リサ:「うん。自分用」
 愛原:「もう食べるのかよ!」

 私は飽きれた。
 本当にリサの食欲には……うん?
 そこで私は、ふとあることに気づいた。

 斉藤:「リサさん、離陸中は飲食できないのよ」
 リサ:「そうなの!?」

 飛行機が動き出したのが分かった。

 愛原:「その代わり、離陸して安定飛行になったら、ジュースをくれるから」
 リサ:「おー、ジュース!」

 離陸の準備に入っている中、機内のモニターでは安全上の注意喚起のビデオが放映される。

 愛原:「なあ、リサ。もしかして腹減ってるか?」
 リサ:「うーん……小腹減った」
 愛原:「もしかしてさ、よほど腹が空いたら暴れるってことある?」
 リサ:「!」

 リサは目を大きく開いて私を見た。

 リサ:「……あると思う」

 そう答えた。
 何でも霧生市でバイオハザードが発生した時、研究所内も混乱したことで、リサ達に対して食事の提供がストップしてしまったという。
 リサが閉じ込められていた檻はタイラントが破壊してくれたが、気がつくとリサは実験用として飼われていたカラスを数羽襲って食べていたらしい。
 食べれそうな物を見つけた時、記憶が飛んでいる。
 つまりこの時、リサは暴走していたということになる。

 リサ:「お腹が空かなければ、多分私は大丈夫」

 幸いなことに、リサの場合は普通の人間の食事でOKである。
 人肉や血液でないとダメということはない。
 それだけ気をつけていれば、私が見た夢のように、第一形態で暴走することもないのではないか。
 そう思った。

 愛原:「そうか。まあ、お腹が空いたら言ってくれ」
 リサ:「今は小腹空いてる」
 愛原:「安定飛行になったら食べていいからな!?それまではガマンしてくれ!」
 リサ:「うん。頑張る」

 今ここで暴走されたら、機内が大変なことになるぞ!
 確か、“バイオハザード6”にそういうシーンがあったな!
 そうこうしているうちに、飛行機は一気に加速し、そして八丈島空港を離陸した。

 リサ:「さようなら。タイラント君

 リサは窓の外に向かってボソッと呟いた。
 今、リサのヤツ、複数形で言わなかったか?
 私達が遭遇したタイラントは1体だけだったはずだが……?
 どういう意味か知りたいような知りたくないような……。
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“私立探偵 愛原学” 「八丈島最終日」

2020-08-20 14:45:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日10:00.天候:晴 東京都八丈町 八丈島三根 リードパークリゾート八丈島]

 私達は滞在していたホテルをチェックアウトした。

 リサ:「先生、飛行機の時間までどうするの?」
 愛原:「そうだな。俺的には、まだ行ってない温泉に行ってみたい気がするんだが……」
 斉藤:「先生は本当に温泉が好きですね」
 愛原:「非日常を味わうのに打ってつけなんだ。本当は海にでも入りたいところなんだけど、コロナ禍じゃ、海水浴場は開いてないしな」

 私達は駐車場に止めていたレンタカーに乗り込んだ。

 斉藤:「うわ、暑い!」
 愛原:「すぐにエンジン掛けるから」

 私は運転席に乗り込むとエンジンを掛けた。
 すぐにエアコンの風がゴォと強く吹いてくる。

 愛原:「それじゃ、まだ行ってない温泉を……と」

 私はカーナビを操作して、まだ行ったことのない温泉を検索した。

 愛原:「“ふれあいの湯”か。よし、ここに行こう」

〔音声案内を開始します。実際の交通規則に従って運転してください〕

 私は車を走らせた。

 愛原:「悪いな、2人とも。俺の趣味に付き合ってもらっちゃって……」

 私はハンドルを握りながら、ルームミラー越しにリアシートのリサ達に行った。

 斉藤:「私はリサさんと裸のお付き合いができるので、全然オッケーです!」
 リサ:「私は先生の行く所だったら、どこにでも行く」
 愛原:「そうか」

[同日10:15.天候:晴 同町樫立地区 樫立向里温泉“ふれあいの湯”]

 車で15分ほど走った温泉場に到着する。

 愛原:「着いたよ」
 リサ:「まずは1軒目」

 車から降りて建物に向かう。

 リサ:「先生、お土産はどうする?」
 愛原:「空港で買えるよ」

 ホテルの売店でもお土産は売っていた。
 しかしそこで私が買ったのは、ボスへのお土産。
 直接ボスへの手渡しはできないので、売店で適当なのを見繕って、そこから発送した。
 財布の中に入れた送り状には、『東京都千代田区大手町【以下、丁目・番・号】 世界探偵協会日本支部関東地区本部東京地区事務所 愛原学探偵事務所担当様』と、随分と長々と宛先が書かれている。
 もちろん、私が書いたものだ。
 もっと略して書けないものかなと思う。
 それとも、『愛原学探偵事務所』という名前を変えるか?いや、でもなぁ……。
 未だにボスのことは分からないが、この宛先で届くことから、探偵協会の人だということは分かっている。
 で、どういう経緯か、事務所を立ち上げたばかりの私の前に現れ(電話越しだが)、私の仕事の面倒を見てくれるという。
 それ以来、クライアントの斡旋だとか、協会の研修やら会議やらに誘われて、たまに参加しているというわけだ。
 そこでもボスに会うことは一度も無かった。
 とはいえ、仕事の面でお世話になっていることは事実。
 お土産くらい発送すべきだと思い、そうしたまでだ。
 あとは斉藤社長だな。
 これはやはり、報告書の提出と一緒に御土産も手渡しの方がいいだろう。

 愛原:「それじゃ、ここでしばしのお別れだな」

 料金を払うと私は男湯に、リサと斉藤さんは女湯に向かった。

 愛原:「ふぅーっ!」

 先に体を洗い、それからまずは内湯に浸かる。
 お湯の濁り方からして、内湯も温泉であるようだ。
 スーパー銭湯とかだと、内湯は普通のお湯で、露天風呂に行ってそこで初めて天然温泉というパターンもある。

 愛原:(飛行機の時間は17時半か……。その約1時間前に到着できるようにするとして、あと2~3軒は行けそうだな)

 八丈島はこのように温泉も豊富な所だ。
 その為、私のような温泉好きが、それ目当てに渡島することもあるとのこと。
 作者の警備会社も今年の慰安旅行はコロナ禍で中止になったことだし、次の慰安旅行先を八丈島にすれば、同じ東京都内なのだから、小池都知事も文句は無いだろう。

[同日10:45.天候:晴 同温泉内 休憩室]

 温泉から上がり、休憩室で少し休む。
 畳敷きの和室で、マッサージチェアがあり、テレビも点いている。

 リサ:「あ゛~つ゛~い゛~そ゛~!」

 リサ、室内にある大型扇風機の前に陣取って涼んでいた。
 ファンの前に向かって喋り、声を震わせている。

 斉藤:「はい、リサさん。お風呂上がりのスポーツドリンク」
 リサ:「お゛お゛~!」

 斉藤さんは休憩室内にある自動販売機で、スポーツドリンクを買って来た。
 リサはそれを受け取って、半分ほど一気に飲み干した。

 リサ:「プハハーッ!」(≧∇≦)
 斉藤:「リサさん、いい飲みっぷり!」(・∀・)イイネ!!

 全く、無邪気なもんだ。
 やはり私が昨夜見た悪夢は、やっぱりただの夢だったのだろうな。
 うん、そう信じたい。
 因みに私は、マッサージチェアで寛いでいた。
 さて、次はどこに行こうか……。

 斉藤:「あ、先生。さっき父から連絡があったんですけど、報告書は明日以降でいいそうです」
 愛原:「ああ、やっぱりか」

 まあ、どうせ帰着するのは夜になるんだから、そういうことになりそうだ。

 愛原:「お父さんに明日の午後、会社の方に伺うと伝えてくれないか?」
 斉藤:「明日の午後ですか?」
 愛原:「ああ。午前中に報告書を書くから」
 斉藤:「分かりました」

 マッサージチェアが終わったら、次の温泉に行くか。

 愛原:「ん?もう終わりか」

 マッサージチェアから起き上がると、電話が掛かって来た。
 画面を見ると、ボスからだった。

 愛原:「珍しいな。……はい、もしもし?」
 ボス:「私だ」

 相変わらずの受け答え。
 もちろん、ボスの名前が『ワタシ』さんというわけではない。

 ボス:「どうかね?八丈島旅行、満喫してるかね?」
 愛原:「どうして知ってるんですか……」
 ボス:「奇遇だからだよ。実は私も八丈島にいたのだ。はっはっはっ」
 愛原:「ええっ!?」
 ボス:「今、私は洋上にいるよ。自分用のお土産は買ったが、キミのお土産も期待しているよ。私の気に入る物が届いたなら、キミにもっと素晴らしい仕事を紹介しよう」
 愛原:「本当ですか!」
 ボス:「ああ。それと、これはキミに忠告なのだが……JCお宝映像はお宝映像として、秘蔵しておくことだ」
 愛原:「何の話ですか?」
 ボス:「如何にリサ・トレヴァーが『おませ』だからと言って、本来ならモザイクが掛かるような映像の部分だけはカットし、クライアントに提出しないと大変なことになるよ、と」
 愛原:「だから何で知ってるんですか!」

 先日、ホテルのプールでリサ達を撮影している時、リサだけが私の前で水着を捲って見せたことか……。
 怖ぇー!探偵協会、怖ぇ!
 いつの間に監視されていたのやら……。
コメント
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