報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「25日の夕方から夜半過ぎにかけて」

2020-08-18 20:02:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日16:20.天候:晴 東京都八丈島 リードパークリゾート八丈島・ゆーゆー牧場]

 プールで一日遊んだ後、私達はホテルの経営母体が運営する牧場にやってきた。
 ホテルとは目と鼻の先にあり、一部の客室やレストランからも見える位置にある。
 そこでは宿泊者限定で、牛の搾乳作業を見学できるという。
 但し、搾乳の体験そのものはできない。
 あくまで、スタッフの搾乳作業を見学するだけである。

 斉藤:「さすが牧場ね。牛がいっぱいいるわ」
 リサ:「研究所であれを改造したクリーチャーを見たことがある」
 愛原:「ホルスタインではなく、あれはジャージーだ。ホルスタインの牧場は何度か行ったことがあるが、ジャージー牛しか育てていない牧場は初めてだな……」

 リサ、近くにいる牛をジーッと見る。

 牛:「モー」
 リサ:「この牛、美味しそう」
 牛:「モ!?」

 牛、リサに捕食されると思ったか、慌てて逃げ出した。

 愛原:「リサ、牛を驚かせちゃダメだよ」
 リサ:「ごめんなさい。美味しそうだと思って」
 愛原:「本当に食べられると思ったんだな……」
 斉藤:「リサさん、食べるのは私だけにしてね」
 リサ:「サイトーだけ食べてたら、私、飢え死にする」

 で、肝心の搾乳見学だが……。

 スタッフA:「どうしたの?今日はお乳の出が悪いわねぇ……」
 スタッフB:「何かに怯えている。一体、どうしたんだろう?」
 牛:((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
 リサ:「私、何もしてないよ?」

 しかし牛は野性の勘で、リサの危険性に気づいているようだ。

 スタッフB:「すいません、今日はちょっと牛の具合が悪いみたいで……」
 愛原:「あ、いえ、こちらこそ却って申し訳ない」
 リサ:「牛さん、私に構わずお乳出していいんだよ?」
 牛:「モー!モー!(く、食われるー!鬼に食われるー!)」

 リサのヤツ……。
 牧場と動物園関係は連れて行っちゃダメなヤツだ、きっと。
 リサのことだから、きっとライオンやトラも怯えさせる。

[同日20:00.天候:晴 同ホテル大浴場・湯上り処]

 斉藤:「うう……日焼けがしみるぅ……」
 リサ:「サイトー、日焼け止め塗ったのにね」
 斉藤:「リサさんは全然焼けてないのね?」
 リサ:「焼けたと思うけど、すぐに治った。だからサイトーも今夜中には治ると思う」
 斉藤:「あー、そうか。私にも後遺症が残ってるんだもんね。私はあんまり日焼けには興味無いけど、もし日焼けしたくなったらきっと困るのね」
 リサ:「多分ならないと思う」
 斉藤:「どうして?」
 リサ:「私、サイトーの肌は白い方が好きだから」
 斉藤:「リサさん!私、日焼けしないよう気をつけるね!」
 リサ:「ほらね」

 ……というやり取りが女湯であったことをリサは教えてくれた。
 全く、リサのヤツ、人心掌握術にも長けてるな。
 これもBOWの特徴なのか、それともリサ自身の特技なのか……。
 リサと斉藤さんが再び卓球に興じている中、私は電話連絡をしていた。

 善場:「暴力団関係者につきましては私達ではなく、警視庁が動きます。私達はその暴力団に依頼していた組織を追いますが、警視庁と連携する必要があるので、まずは暴力団関係者の摘発を待って動くことになるでしょう」

 とのこと。
 それが動くのがいつのになるのかは機密関係になるので本来は明かせないが、連休明けにガサ入れに行くであろうというのが善場主任の見解。
 恐らく暴力団の組事務所に、武闘派警察関係者が乗り込むことになるのだろう。
 高橋については……。

 高橋:「俺、羽田空港まで迎えに行きます!」

 とのこと。

 愛原:「いいのか?ヘタに居場所を知らせて、霧崎君にバレたら……」
 高橋:「いえ。どうやら真珠のヤツ、マンションに戻ってるみたいです。俺の後輩に監視させてるんで……」
 愛原:「キミもなかなか人脈が広いな。まあ、揉め事を起こさないって約束するならいいよ」
 高橋:「ありがとうございます!友達の車で迎えに……」
 愛原:「族車みたいなので来られても困るから、羽田からは京急に乗るからな?」
 高橋:「……サーセン」

 取りあえず、東京23区の方は大きな動き無しか。
 因みに大事を取って、高橋は友人の家に避難しているという。
 それがどこかは分からないが、まあ23区内のどこかではあるだろう。

[日時不明 天候:不明 東京都墨田区菊川 愛原のマンション 愛原の部屋]

 愛原:「ん……?」

 私は大きな音で目が覚めた。
 何者かが部屋のドアをドンドンと乱暴に叩いている。
 いや、体当たりか?

 愛原:「何だ何だ?」

 私が部屋の明かりを点けると同時に、ドアがブチ破られた。

 リサ:「ウゥウ……!」
 愛原:「リサ!?」

 そこには第一形態の姿をしたリサがいた。
 だが、明らかに様子がおかしい。
 金色の瞳は赤く鈍く光り、顔は完全に鬼の形相だ。
 そして、呻き声。

 愛原:「リサ、どうしたんだ!?」
 リサ:「ガァァァァッ!!」

 リサが牙の生えた口を大きく開け、長く鋭く尖った爪を立てて私に飛び掛かってきた。
 そこで私は枕元にあったハンドガンを取って、リサに発砲した。
 何故かあったのだ。
 気にしないでくれ。

 リサ:「ガッ……!?アァ……!」

 弾は全部リサに当たり、当たった所から出血してリサは床にうずくまった。

 愛原:「リサ、許してくれ!」

 私は部屋を飛び出すと、高橋の部屋に向かった。
 だが、何故か高橋の部屋のドアが開かない。
 そこで、今度は玄関の外に出ようとした。
 だが、これも開かない!
 一体、どういうことだ!?

 リサ:「アウゥゥ……!!」

 昏倒から覚めたリサが這いつくばるようにして、私の部屋から出て来た。

 愛原:「リサ、一体どうしたんだ!?リサ!しっかりしろ!」

 私の呼び掛けも空しく、リサはまた私に飛び掛かって来る。
 私はまたリサに向けてハンドガンを放った。
 だが、弾切れのせいか、カチッカチッとという音しかしない。

 愛原:「わああああっ!!」

 私はついにリサにむしゃぶりつかれた。
 私が最期に見たのは、美味しそうに私の血を啜り、肉を食らう『鬼』の姿だった。

[7月26日02:00.天候:晴 東京都八丈町 リードパークリゾート八丈島2F客室]

 愛原:「!!!」

 そこで私は目を覚ました。

 リサ:「先生、大丈夫?」

 部屋の明かりが点いて、リサが私の顔を覗き込んで来る。

 愛原:「うわっ、リサ!?」
 リサ:「んん?」

 リサは首を傾げた。
 そのリサ、今は第一形態をしている。

 愛原:「おま、その姿……」
 リサ:「この姿の方が落ち着く。外に出る時は人間の姿に戻るから」
 愛原:「正気なんだな?」
 リサ:「うん」

 リサは大きく頷いた。

 斉藤:「怖い夢でも見たんですか?随分うなされてましたよ?」
 愛原:「そ、そうか。まあ、そうなんだ」

 リサに襲われる夢だと言えなかった。

 愛原:「こう見えても、人の死体が歩く光景を何度も見せられたからな、たまに見るんだ」

 と、誤魔化しておいた。

 リサ:「先生、私のベッドで寝る?」
 愛原:「えっ?!」
 斉藤:「リサさん!?」
 リサ:「バイオハザードが発生しても、私が先生を守るもの」

 その言葉と気持ちは嬉しかった。
 だけどな、リサ。
 やっぱりオマエはBOWなんだよ。
 今は鬼の姿をしても理性や知性をしっかり保てているが、いつそれが飛ぶか分からないのだから……。

 愛原:「あ、いや、いいよ。一度見たら、もうしばらくは見ないから。悪かったな。お騒がせして」

 私はトイレと水分補給で気を取り直すと、再び消灯してベッドに潜り込んだ。
 今度は悪夢を見ることはなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「25日の昼間はプールで遊ぶ」

2020-08-18 15:58:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月25日07:30.天候:晴 東京都八丈町 リードパークリゾート八丈島]

 朝起きると、外は真夜中の雷が嘘のように快晴だった。
 これで海に入れないというのがもどかしい。
 コロナ禍の影響はここにも出ている。

 愛原:「斉藤さん、肩の様子はどうだ?」
 斉藤:「凄い!もう薄皮が張ってる!」

 斉藤さんはれっきとした人間であるが、ドイツの大学に留学中の兄から人体実験を受けて、Gウィルスに感染していたらしい。
 このGウィルスはウィルスといっても、他人への自然感染力は無いに等しく、このウィルスを持ったBOW(G生物という)から『胚』を体内に埋め込まれることで感染する。
 リサもそれは持っているのだが、Tウィルスとの混合型であり、アメリカのラクーンシティに現れたというG生物のそれとは違うらしい。
 そのGウィルス、今ではワクチンでもって無効化させることはできるものの、後遺症は強く残る。
 その典型たるものが、傷の治癒力の異常な増強である。
 アメリカ合衆国政府エージェントとして働くシェリー・バーキン氏もこの後遺症を残しており、かつて中国で起きたバイオテロに巻き込まれた際、テロリストからの銃撃を受けても軽傷であり、回復薬だけで治癒したという話を聞いている。

 愛原:「そうか」
 斉藤:「私も人間じゃなくなったのかなぁ……」
 愛原:「いや、大丈夫。斉藤さんは、れっきとした人間だよ」
 斉藤:「ほんと!?」
 愛原:「ああ。問題は……リサの持ってる他のウィルスに感染していないかどうかだ」
 リサ:「大丈夫だよ。サイトー、強いから私のウィルスも効かない」
 愛原:「そうなのか」

 聞いたことがある。
 GウィルスはTウィルスよりも強い為、Gウィルスの抗体を持つ者はTウィルスに感染することはないと。
 ということは新型コロナウィルスもイチコロだな、こりゃ。

 リサ:「…………」
 愛原:「ん?」

 斉藤さんに自分のウィルスが効かなくなったことを残念がっていたリサだが、それは本心なのだろうか。
 室内の鏡に映ったリサは、何故か含み笑いをしていた。

 愛原:「朝の準備ができたら、レストランに行こう」
 リサ:「うん。お腹空いた」

 第0形態であっても、育ち盛りの子の食欲は変わらない。

[同日10:00.天候:晴 同ホテル 屋外プール]

 リサ:「サイトー、それが新しい水着!?」
 斉藤:「そう。リサさんに見せられて良かったぁ!」

 斉藤さんは上はスポブラタイプ、下はフリルのスカート付きのパンツという水着だった。
 なるほど。
 最近の女子中学生のプライベートで着る水着はあんな感じなのか。

 愛原:「リサ。帰ったら、リサにも買ってあげるよ」
 リサ:「! おー!」

 リサは嬉しそうに両手を挙げた。
 危うく両手の爪が長く伸びて尖るところだった。

 斉藤:「私も一緒に行く!リサさんに似合う水着、一緒に探しましょうね!」
 リサ:「私、サイトーが着ているのがいい」
 斉藤:「そうなの?実はこれ、通販で買ったんだよね」

 意外や、意外。
 私はつい高級デパートで買ったものとばかり思っていた。

 リサ:「だから、リサさんはお店で買いましょうね」
 斉藤:「ん!」

 これ、あれだ。
 ついでに自分のをもう一着買うパティーンだな。
 因みに私は下は水着だが、上はTシャツに麦わら帽子、そしてサングラスである。
 はいはい、海水浴場にいる地元のオッサンスタイルですよー。
 で、プールに入ってはしゃぐ少女達。
 私はその2人を撮影するのを忘れない。
 ……こら、そこ!盗撮ではないぞ!
 クライアントたる斉藤社長に頼まれたのだ!
 父親が会社の経営で忙しく、娘を旅行に連れて行けないので、その思い出作りをよろしくと頼まれたのだ。
 ホームビデオを撮ること自体、けして不自然ではないはずだ!

 リサ:「先生、ちゃんと撮ってる!?」
 愛原:「ああ、心配すんな!」

 対象者を尾行し、不倫だったら不倫、違法行為だったら違法行為の決定的瞬間をカメラに収め、それをクライアントに提出するのも探偵の重要な業務だ。
 撮影技術なら任せてくれ。

 リサ:「そのビデオカメラ、完全防水でしょ!?プールの中でも撮って!」

 リサはビーチボールを斉藤さんと投げ合い、はしゃいでいるので多少興奮気味だ。
 少し前ならあのテンションで、思わず第一形態に変化してしまうところだが、今は抑えられているようだ。
 段々自分の形態をコントロールできるようになっている。
 実に素晴らしいことだ。

 愛原:「別に、そこまでしなくても……」
 斉藤:「でも先生、ここまで来て先生だけがプールに入らないのもあれですよ。……もしかして先生、泳げないですか?」
 愛原:「いや、そんなことは無いがね。ただ、報告用のビデオなら、わざわざプールに入らなくても……」
 斉藤:「せっかく来たんですから、一緒に入りましょうよ。で、私とリサさんのイチャラブシーンを間近で撮ってくださいな!」

 それだと逆に提出できなくなると思うが……。
 リサに噛み付かれて痛い思いをしただろうに、このコは却ってリサを嫌いになったりはしないんだな。

 リサ:「先生、潜って下から撮影してみて!」
 愛原:「おいおい、それだと顔が分からないだろう?」
 リサ:「だから、私達も潜るの!」

 私はゴーグルを着けて水中に潜った。
 そして、リサと斉藤さんも潜る。
 この2人はゴーグルを持っていないが、ちゃんと水中で目を開けて互いを見つめた。

 リサ:「どう!?ちゃんと水の中で目を開けられてたでしょ!?」
 斉藤:「リサさんの目、水中だとよりキレイね!」
 愛原:「……そろそろ一旦、休憩した方がいいな。水の中って、意外と体力を消耗するんだぞ」
 リサ:「それ、私に言う?」

 リサはニッと笑った。
 第一形態ならその時点で牙が覗くが、第0形態ではそのようなことはない。

 愛原:「そして体力を消耗したBOWが次にどのような行動を取るか、俺は経験したくないのに経験させられた」
 リサ:「アハハッ!」

 リサが私の言葉に笑った。
 もちろん、私の言葉の意味を十二分に理解しているからだ。

 リサ:「分かった、先生。一旦上がろう、サイトー」
 斉藤:「うん」

 プールサイドの方を向くリサ達。

 リサ:「ねえ、先生。先生は何秒間潜れる?」
 愛原:「何秒?うーん……数十秒ってところかぁ?俺もそんな素潜りできるわけじゃないからな」
 リサ:「分かった。数十秒で上がるから、先生は潜って水中から私達がプールサイドに上がるところを撮って」
 愛原:「んん?」
 リサ:「いいシーン、撮らせてあげる」
 愛原:「ふーん……?まあ、分かった」

 私が潜ると、リサは斉藤さんに何やら耳打ちした。
 彼女達はすぐにプールサイドに向かって歩く。
 プール自体はそんなに深くは無く、彼女達は上半身を出したままプールの外に足を付くことができた。
 なので、プールサイドには泳いで行ってもいいし、歩いて行ってもいいのである。
 彼女達は後者を選んだ。
 水の抵抗がある為、早くは歩けない。
 私はリサに言われた通り、彼女達を後ろから撮影した。
 水中なので、彼女達の下半身を映すことになる。
 一体、リサは何を考えているんだ?
 仲睦まじく、2人の少女は手を繋いで歩いた。
 そして、プールサイドの前まで来ると手を放し、特に食い込んでいないにも関わらず、尻に食い込んだ水着を直す仕草をした。
 ん?これがしたかったのか?
 斉藤さんが先に上がったが、リサは上がる直前、私の方を向き、わざと水着の股の部分を一瞬捲った。
 なので一瞬、性器が映ることになる。
 おいおいおい!リサのヤツ、何を考えてるんだ!
 私が水中から顔を出すと、悪戯っぽい顔をして見つめる少女達の顔があった。
 但し、斉藤さんにあっては、ただ単にちょっとイタズラしてみただけといった顔だったが、リサに関してはもっと黒い事をしたという顔であった。

 愛原:「リサ、オマエ……」

 私が上がるのをリサが手を取って手伝ってくれたが、上がった直後、リサが私の耳元で囁いた。

 リサ:「先生、今度は新しい水着でしてあげるね……?」

 リサは相変わらず第0形態のままであったが、目だけは『獲物を狙う人食い鬼の目』のようになっていた。
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