報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「朝の成田空港」

2024-07-07 16:29:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月16日06時30分 天候:晴 千葉県山武郡芝山町香山新田 成田空港温泉“空の湯”→送迎バス]

 温泉施設をチェックアウトした私達は、成田空港行きの無料送迎バスに乗り込んだ。
 バスはコミュティバスなどでよく使われる小型のノンステップバスで、さすがにこの時間は空港へ向かう利用者で混んでいた。
 取りあえず両親には空いている席に座ってもらい、私達は吊り革や手すりに掴まった。

 運転手「それでは発車致しまーす。次は成田空港第3ターミナルに止まりまーす」

 発車の時間になり、バスとスライド式のドアを閉めて発車した。
 リサは手すりに掴まりながら、眠い目をしている。

 愛原「あんまり眠れなかったか?」
 リサ「うーん……よく分かんない」
 母親「カプセルホテルは、完全な部屋じゃないからねぇ……。まあ、私は眠れたけど」
 パール「私もです。メイドの控室は共同でしたし、その前のムショも雑居房でしたから」
 愛原「それはそれは……。俺も警備員時代は、カプセルホテルみたいな仮眠室で寝たことがあるから懐かしかったよ」
 母親「うう……そのまま警備会社で働いていてくれれば良かったのに……」
 愛原「色々やっているうちに、探偵の方が向いてると思ったの!」
 父親「それにしたって、どこかの探偵事務所に入って勉強してから独立するという方法でも良かっただろうに……」
 愛原「フリーで色々やっていたから、その必要は無いと思ったんだよ。……うっ!」

 その時、私に一瞬の激しい頭痛と眩暈が襲った。

 高橋「先生?」
 リサ「!?」

 そして、フラッシュバック!
 白黒映像の……。

 愛原「……いや、何でも無い」

 吊り革にグッと掴まったおかげで、倒れずに済んだ。
 白黒映像は、どこかの山奥。
 資料映像で観たことのある、アメリカ・ルイジアナ州のベイカー農場のような風景……。
 あるいは、同じく資料映像で観たスペインの山奥の村や、直近だとルーマニアの山奥の村などで起きたバイオハザード事件の村とか……。
 それに似ていた。
 日本では霧生市のバイオハザードを生き延びたこともあり、町全体を襲ったバイオハザード事件など、とっくに慣れているはずだった。
 しかし、大都市のラクーン市や中小とはいえ、それでも都市と言えるトールオークス市のバイオハザード事件、巨大都市香港でのバイオハザード事件の映像は普通に観られた私が、何故か山奥の寒村での映像では体調が悪くなったのを覚えている。
 確かに事務所を立ち上げる前、警備員をやめてフリーで探偵じみた仕事を引き受けていた頃、山奥の事故物件の調査とか行ったことはあるが……。

 父親「具合が悪いのか?座るか?」
 愛原「いや、大丈夫……」

[同日06時40分 天候:晴 千葉県成田市取香 成田空港第3ターミナル(バス停)→ターミナル内]

 

 だいたい所要時間10分ちょっとで、最初の停車停留所、第3ターミナルのバス停に到着する。
 送迎バスも昼以降は第2ターミナルにしか行ってくれないが、朝はこのように、第3ターミナルにも寄ってくれる。
 因みに、第1ターミナルには行かない。

 運転手「はい、ありがとうございましたー」
 愛原「お世話様でした」

 ここで私達を含め、半分くらいの乗客が降りて行く。
 因みに循環バスなので、ここから温泉施設に向かう為にバスに乗ってもいいようだが、さすがに朝早過ぎるのか、乗車客はいなかった。

 愛原「ターミナルはあっちだよ」
 父親「そうか。じゃあ、先に朝食を食べてからにしようか」

 尚、両親の大きな荷物は高橋とパールが持っている。

 高橋「先生、具合は大丈夫ですか?」
 愛原「ああ、大丈夫だ」

 何であそこでフラッシュバックが起きたのだろう?
 たまたま昔、フリーターだった頃を思い出したり、乗客の中に、これから登山にでも行くのか、それらしい装備をしている、うちの両親と大して歳の変わらぬ高齢夫婦を見かけただけなのだが……。

 

 リサ「わぁ……。何か、陸上競技場のトラックみたい」
 愛原「不慣れな外国人客の為に、分かりやすくしているんだろうな」

 ターナミナルの中は、従来からある第1や第2と比べて異質だった。
 まず、建物がプレハブである。
 しかし、だからといって仮設ではないのだろう。
 第3ターミナルは主にLCCのターミナルということで、インスタントに造っただけかもしれない。
 それでも最新ということもあって、殺風景ながらも、よく言えばシンプルで分かりやすいというメリットはあった。
 当然、トイレとかはちゃんとした設備できれいである。

 愛原「あそこにジェットスターのカウンターがある。あそこで大きな荷物を預けるんだ」
 高橋「行きましょう」
 愛原「LCCだと、こういうのも別料金だろう?」
 父親「大丈夫。LCCとはいえ、ある程度高いプランで予約してるから」
 愛原「交通費節約主義なのに?」
 父親「主義ではあるけども、徹底してるわけじゃないよ。必要な所では金を掛けるさ」
 愛原「そういうもんかねぇ……。チケットは?」

 すると父親は、自分のスマホを取り出した。

 父親「これで」

 チケットレスサービスか。
 この辺は高齢者ながら、慣れているようだな。
 大きな荷物を預けた後は、更に先に進む。

 愛原「この先にフードコートがある。24時間営業だから、普通にやってるよ」
 父親「しばらく日本食が食えなくなる。今のうちに堪能しておこう」
 愛原「だから、海外旅行じゃないでしょって!」

 この両親、本当に沖縄に行くつもりなのだろうか?

 リサ「! 肉!」

 リサが指さした先には、松屋があった。

 愛原「ここにも松屋があるのか」
 父親「ちょうどいい。和食とはしばらくお別れだ。ここで食べて行こう」
 愛原「松屋くらい、沖縄にもあるだろう?」

 私は呆れて、食券の券売機に向かった。

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