[7月25日16:20.天候:晴 東京都八丈島 リードパークリゾート八丈島・ゆーゆー牧場]
プールで一日遊んだ後、私達はホテルの経営母体が運営する牧場にやってきた。
ホテルとは目と鼻の先にあり、一部の客室やレストランからも見える位置にある。
そこでは宿泊者限定で、牛の搾乳作業を見学できるという。
但し、搾乳の体験そのものはできない。
あくまで、スタッフの搾乳作業を見学するだけである。
斉藤:「さすが牧場ね。牛がいっぱいいるわ」
リサ:「研究所であれを改造したクリーチャーを見たことがある」
愛原:「ホルスタインではなく、あれはジャージーだ。ホルスタインの牧場は何度か行ったことがあるが、ジャージー牛しか育てていない牧場は初めてだな……」
リサ、近くにいる牛をジーッと見る。
牛:「モー」
リサ:「この牛、美味しそう」
牛:「モ!?」
牛、リサに捕食されると思ったか、慌てて逃げ出した。
愛原:「リサ、牛を驚かせちゃダメだよ」
リサ:「ごめんなさい。美味しそうだと思って」
愛原:「本当に食べられると思ったんだな……」
斉藤:「リサさん、食べるのは私だけにしてね」
リサ:「サイトーだけ食べてたら、私、飢え死にする」
で、肝心の搾乳見学だが……。
スタッフA:「どうしたの?今日はお乳の出が悪いわねぇ……」
スタッフB:「何かに怯えている。一体、どうしたんだろう?」
牛:((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
リサ:「私、何もしてないよ?」
しかし牛は野性の勘で、リサの危険性に気づいているようだ。
スタッフB:「すいません、今日はちょっと牛の具合が悪いみたいで……」
愛原:「あ、いえ、こちらこそ却って申し訳ない」
リサ:「牛さん、私に構わずお乳出していいんだよ?」
牛:「モー!モー!(く、食われるー!鬼に食われるー!)」
リサのヤツ……。
牧場と動物園関係は連れて行っちゃダメなヤツだ、きっと。
リサのことだから、きっとライオンやトラも怯えさせる。
[同日20:00.天候:晴 同ホテル大浴場・湯上り処]
斉藤:「うう……日焼けがしみるぅ……」
リサ:「サイトー、日焼け止め塗ったのにね」
斉藤:「リサさんは全然焼けてないのね?」
リサ:「焼けたと思うけど、すぐに治った。だからサイトーも今夜中には治ると思う」
斉藤:「あー、そうか。私にも後遺症が残ってるんだもんね。私はあんまり日焼けには興味無いけど、もし日焼けしたくなったらきっと困るのね」
リサ:「多分ならないと思う」
斉藤:「どうして?」
リサ:「私、サイトーの肌は白い方が好きだから」
斉藤:「リサさん!私、日焼けしないよう気をつけるね!」
リサ:「ほらね」
……というやり取りが女湯であったことをリサは教えてくれた。
全く、リサのヤツ、人心掌握術にも長けてるな。
これもBOWの特徴なのか、それともリサ自身の特技なのか……。
リサと斉藤さんが再び卓球に興じている中、私は電話連絡をしていた。
善場:「暴力団関係者につきましては私達ではなく、警視庁が動きます。私達はその暴力団に依頼していた組織を追いますが、警視庁と連携する必要があるので、まずは暴力団関係者の摘発を待って動くことになるでしょう」
とのこと。
それが動くのがいつのになるのかは機密関係になるので本来は明かせないが、連休明けにガサ入れに行くであろうというのが善場主任の見解。
恐らく暴力団の組事務所に、武闘派警察関係者が乗り込むことになるのだろう。
高橋については……。
高橋:「俺、羽田空港まで迎えに行きます!」
とのこと。
愛原:「いいのか?ヘタに居場所を知らせて、霧崎君にバレたら……」
高橋:「いえ。どうやら真珠のヤツ、マンションに戻ってるみたいです。俺の後輩に監視させてるんで……」
愛原:「キミもなかなか人脈が広いな。まあ、揉め事を起こさないって約束するならいいよ」
高橋:「ありがとうございます!友達の車で迎えに……」
愛原:「族車みたいなので来られても困るから、羽田からは京急に乗るからな?」
高橋:「……サーセン」
取りあえず、東京23区の方は大きな動き無しか。
因みに大事を取って、高橋は友人の家に避難しているという。
それがどこかは分からないが、まあ23区内のどこかではあるだろう。
[日時不明 天候:不明 東京都墨田区菊川 愛原のマンション 愛原の部屋]
愛原:「ん……?」
私は大きな音で目が覚めた。
何者かが部屋のドアをドンドンと乱暴に叩いている。
いや、体当たりか?
愛原:「何だ何だ?」
私が部屋の明かりを点けると同時に、ドアがブチ破られた。
リサ:「ウゥウ……!」
愛原:「リサ!?」
そこには第一形態の姿をしたリサがいた。
だが、明らかに様子がおかしい。
金色の瞳は赤く鈍く光り、顔は完全に鬼の形相だ。
そして、呻き声。
愛原:「リサ、どうしたんだ!?」
リサ:「ガァァァァッ!!」
リサが牙の生えた口を大きく開け、長く鋭く尖った爪を立てて私に飛び掛かってきた。
そこで私は枕元にあったハンドガンを取って、リサに発砲した。
何故かあったのだ。
気にしないでくれ。
リサ:「ガッ……!?アァ……!」
弾は全部リサに当たり、当たった所から出血してリサは床にうずくまった。
愛原:「リサ、許してくれ!」
私は部屋を飛び出すと、高橋の部屋に向かった。
だが、何故か高橋の部屋のドアが開かない。
そこで、今度は玄関の外に出ようとした。
だが、これも開かない!
一体、どういうことだ!?
リサ:「アウゥゥ……!!」
昏倒から覚めたリサが這いつくばるようにして、私の部屋から出て来た。
愛原:「リサ、一体どうしたんだ!?リサ!しっかりしろ!」
私の呼び掛けも空しく、リサはまた私に飛び掛かって来る。
私はまたリサに向けてハンドガンを放った。
だが、弾切れのせいか、カチッカチッとという音しかしない。
愛原:「わああああっ!!」
私はついにリサにむしゃぶりつかれた。
私が最期に見たのは、美味しそうに私の血を啜り、肉を食らう『鬼』の姿だった。
[7月26日02:00.天候:晴 東京都八丈町 リードパークリゾート八丈島2F客室]
愛原:「!!!」
そこで私は目を覚ました。
リサ:「先生、大丈夫?」
部屋の明かりが点いて、リサが私の顔を覗き込んで来る。
愛原:「うわっ、リサ!?」
リサ:「んん?」
リサは首を傾げた。
そのリサ、今は第一形態をしている。
愛原:「おま、その姿……」
リサ:「この姿の方が落ち着く。外に出る時は人間の姿に戻るから」
愛原:「正気なんだな?」
リサ:「うん」
リサは大きく頷いた。
斉藤:「怖い夢でも見たんですか?随分うなされてましたよ?」
愛原:「そ、そうか。まあ、そうなんだ」
リサに襲われる夢だと言えなかった。
愛原:「こう見えても、人の死体が歩く光景を何度も見せられたからな、たまに見るんだ」
と、誤魔化しておいた。
リサ:「先生、私のベッドで寝る?」
愛原:「えっ?!」
斉藤:「リサさん!?」
リサ:「バイオハザードが発生しても、私が先生を守るもの」
その言葉と気持ちは嬉しかった。
だけどな、リサ。
やっぱりオマエはBOWなんだよ。
今は鬼の姿をしても理性や知性をしっかり保てているが、いつそれが飛ぶか分からないのだから……。
愛原:「あ、いや、いいよ。一度見たら、もうしばらくは見ないから。悪かったな。お騒がせして」
私はトイレと水分補給で気を取り直すと、再び消灯してベッドに潜り込んだ。
今度は悪夢を見ることはなかった。
プールで一日遊んだ後、私達はホテルの経営母体が運営する牧場にやってきた。
ホテルとは目と鼻の先にあり、一部の客室やレストランからも見える位置にある。
そこでは宿泊者限定で、牛の搾乳作業を見学できるという。
但し、搾乳の体験そのものはできない。
あくまで、スタッフの搾乳作業を見学するだけである。
斉藤:「さすが牧場ね。牛がいっぱいいるわ」
リサ:「研究所であれを改造したクリーチャーを見たことがある」
愛原:「ホルスタインではなく、あれはジャージーだ。ホルスタインの牧場は何度か行ったことがあるが、ジャージー牛しか育てていない牧場は初めてだな……」
リサ、近くにいる牛をジーッと見る。
牛:「モー」
リサ:「この牛、美味しそう」
牛:「モ!?」
牛、リサに捕食されると思ったか、慌てて逃げ出した。
愛原:「リサ、牛を驚かせちゃダメだよ」
リサ:「ごめんなさい。美味しそうだと思って」
愛原:「本当に食べられると思ったんだな……」
斉藤:「リサさん、食べるのは私だけにしてね」
リサ:「サイトーだけ食べてたら、私、飢え死にする」
で、肝心の搾乳見学だが……。
スタッフA:「どうしたの?今日はお乳の出が悪いわねぇ……」
スタッフB:「何かに怯えている。一体、どうしたんだろう?」
牛:((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
リサ:「私、何もしてないよ?」
しかし牛は野性の勘で、リサの危険性に気づいているようだ。
スタッフB:「すいません、今日はちょっと牛の具合が悪いみたいで……」
愛原:「あ、いえ、こちらこそ却って申し訳ない」
リサ:「牛さん、私に構わずお乳出していいんだよ?」
牛:「モー!モー!(く、食われるー!鬼に食われるー!)」
リサのヤツ……。
牧場と動物園関係は連れて行っちゃダメなヤツだ、きっと。
リサのことだから、きっとライオンやトラも怯えさせる。
[同日20:00.天候:晴 同ホテル大浴場・湯上り処]
斉藤:「うう……日焼けがしみるぅ……」
リサ:「サイトー、日焼け止め塗ったのにね」
斉藤:「リサさんは全然焼けてないのね?」
リサ:「焼けたと思うけど、すぐに治った。だからサイトーも今夜中には治ると思う」
斉藤:「あー、そうか。私にも後遺症が残ってるんだもんね。私はあんまり日焼けには興味無いけど、もし日焼けしたくなったらきっと困るのね」
リサ:「多分ならないと思う」
斉藤:「どうして?」
リサ:「私、サイトーの肌は白い方が好きだから」
斉藤:「リサさん!私、日焼けしないよう気をつけるね!」
リサ:「ほらね」
……というやり取りが女湯であったことをリサは教えてくれた。
全く、リサのヤツ、人心掌握術にも長けてるな。
これもBOWの特徴なのか、それともリサ自身の特技なのか……。
リサと斉藤さんが再び卓球に興じている中、私は電話連絡をしていた。
善場:「暴力団関係者につきましては私達ではなく、警視庁が動きます。私達はその暴力団に依頼していた組織を追いますが、警視庁と連携する必要があるので、まずは暴力団関係者の摘発を待って動くことになるでしょう」
とのこと。
それが動くのがいつのになるのかは機密関係になるので本来は明かせないが、連休明けにガサ入れに行くであろうというのが善場主任の見解。
恐らく暴力団の組事務所に、武闘派警察関係者が乗り込むことになるのだろう。
高橋については……。
高橋:「俺、羽田空港まで迎えに行きます!」
とのこと。
愛原:「いいのか?ヘタに居場所を知らせて、霧崎君にバレたら……」
高橋:「いえ。どうやら真珠のヤツ、マンションに戻ってるみたいです。俺の後輩に監視させてるんで……」
愛原:「キミもなかなか人脈が広いな。まあ、揉め事を起こさないって約束するならいいよ」
高橋:「ありがとうございます!友達の車で迎えに……」
愛原:「族車みたいなので来られても困るから、羽田からは京急に乗るからな?」
高橋:「……サーセン」
取りあえず、東京23区の方は大きな動き無しか。
因みに大事を取って、高橋は友人の家に避難しているという。
それがどこかは分からないが、まあ23区内のどこかではあるだろう。
[日時不明 天候:不明 東京都墨田区菊川 愛原のマンション 愛原の部屋]
愛原:「ん……?」
私は大きな音で目が覚めた。
何者かが部屋のドアをドンドンと乱暴に叩いている。
いや、体当たりか?
愛原:「何だ何だ?」
私が部屋の明かりを点けると同時に、ドアがブチ破られた。
リサ:「ウゥウ……!」
愛原:「リサ!?」
そこには第一形態の姿をしたリサがいた。
だが、明らかに様子がおかしい。
金色の瞳は赤く鈍く光り、顔は完全に鬼の形相だ。
そして、呻き声。
愛原:「リサ、どうしたんだ!?」
リサ:「ガァァァァッ!!」
リサが牙の生えた口を大きく開け、長く鋭く尖った爪を立てて私に飛び掛かってきた。
そこで私は枕元にあったハンドガンを取って、リサに発砲した。
何故かあったのだ。
気にしないでくれ。
リサ:「ガッ……!?アァ……!」
弾は全部リサに当たり、当たった所から出血してリサは床にうずくまった。
愛原:「リサ、許してくれ!」
私は部屋を飛び出すと、高橋の部屋に向かった。
だが、何故か高橋の部屋のドアが開かない。
そこで、今度は玄関の外に出ようとした。
だが、これも開かない!
一体、どういうことだ!?
リサ:「アウゥゥ……!!」
昏倒から覚めたリサが這いつくばるようにして、私の部屋から出て来た。
愛原:「リサ、一体どうしたんだ!?リサ!しっかりしろ!」
私の呼び掛けも空しく、リサはまた私に飛び掛かって来る。
私はまたリサに向けてハンドガンを放った。
だが、弾切れのせいか、カチッカチッとという音しかしない。
愛原:「わああああっ!!」
私はついにリサにむしゃぶりつかれた。
私が最期に見たのは、美味しそうに私の血を啜り、肉を食らう『鬼』の姿だった。
[7月26日02:00.天候:晴 東京都八丈町 リードパークリゾート八丈島2F客室]
愛原:「!!!」
そこで私は目を覚ました。
リサ:「先生、大丈夫?」
部屋の明かりが点いて、リサが私の顔を覗き込んで来る。
愛原:「うわっ、リサ!?」
リサ:「んん?」
リサは首を傾げた。
そのリサ、今は第一形態をしている。
愛原:「おま、その姿……」
リサ:「この姿の方が落ち着く。外に出る時は人間の姿に戻るから」
愛原:「正気なんだな?」
リサ:「うん」
リサは大きく頷いた。
斉藤:「怖い夢でも見たんですか?随分うなされてましたよ?」
愛原:「そ、そうか。まあ、そうなんだ」
リサに襲われる夢だと言えなかった。
愛原:「こう見えても、人の死体が歩く光景を何度も見せられたからな、たまに見るんだ」
と、誤魔化しておいた。
リサ:「先生、私のベッドで寝る?」
愛原:「えっ?!」
斉藤:「リサさん!?」
リサ:「バイオハザードが発生しても、私が先生を守るもの」
その言葉と気持ちは嬉しかった。
だけどな、リサ。
やっぱりオマエはBOWなんだよ。
今は鬼の姿をしても理性や知性をしっかり保てているが、いつそれが飛ぶか分からないのだから……。
愛原:「あ、いや、いいよ。一度見たら、もうしばらくは見ないから。悪かったな。お騒がせして」
私はトイレと水分補給で気を取り直すと、再び消灯してベッドに潜り込んだ。
今度は悪夢を見ることはなかった。