[8月22日11:14.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR東北新幹線131B電車1号車内→JR仙台駅]
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。東北新幹線下り、盛岡・新青森方面、東北本線下り、松島・小牛田方面、上り、岩沼・白石方面、仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。……〕
私達を乗せた列車は減速し、カーブの多い市街地区間を走行していた。
愛原:「『東北一の都会とて 其名しられし仙台市 伊達政宗の築きたる 城に師団は置かれたり』」
高橋:「何スか、そのフレーズ?」
愛原:「鉄道唱歌だよ。今は列車のチャイム、鉄道唱歌を流さないからなぁ……」
高橋:「もしかして、『汽笛一声 新橋を……』のヤツっスか?」
愛原:「おー、そうだよ!よく知ってるなぁ!それの東北本線版だよ」
高橋:「たまたまっスよ」
高橋は照れ笑いを浮かべた。
高橋:「他にどんなのがあるんスか?」
愛原:「今の続きが、『阿武隈川の埋木も 仙台平の袴地も 皆この土地の産物ぞ みてゆけここも一日は』だったかな」
高橋:「そうっスか。……何かよく分かんないっス」
愛原:「まあ、今から100年以上も前に作られた歌だから……」
リサ:「先生、その頃から生きてる?」
愛原:「俺は本物の鬼か!」
高橋:「失礼だぞ、このヤロー!」
リサ:「残念。私に噛まれれば、100年以上軽く生きられるのに……」
ちょっと待て。
BOWって不老不死なのか?
高橋:「さり気無く先生を感染させようとすんじゃねぇ!」
〔「長らくの御乗車お疲れさまでした。まもなくこの列車の終点、仙台、仙台です。到着ホームは14番線、お出口は左側です。……」〕
とにかく私は荷棚から自分の荷物を下ろした。
高橋:「先生の御実家、駅から近いんスか?」
愛原:「まあ、車で15分って所かな。ここも高架線だけど、ここからじゃ家が見えなかった。昔は見えたのに……」
高橋:「マジっスか。駅近で便利っスね!」
車で15分掛かる距離って、駅近って言うんだろうか?
列車はポイントを2回渡り、下り本線から一旦上り本線を逆走し、その後で上り副線に入ると、そのホームに滑り込んだ。
〔「ご乗車ありがとうございました。終点、仙台、仙台です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕
列車がホームに停車し、ドアが開く。
私達は定時に到着したその列車を降りた。
仙台市も暑く、降りたら暑い空気に包まれた。
愛原:「北に来たから涼しいってわけでもないな」
高橋:「そうっスね。先生、ここから何で行きますか?」
愛原:「タクシーで行こう。荷物もあるし」
高橋:「はい」
私達は改札口を出た。
東京駅と違い、同じJR線に乗り換えないのであれば、改札口は新幹線のそれを1回通るだけで良い。
あとはタクシー乗り場に移動した。
リサ:「牛タン……笹かまぼこ……萩の月……」
リサは仙台名物のお土産を見て、目を輝かせ、涎を出しそうになった。
愛原:「お土産に買って帰ろうな。うちの実家が無事だったら」
高橋:「リサ、先生の仰る通りだ。場合によっちゃ俺のスーツのネクタイ、黒に換えないといけねぇ」
愛原:「既に持参している時点で、オマエも不謹慎だからな?」
高橋:「さ、サーセン!」
私達はタクシー乗り場に移動すると、そこからタクシーに乗り込んだ。
東京駅に向かう時は高橋が助手席に乗ったが、今度は私が助手席に乗った。
土地勘があるのは私だけだからである。
愛原:「若林区○○までお願いします」
運転手:「○○ですか?……はい」
運転手は取りあえずメーターを作動させて、車を走らせた。
ロータリー出口の信号に引っ掛かる。
運転手:「お客さん、○○地区ですが、今あそこは大規模なガス爆発がありまして、周辺がまだ交通規制掛けられてるんですよ。もしかしたら、途中までしか行けないかもしれませんよ?」
愛原:「でしょうね。まあ、取りあえず行ける所まで行ってください」
運転手:「分かりました」
信号が青に変わり、タクシーは駅前ロータリーを出て私の実家に向かった。
[同日11:40.天候:晴 仙台市若林区某地区]
タクシーは住宅街の市道を走行していた。
そして、ついに……。
運転手:「ああ、そこからもう入れないみたいです」
私の実家がある所へ入る道が、既に警察によって封鎖されていた。
その規制線の向こうからは焦げ臭い臭いが漂って来て、ガス爆発によって火災も起きたことを物語っていた。
リサ:「死臭の臭いがする……」
普通、死臭なら不快な顔をするものだろうが、リサはそうではないらしく、無表情で言った。
愛原:「ここまででいいです」
運転手:「分かりました」
私達は規制線の外側でタクシーを降りた。
そして、そこで警戒に当たっている警察官に話し掛けた。
愛原:「すいません。私、この地区に住んでいる両親の安否を尋ねて駆け付けた者なんですが、この地区は今どうなっているんですか?」
警察官:「この地区の住民の人達は避難所に避難しました。まだガス爆発の危険性が残っている恐れがあり、入ることはできません」
愛原:「避難所はどちらに?」
警察官:「近隣の小学校または中学校です。負傷した人達は病院に搬送しておりますが、まだ瓦礫の下に取り残されている方々もおりまして、今救助活動を行っています」
これはどうやら、福島県で起きたガス爆発よりも規模が大きいみたいだぞ。
本当にガスボンベが爆発しただけなのだろうか。
愛原:「あ、今思い出した」
高橋:「何スか?」
愛原:「両親のどっちかの携帯に掛けりゃ良かったんだ。これでどっちも出なかったら、【お察しください】」
高橋:「掛けてなかったんスか!?」
愛原:「家の固定電話にしか掛けてなかったんだ」
私は自分のスマホを取り出すと、まずは父親に掛けてみることにした。
すると……。
父親:「もしもし?学か?」
愛原:「お父さん!そうだよ、学だよ。今、家の近くまで来てるんだ。無事なのか?」
父親:「ああ。お母さんと今、小学校に避難してる。ケガも無く、無事だよ」
愛原:「それは良かった。じゃあ、俺達もそっちに行くよ」
私は電話を切った。
愛原:「俺の両親は無事だ。今、小学校に避難してる。俺達も行こう」
高橋:「うっス!良かったっスね!」
愛原:「ああ。それにしても、何があったのやら……」
それはこれから両親に聞けばいいだろう。
私達は私の卒業した小学校に向かった。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。東北新幹線下り、盛岡・新青森方面、東北本線下り、松島・小牛田方面、上り、岩沼・白石方面、仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。……〕
私達を乗せた列車は減速し、カーブの多い市街地区間を走行していた。
愛原:「『東北一の都会とて 其名しられし仙台市 伊達政宗の築きたる 城に師団は置かれたり』」
高橋:「何スか、そのフレーズ?」
愛原:「鉄道唱歌だよ。今は列車のチャイム、鉄道唱歌を流さないからなぁ……」
高橋:「もしかして、『汽笛一声 新橋を……』のヤツっスか?」
愛原:「おー、そうだよ!よく知ってるなぁ!それの東北本線版だよ」
高橋:「たまたまっスよ」
高橋は照れ笑いを浮かべた。
高橋:「他にどんなのがあるんスか?」
愛原:「今の続きが、『阿武隈川の埋木も 仙台平の袴地も 皆この土地の産物ぞ みてゆけここも一日は』だったかな」
高橋:「そうっスか。……何かよく分かんないっス」
愛原:「まあ、今から100年以上も前に作られた歌だから……」
リサ:「先生、その頃から生きてる?」
愛原:「俺は本物の鬼か!」
高橋:「失礼だぞ、このヤロー!」
リサ:「残念。私に噛まれれば、100年以上軽く生きられるのに……」
ちょっと待て。
BOWって不老不死なのか?
高橋:「さり気無く先生を感染させようとすんじゃねぇ!」
〔「長らくの御乗車お疲れさまでした。まもなくこの列車の終点、仙台、仙台です。到着ホームは14番線、お出口は左側です。……」〕
とにかく私は荷棚から自分の荷物を下ろした。
高橋:「先生の御実家、駅から近いんスか?」
愛原:「まあ、車で15分って所かな。ここも高架線だけど、ここからじゃ家が見えなかった。昔は見えたのに……」
高橋:「マジっスか。駅近で便利っスね!」
車で15分掛かる距離って、駅近って言うんだろうか?
列車はポイントを2回渡り、下り本線から一旦上り本線を逆走し、その後で上り副線に入ると、そのホームに滑り込んだ。
〔「ご乗車ありがとうございました。終点、仙台、仙台です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕
列車がホームに停車し、ドアが開く。
私達は定時に到着したその列車を降りた。
仙台市も暑く、降りたら暑い空気に包まれた。
愛原:「北に来たから涼しいってわけでもないな」
高橋:「そうっスね。先生、ここから何で行きますか?」
愛原:「タクシーで行こう。荷物もあるし」
高橋:「はい」
私達は改札口を出た。
東京駅と違い、同じJR線に乗り換えないのであれば、改札口は新幹線のそれを1回通るだけで良い。
あとはタクシー乗り場に移動した。
リサ:「牛タン……笹かまぼこ……萩の月……」
リサは仙台名物のお土産を見て、目を輝かせ、涎を出しそうになった。
愛原:「お土産に買って帰ろうな。うちの実家が無事だったら」
高橋:「リサ、先生の仰る通りだ。場合によっちゃ俺のスーツのネクタイ、黒に換えないといけねぇ」
愛原:「既に持参している時点で、オマエも不謹慎だからな?」
高橋:「さ、サーセン!」
私達はタクシー乗り場に移動すると、そこからタクシーに乗り込んだ。
東京駅に向かう時は高橋が助手席に乗ったが、今度は私が助手席に乗った。
土地勘があるのは私だけだからである。
愛原:「若林区○○までお願いします」
運転手:「○○ですか?……はい」
運転手は取りあえずメーターを作動させて、車を走らせた。
ロータリー出口の信号に引っ掛かる。
運転手:「お客さん、○○地区ですが、今あそこは大規模なガス爆発がありまして、周辺がまだ交通規制掛けられてるんですよ。もしかしたら、途中までしか行けないかもしれませんよ?」
愛原:「でしょうね。まあ、取りあえず行ける所まで行ってください」
運転手:「分かりました」
信号が青に変わり、タクシーは駅前ロータリーを出て私の実家に向かった。
[同日11:40.天候:晴 仙台市若林区某地区]
タクシーは住宅街の市道を走行していた。
そして、ついに……。
運転手:「ああ、そこからもう入れないみたいです」
私の実家がある所へ入る道が、既に警察によって封鎖されていた。
その規制線の向こうからは焦げ臭い臭いが漂って来て、ガス爆発によって火災も起きたことを物語っていた。
リサ:「死臭の臭いがする……」
普通、死臭なら不快な顔をするものだろうが、リサはそうではないらしく、無表情で言った。
愛原:「ここまででいいです」
運転手:「分かりました」
私達は規制線の外側でタクシーを降りた。
そして、そこで警戒に当たっている警察官に話し掛けた。
愛原:「すいません。私、この地区に住んでいる両親の安否を尋ねて駆け付けた者なんですが、この地区は今どうなっているんですか?」
警察官:「この地区の住民の人達は避難所に避難しました。まだガス爆発の危険性が残っている恐れがあり、入ることはできません」
愛原:「避難所はどちらに?」
警察官:「近隣の小学校または中学校です。負傷した人達は病院に搬送しておりますが、まだ瓦礫の下に取り残されている方々もおりまして、今救助活動を行っています」
これはどうやら、福島県で起きたガス爆発よりも規模が大きいみたいだぞ。
本当にガスボンベが爆発しただけなのだろうか。
愛原:「あ、今思い出した」
高橋:「何スか?」
愛原:「両親のどっちかの携帯に掛けりゃ良かったんだ。これでどっちも出なかったら、【お察しください】」
高橋:「掛けてなかったんスか!?」
愛原:「家の固定電話にしか掛けてなかったんだ」
私は自分のスマホを取り出すと、まずは父親に掛けてみることにした。
すると……。
父親:「もしもし?学か?」
愛原:「お父さん!そうだよ、学だよ。今、家の近くまで来てるんだ。無事なのか?」
父親:「ああ。お母さんと今、小学校に避難してる。ケガも無く、無事だよ」
愛原:「それは良かった。じゃあ、俺達もそっちに行くよ」
私は電話を切った。
愛原:「俺の両親は無事だ。今、小学校に避難してる。俺達も行こう」
高橋:「うっス!良かったっスね!」
愛原:「ああ。それにしても、何があったのやら……」
それはこれから両親に聞けばいいだろう。
私達は私の卒業した小学校に向かった。
因みに前者はトヨタ・クラウン、後者はトヨタ・コンフォート(SG)です。
高橋が個人タクシーを手配したのは、「法人タクシーよりグレードのいい車が多いから」。