[8月22日08:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は土曜日だが、片付けておきたい事務作業があるので、午前中だけ事務所に行くつもりだ。
私が自室から出てリビングに行くと、テレビの音がした。
そこでは夏休みに入ったリサが、ソファに座ってテレビを観ていた。
リサ:「あ、おはよう、先生」
愛原:「おはよう。もう起きてたのか。今日から夏休みなんだから、もう少し寝てていいんだぞ」
コロナ禍の影響でリサ達の学校も、夏休みが今日からたったの10日間という異例の短さになってしまっていた。
お盆でも休みが無いとは、いやはやコロナ禍凄いものだ。
辛うじてお盆から夏休みに入れた学校もあったようで、本当に学校によって悲喜こもごもだ。
リサ:「いつもはもっと早い時間に起きてるから、何だか目が覚めちゃって……」
愛原:「そうか」
リサ:「先生は?事務所は土日祝日休みでしょ?」
愛原:「そうなんだけど、今日は片付けておきたい仕事があるから、午前中だけ行くよ」
リサ:「先生、私も一緒に行っていい?」
愛原:「ん?どうしたんだ?斉藤さんは……」
リサ:「サイトー、今日はお父さん達と那須の別荘だって」
愛原:「羨ましい限りだ。てか、夏は斉藤社長休めるんだ。そういえば、娘さんの旅行のお守りの仕事の依頼が無かったなぁ!」
リサ:「他の友達も出掛けたりするみたいだから、ヒマなの」
愛原:「東京はGoToキャンペーンが除外されたのにねぇ……」
そういった意味では斉藤家は完全に自費で行くのだろうが、コロナ禍でも行動力のある家族だ。
あ、でもあれか。
別荘で家族水入らずで過ごすわけだから、感染の心配とかは無いのか。
愛原:「分かった分かった。取りあえず今日は事務所へ行こう。いずれ、近場で良ければどこか連れて行ってあげるから」
リサ:「! おー!」
リサは私の言葉に喚起し、両手を挙げた。
リサの癖でハイテンションになると、両手を挙げる。
少し前まではハイテンションになると、第一形態になってしまったが、今は上手くコントロールできているようだ。
高橋:「先生、おはようございます!」
そこへ高橋が部屋から飛び出して来た。
高橋:「何で言ってくれなかったんスか!言ってくれたら、すぐ朝飯作って用意してたのに……!」
愛原:「元々休みだし、俺が勝手に休日出勤するだけだからいいかなと思って……」
高橋:「俺は先生の助手であり、弟子です!どこまでも付いて行きますよ!ええ、地獄の果ての果てまでも!」
リサ:「うっ……!」
その時、リサが両手で頭を抱え、ソファに倒れ込んだ。
愛原:「どうした!?」
リサ:「な、何でも無い……」
だが、リサはショックで第一形態になってしまった。
リサ:「『化け物の……鬼の行く所なんて、どうせ地獄の果てでしかない』」
愛原:「何だそりゃ?」
リサ:「昔、研究所で言われたことがあったの。それで私より先に不合格になったコは……」
リサの目から涙がポロポロ落ちて来た。
愛原:「これ以上思い出さなくていい。ここは研究所じゃないし、化け物じゃない。安心していいからな」
私はリサの肩を抱いてあげた。
高橋:「いや、俺に言わせてもらえれば、こいつは化け物ですって」
愛原:「高橋!」
高橋:「サーセン。でも、まだ涙を流せるだけマシってもんだと思います。人間でも、人殺しが平気なヤツは涙1つ流しません」
愛原:「高橋……」
高橋:「って、あぁ!?」
その時、テレビを観た高橋が大声を上げた。
リサが何を観ていたのか分からなかったが、テレビ画面が報道フロアのような所になっていた。
〔「……繰り返し速報をお送りします。今日午前6時頃、宮城県仙台市若林区○○の住宅街で、大規模な爆発がありました。これは7月30日に発生しました福島県郡山市のガス爆発事故とよく似ており、警察と消防では……」〕
愛原:「え……?」
高橋:「この辺って、先生の御実家のある辺りでは?」
愛原:「そ、そうだよ!」
高橋:「まだ俺、行ったこと無いんスよねぇ」
愛原:「当たり前だ!俺自身、何年も帰ってないんだから!」
私はチャンネルをNHKに変えた。
高い受信料払ってやってるんだからな!ちゃんといち早く現場を映せよ!
〔「……はい、こちら仙台市若林区○○の爆発現場の近くに来ています」〕
よっしゃ!さすがNHK!
〔「御覧頂けますでしょうか?物凄い爆発だったらしく、現場周辺の家屋に大きな被害が出ています!何が爆発したのかまでは分かっておりませんが……あっ、すいません!今、警察から現場規制線の拡大が行われました!我々も至急移動するようにとのことです!」〕
高橋:「せ、先生?今の映像に見覚えが……?」
愛原:「見覚えがあるも何も……今、リポーターが立ってた道、俺が小学生の頃から通学路に使ってた道だで!?思いっきり近所じゃん!」
え、まさか私の家が爆発したんじゃあるまいな!?
私は急いで自分のスマホを取り出した。
それで実家に掛けてみる。
愛原:「……ダメだ、繋がらない!」
高橋:「先生、現場周辺は停電してるみたいっスよ!?」
愛原:「くそっ!」
高橋:「先生、早く行きましょう!先生の御家族が心配です!」
愛原:「あ、ああ!……って、オマエは関係無いだろ!」
高橋:「言ったじゃないスか!俺は地獄の果てまで付いて行きますって!」
愛原:「いや、しかしだな!事務所の仕事、どうするんだよ?!むしろオマエにやってもらいたいくらいだよ!」
高橋:「それにしたって……」
その時、私のスマホに着信があった。
画面を見ると、高野君からだった。
愛原:「もしもし!?」
高野:「先生、おはようございます。テレビ、ご覧になりましたか?」
愛原:「俺の実家の近所が大爆発したって話か?」
高野:「そうです。それで、先生の御家族は?」
愛原:「まだ安否が分からない。どうも、停電してるみたいで……」
高野:「でしょうね。先生、今日御出勤でしたっけ?」
愛原:「午前中、片付けておきたかった事務作業がある」
高野:「それでしたら事務員の私にお任せください。先生は急いで支度して、現場に向かってくださいな」
愛原:「そ、そうか!悪いな、高野君!休日出勤手当は弾むから」
私は電話を電話を切った。
高橋:「よし、先生!俺は準備万端です!ちょっぱやで支度しました!」
愛原:「オマエなぁ!」
高橋:「因みにタクシーも手配済みです」
愛原:「早っ!」
リサ:「私も行く!」
高橋:「オマエは留守番だ!」
リサ:「やー!」
高橋:「やーじゃねぇ!」
愛原:「いや、いいよ!リサも連れて行く!」
高橋:「いいんスか!?」
愛原:「リサも事務所の一員だ」
リサ:「おー!」
高橋:「俺は先生の一番弟子だぞ!?」
リサ:「私は先生のお嫁さん」
高橋:「あぁ!?ンだコラァ!!」
愛原:「ケンカするなら、2人とも連れて行かないぞ!てかリサ、勝手に嫁宣言するな!読者に誤解される!」
私はリサを『娘』だと思ってるくらいなんだが、どちらかというと……。
高橋:「サーセンっした!」
リサ:「はーい……」
こうして、私達の緊急旅行が開始された。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は土曜日だが、片付けておきたい事務作業があるので、午前中だけ事務所に行くつもりだ。
私が自室から出てリビングに行くと、テレビの音がした。
そこでは夏休みに入ったリサが、ソファに座ってテレビを観ていた。
リサ:「あ、おはよう、先生」
愛原:「おはよう。もう起きてたのか。今日から夏休みなんだから、もう少し寝てていいんだぞ」
コロナ禍の影響でリサ達の学校も、夏休みが今日からたったの10日間という異例の短さになってしまっていた。
お盆でも休みが無いとは、いやはやコロナ禍凄いものだ。
辛うじてお盆から夏休みに入れた学校もあったようで、本当に学校によって悲喜こもごもだ。
リサ:「いつもはもっと早い時間に起きてるから、何だか目が覚めちゃって……」
愛原:「そうか」
リサ:「先生は?事務所は土日祝日休みでしょ?」
愛原:「そうなんだけど、今日は片付けておきたい仕事があるから、午前中だけ行くよ」
リサ:「先生、私も一緒に行っていい?」
愛原:「ん?どうしたんだ?斉藤さんは……」
リサ:「サイトー、今日はお父さん達と那須の別荘だって」
愛原:「羨ましい限りだ。てか、夏は斉藤社長休めるんだ。そういえば、娘さんの旅行のお守りの仕事の依頼が無かったなぁ!」
リサ:「他の友達も出掛けたりするみたいだから、ヒマなの」
愛原:「東京はGoToキャンペーンが除外されたのにねぇ……」
そういった意味では斉藤家は完全に自費で行くのだろうが、コロナ禍でも行動力のある家族だ。
あ、でもあれか。
別荘で家族水入らずで過ごすわけだから、感染の心配とかは無いのか。
愛原:「分かった分かった。取りあえず今日は事務所へ行こう。いずれ、近場で良ければどこか連れて行ってあげるから」
リサ:「! おー!」
リサは私の言葉に喚起し、両手を挙げた。
リサの癖でハイテンションになると、両手を挙げる。
少し前まではハイテンションになると、第一形態になってしまったが、今は上手くコントロールできているようだ。
高橋:「先生、おはようございます!」
そこへ高橋が部屋から飛び出して来た。
高橋:「何で言ってくれなかったんスか!言ってくれたら、すぐ朝飯作って用意してたのに……!」
愛原:「元々休みだし、俺が勝手に休日出勤するだけだからいいかなと思って……」
高橋:「俺は先生の助手であり、弟子です!どこまでも付いて行きますよ!ええ、地獄の果ての果てまでも!」
リサ:「うっ……!」
その時、リサが両手で頭を抱え、ソファに倒れ込んだ。
愛原:「どうした!?」
リサ:「な、何でも無い……」
だが、リサはショックで第一形態になってしまった。
リサ:「『化け物の……鬼の行く所なんて、どうせ地獄の果てでしかない』」
愛原:「何だそりゃ?」
リサ:「昔、研究所で言われたことがあったの。それで私より先に不合格になったコは……」
リサの目から涙がポロポロ落ちて来た。
愛原:「これ以上思い出さなくていい。ここは研究所じゃないし、化け物じゃない。安心していいからな」
私はリサの肩を抱いてあげた。
高橋:「いや、俺に言わせてもらえれば、こいつは化け物ですって」
愛原:「高橋!」
高橋:「サーセン。でも、まだ涙を流せるだけマシってもんだと思います。人間でも、人殺しが平気なヤツは涙1つ流しません」
愛原:「高橋……」
高橋:「って、あぁ!?」
その時、テレビを観た高橋が大声を上げた。
リサが何を観ていたのか分からなかったが、テレビ画面が報道フロアのような所になっていた。
〔「……繰り返し速報をお送りします。今日午前6時頃、宮城県仙台市若林区○○の住宅街で、大規模な爆発がありました。これは7月30日に発生しました福島県郡山市のガス爆発事故とよく似ており、警察と消防では……」〕
愛原:「え……?」
高橋:「この辺って、先生の御実家のある辺りでは?」
愛原:「そ、そうだよ!」
高橋:「まだ俺、行ったこと無いんスよねぇ」
愛原:「当たり前だ!俺自身、何年も帰ってないんだから!」
私はチャンネルをNHKに変えた。
高い受信料払ってやってるんだからな!ちゃんといち早く現場を映せよ!
〔「……はい、こちら仙台市若林区○○の爆発現場の近くに来ています」〕
よっしゃ!さすがNHK!
〔「御覧頂けますでしょうか?物凄い爆発だったらしく、現場周辺の家屋に大きな被害が出ています!何が爆発したのかまでは分かっておりませんが……あっ、すいません!今、警察から現場規制線の拡大が行われました!我々も至急移動するようにとのことです!」〕
高橋:「せ、先生?今の映像に見覚えが……?」
愛原:「見覚えがあるも何も……今、リポーターが立ってた道、俺が小学生の頃から通学路に使ってた道だで!?思いっきり近所じゃん!」
え、まさか私の家が爆発したんじゃあるまいな!?
私は急いで自分のスマホを取り出した。
それで実家に掛けてみる。
愛原:「……ダメだ、繋がらない!」
高橋:「先生、現場周辺は停電してるみたいっスよ!?」
愛原:「くそっ!」
高橋:「先生、早く行きましょう!先生の御家族が心配です!」
愛原:「あ、ああ!……って、オマエは関係無いだろ!」
高橋:「言ったじゃないスか!俺は地獄の果てまで付いて行きますって!」
愛原:「いや、しかしだな!事務所の仕事、どうするんだよ?!むしろオマエにやってもらいたいくらいだよ!」
高橋:「それにしたって……」
その時、私のスマホに着信があった。
画面を見ると、高野君からだった。
愛原:「もしもし!?」
高野:「先生、おはようございます。テレビ、ご覧になりましたか?」
愛原:「俺の実家の近所が大爆発したって話か?」
高野:「そうです。それで、先生の御家族は?」
愛原:「まだ安否が分からない。どうも、停電してるみたいで……」
高野:「でしょうね。先生、今日御出勤でしたっけ?」
愛原:「午前中、片付けておきたかった事務作業がある」
高野:「それでしたら事務員の私にお任せください。先生は急いで支度して、現場に向かってくださいな」
愛原:「そ、そうか!悪いな、高野君!休日出勤手当は弾むから」
私は電話を電話を切った。
高橋:「よし、先生!俺は準備万端です!ちょっぱやで支度しました!」
愛原:「オマエなぁ!」
高橋:「因みにタクシーも手配済みです」
愛原:「早っ!」
リサ:「私も行く!」
高橋:「オマエは留守番だ!」
リサ:「やー!」
高橋:「やーじゃねぇ!」
愛原:「いや、いいよ!リサも連れて行く!」
高橋:「いいんスか!?」
愛原:「リサも事務所の一員だ」
リサ:「おー!」
高橋:「俺は先生の一番弟子だぞ!?」
リサ:「私は先生のお嫁さん」
高橋:「あぁ!?ンだコラァ!!」
愛原:「ケンカするなら、2人とも連れて行かないぞ!てかリサ、勝手に嫁宣言するな!読者に誤解される!」
私はリサを『娘』だと思ってるくらいなんだが、どちらかというと……。
高橋:「サーセンっした!」
リサ:「はーい……」
こうして、私達の緊急旅行が開始された。