報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「橘丸」 一夜明けて

2020-08-02 20:59:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日02:30.天候:晴 東海汽船 橘丸5F客室]

 愛原:「ん……」

 夜中にふと目を覚ました私。
 トイレに行きたくなった。
 どうやら寝る前にビールを飲んだせいかな。
 私は家にいる感覚で足をベッドの外に出そうとして気が付いた。
 今、私は2段ベッドの上段で寝ていることを。
 私はそっとカーテンを開けて、梯子を下りた。
 そして部屋備え付けのトイレに入る。
 シャワールームや洗面台と一緒になっている。
 今は使わないが、ウォシュレット機能付きである。
 さすがは上級船客向けの船室だと思ったが、実は共用トイレもその機能が付いているらしい。
 手を洗って部屋の外に出ようとすると、いつの間にか背後にリサが立っていた。

 愛原:「わっ!……な、何をしてるんだ?」
 リサ:「順番待ち。私もトイレ」

 リサは両手で黒いスパッツの腰部分を掴み、今にも脱ごうとしていた。

 愛原:「わ、分かったよ。どうぞ、ごゆっくり」

 私はトイレから出ると、すぐに自分のベッドに戻った。

 斉藤:「リサさぁん……萌えへへへへ……」

 部屋は消灯しているが、窓から月明りがカーテン越しに差し込んでいる。
 どうやら晴れたらしい。
 心なしか、揺れもそんなに大きくないような気がする。
 どうやら斉藤さんは、リサと【ラブラブ】【イケイケ】の夢でも見ているようだ。
 幸せなことだ。
 各ベッドにはカーテンが付いていて、私も霧崎さんも閉めて寝ていたが、何故か斉藤さんは開けて寝ていた。
 暑いのだろうか?
 部屋は冷房がガンガンに効いていて、多少寒いくらいだが。

 リサ:「どうしたの?」

 トイレから戻って来たリサが小声で話しかけて来た。
 完全に人間の姿をした第0形態のはずだが、暗闇にリサの目が赤くボウッと光っているように見えた。
 もう、これとて第0形態では無くなってきているのだろうか。

 愛原:「斉藤さん、カーテンを開けて寝てるんだ。閉めてあげた方がいいのかな?」
 リサ:「サイトー、私の寝顔を見ながら寝たいと言っていた。だから」
 愛原:「そ、そうなのか……」
 リサ:「寝落ちしたみたいだし、私はカーテンを閉めて寝る」
 愛原:「ああ。その方がいいよ」
 リサ:「おやすみなさい」
 愛原:「おやすみ」

 私は梯子を昇って、再び自分のベッドに潜り込んだ。

[同日06:00.天候:晴 東京都御蔵島村 同船同室内]

 愛原:「ん……」

 何だか変な夢を見てしまった。
 バイオハザードの発生した大型客船内で、銃を片手に走り回る夢だ。
 時折現れるクリーチャーを銃で倒しながら、船からの脱出を目指すというもの。
 傍らには高橋はおらず、何故かリサと一緒にいた。
 リサは今のところ銃は使えないが、小さな体に似合わず、左腕をタイラントのように太く長く変化させ、拾った鉄パイプを振るってクリーチャーを薙ぎ払ったり、或いは叩き殺したりしていた。
 ここにいるリサは日本モデルの改良版とされるが、アメリカのオリジナル版もまた小さな体に似合わず、とてつもない怪力で特殊部隊を翻弄したという。
 本当はあと1時間寝ていたかったのだが、何だか目が冴えてしまったので、ここで起きることにした。
 枕が変わると抵抗無く起きられるものだ。

 愛原:「んん……」

 私が何の気無しにカーテンを開けると、目の前には浴衣からメイド服に着替えている最中の霧崎さんがいた。
 JC2人のと違い、大人っぽいデザインの黒いブラショーツを着けている。

 霧崎:「愛原先生、おはようございます」
 愛原:「す、スマン!」

 私は急いでカーテンを引いた。

 霧崎:「先生、どうぞお気になさらず」
 愛原:「気にするよ!今でも後でも!」
 霧崎:「どうせ使い道の無い貞操ですから」
 愛原:「そんなこと言うなよ!今は高橋君が欲しがってるじゃないか!」
 霧崎:「先生にも良かったら、御裾分けしますよ?」
 愛原:「後で高橋君に何て言われるか分からんから遠慮しておくよ!」

 カーテンの隙間から覗くと、霧崎さんはやっとワンピースタイプのメイド服を着込んだところだった。

 霧崎:「申し訳ないですねぇ」

 霧崎さんは冷笑にも似た微笑を浮かべた。

 愛原:「いや、いいんだ」

 私はベッドから起き上がると、梯子を下りた。

 霧崎:「先生。浴衣の隙間からパンツがお見えですよ」
 愛原:「男はいいんだよ」

 そう言って、私はベッドから出た。

 愛原:「ん?リサ達も起きたのか?」
 霧崎:「はい。今、朝シャンしておられます」
 愛原:「また入ってるのか……」

 そう言っているうちに、リサ達が出て来た。

 斉藤:「あー、サッパリした。ねぇ、リサさん?」
 リサ:「うん。……あ、先生、おはよう」
 愛原:「おはよう。朝から仲がいいな?」
 斉藤:「あらぁ?今朝に始まったことではありませんわよ?私とリサさんの永遠の愛は」
 リサ:「サイトー、少し黙ってて。先生もシャワー浴びる?背中流すよ?」
 愛原:「ははは、気持ちだけ受け取っておくよ。俺は洗顔と歯磨きと、髭剃りだけするさ」

 私はそう言うと、自分の荷物の中からシェーバーを取り出した。

 斉藤:「今、船止まってるわね?」
 霧崎:「どこかの港に到着したようです」
 愛原:「時刻表的に御蔵島だな。八丈島はこの先だ」

 御蔵島もまた青ヶ島並みに交通不便な離島であるという。
 船はこの後、八丈島に向かうことになるが、もしかして高橋君がいる島ってここだったりして?
 んなわけ無いか……。
 そうこうしているうちに船が動き出した。
 どうやら御蔵島を出港したようである。
 あとは八丈島までノンストップだ。

 リサ:「先生、お腹空いたー」
 愛原:「ああ、分かった。朝の支度が終わったら食べに行こう。……取りあえず、着替えは俺が洗面所に行っている間にしような?」

 さも当たり前のように着替えを始めるリサ。
 そのリサにつられて、自分も着替えようとしていた斉藤さん。
 この2人の下着は霧崎さんのそれと違って、まだまだ子供っぽいデザインである。

 斉藤:「ご、ごめんなさい!」

 斉藤さんは気が付いて、バッと脱いだ服で前を隠した。
 これが普通の人間の女の子の反応だろうに、リサと来たら……。

 リサ:「はーい」

 返事だけして、あとは全く羞恥心の欠片も無かったのだった。
 リサのヤツ、毎朝こうだからすっかり私は慣れちゃったよ。
 恐らくリサとしては、私を『捕食する』為に、『色気』という『餌』を蒔いているつもりなんだろう。
 しかし、今は子供だからアレだが、大人の女性に成長したら……とんでもないことになりそうだな。
コメント
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