報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「成田空港より帰京」

2024-07-08 14:34:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月16日07時59分 天候:曇 千葉県成田市三里塚御料牧場 JR成田空港駅→成田線(空港支線)780F列車5号車内]

 

〔「2番線に停車中の電車は7時59分発、快速、東京行きです。都賀までは、各駅に止まります。4号車と5号車は、グリーン車です。乗車券の他に、グリーン券が必要です。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 私達は成田空港の地下にある駅から、東京に向かう電車に乗り込んだ。

 

 成田空港から錦糸町駅までは、およそ1時間20分ほど。
 特急列車みたいな設備の車両なら、ラクに移動できるというわけだ。
 今度はそんなに大きな荷物は持っていなかったので、平屋席ではなく、2階席に座ってみた。
 まもなく発車時刻になろうとするが、車内は空いている。
 もっと本数の多い京成に客が流れるのか、或いはバスの方に流れるのかもしれない。
 千葉市内に行くのなら、この電車が1番便利なのだが。

〔この電車は、総武快速線直通、快速、東京行きです。停車駅は都賀までの各駅と、千葉、稲毛、津田沼、船橋、市川、新小岩、錦糸町、馬喰町、新日本橋、東京です。グリーン車は、4号車と5号車です。グリーン車をご利用の際には、グリーン券が必要です。グリーン券を車内でお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 乗った電車は新型車両ということもあり、グリーン車には充電コンセントがある。
 また、WiFiも飛んでいる為、リサにとってはありがたいことだろう。

 愛原「今頃、両親も飛行機の中だ」
 リサ「もう離陸した?」
 愛原「いや、8時10分だからまだだろう。でもまあ、搭乗時刻にはなっているから、今頃もう乗り込んでいると思うよ」
 リサ「そっか……」
 愛原「高橋達も付き合ってもらって悪かったな」

 私は通路を挟んで進行方向右側に座る高橋達に言った。

 高橋「いや、いいっスよ。俺達も先生の御両親には、お世話になりましたし」
 パール「その通りです」
 愛原「そうか」

〔「お待たせ致しました。7時59分発、快速、東京行き、まもなく発車致します」〕

 ホームから発車メロディが聞こえて来る。
 地下のホームなので、かなり響いた。
 曲名は“Esperanza(希望)”というらしい。

〔東京行き、快速電車が、発車します。ドアが閉まりますから、ご注意ください〕

 車掌が吹いているのか、ピィーッと笛を吹く音も聞こえて来た。
 それからドアチャイムを鳴らして、片開きのドアが閉まる。
 そして、電車が動き出した。

〔次は空港第2ビル、空港第2ビル。お出口は、右側です〕

 簡易的な放送なのは、下車客の事は想定していないのだろう。
 第2・第3ターミナルに行くのなら、ターミナル間無料循環バスが頻繁に運転されている為、わざわざ運賃を払ってまで電車に乗る客などいないからである。

 愛原「あれ?」

 その時、私のスマホに着信があった。
 見るとそれは、善場係長からだった。
 日曜日だというのに、仕事されているのだろうか?
 政府のエージェントは大変だな。

 リサ「どうしたの?」
 愛原「善場係長からだ。ちょっと、デッキに行ってくる」

 私はスマホを片手に、デッキに向かった。
 デッキといっても、乗降口と2階席・1階席を繋ぐ階段は扉で仕切られているわけではないので、本当にデッキと言えるかどうかは不明だ。
 平屋席はドアで仕切られているのだが。

 愛原「はい、もしもし?」」
 善場「愛原所長、おはようございます。善場です」
 愛原「おはようございます。係長」

 因みにこのやり取りをしている間に、電車は空港第2ビル駅に到着した。
 私は開かないドアの前に立ち、乗車客の邪魔にならない所に立った。

 善場「今、お電話大丈夫ですか?」
 愛原「はい、大丈夫です」
 善場「今、成田空港にいらっしゃると思います」
 愛原「はい。ただ、両親の見送りは終わりましたので、もう総武線の電車に乗っているところですが」
 善場「昨日から滞在されておられたんですよね?」
 愛原「はい、そうですが?」
 善場「空港内外で、斉藤早苗は目撃されませんでしたか?」
 愛原「いいえ……?あの、リサの言う“トイレの花子さん”ですよね?見ませんでしたよ」
 善場「そうですか……」
 愛原「もしかして、空港にいる可能性があるんですか?」
 善場「まだ、目撃情報は那覇空港においてですが」
 愛原「はあ……」
 善場「那覇空港では、彼女に似た者が、成田行きのジェットスターに乗ったという目撃情報があるのです」
 愛原「ジェットスター……」
 善場「令状が無ければ、航空会社側に乗客名簿の開示を求めても断られます。辛うじてようやく、那覇空港の監視カメラの映像を確認できただけです」
 愛原「何でも、沖縄中央学園に派遣した調査員さん達が行方不明になったとか?」
 善場「機密ですので、それは口外なさらぬようお願い致します」
 愛原「あっ……」
 善場「斉藤早苗は、しばらく学校に来ていないようです。あとは成田空港の監視カメラを映像を確認するだけです。所長方のGPSを確認させて頂いたところ、ジェットスターが離着陸する第3ターミナルにいらっしゃったようで、もしかしたらと思ったのですが……」
 愛原「いえ……申し訳ないですね。我那覇絵恋が送って来た画像が本当なのであれば、斉藤早苗の顔はそれで分かるのですが、ちょっと気が付かなかったですね……」
 善場「そうですか。それは残念です」
 愛原「まさか、成田空港にいるとは思いませんから……。後でリサにも聞いてみます」
 善場「よろしくお願いします」

 私はそれで電話を切った。
 電車は空港第2ビルを発車し、成田駅に向かっている。
 京成線もそうだが、JRもまた、駅間距離の長い区間である。

 愛原「ただいま」

 席に戻ると、座席はまだ空席が目立っていた。
 やはり、快速で東京に向かう需要は少ないのだろう。

 リサ「善場さん、何だって?」
 愛原「何でも、斉藤早苗が成田空港にいたかもしれないんだって」
 リサ「えっ、そうなの!?」
 愛原「そうかもしれないって話。何でも、那覇空港から成田行きのジェットスターに乗ったそっくりさんがいたらしいよ?」
 リサ「ジェットスターって、先生のお父さんやお母さんが乗った飛行機?」
 愛原「そう。俺は見てないんだけど、リサは見た?」
 リサ「いや~……」

 リサは首を傾げた。

 リサ「普通にかわいい子だと思うけど、それだけのコって、案外そこら辺にいたりするもんね」
 愛原「そうなんだよな」

 リサと斉藤早苗は顔は似ていないが、それでも似ているように思えるのは、髪型が同じということも去ることながら、リサもまた、『そこら辺にいる、ある程度かわいい子』だからであろう。
 『雰囲気そっくりさん』とでも言うのか?
 この2人が白い仮面を着けて現れれば、どっちがどっちだか分からなくなるだろう。

 愛原「まあ、目撃はしなかったということで。係長に報告しておこう」

 私はスマホを取り出した。

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