報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「帰省3日目」 4

2018-09-15 19:15:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月28日16:17.天候:晴 JRさいたま新都心駅→ホテルメトロポリタン]

 太陽が傾きつつもまだまだ暑いさいたま新都心駅に、今日最後の北行快速が到着する。
 もっとも、田端駅に差し掛かる頃には既に各駅停車の表示になっているのだが。

〔さいたましんとしん〜、さいたま新都心〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 この駅の京浜東北線ホームにはホームドアがある為、電車のドアが開くまで少しのブランクがある。

 稲生:「やっぱり外は暑いですねー」
 マリア:「うん。日本の夏は本当にジメジメしている」
 稲生:「こういう時は、カラッとした気候のヨーロッパが羨ましいですね」
 マリア:「“魔の者”さえいなければ、夏の間はイギリスに戻ってもいいんだけどな……」

 電車を降りて改札口に向かうまでの間、そんなことを話す魔道師2人。

 稲生:「そんなに手強いですか。ヤノフ城では辛くも勝ったって感じでしたけど……」
 マリア:「ただの眷属に辛勝してるようじゃ、本物相手には勝てないよ」
 稲生:「それもそうですね」

 改札口を出て左に曲がる。
 この辺りは高層ビルが林立しているということもあり、強い風が吹き抜けるポイントだ。

 稲生:「うーん……。大気の状態が不安定だ。もしかしたら、またゲリラ豪雨とかあるかもしれませんね」
 マリア:「スコールか。そうかもしれないな」
 稲生:「まだ空は晴れてますけど、油断ならないのが日本のゲリラ豪雨というヤツでしてね。早いとこ帰りましょう」
 マリア:「そうだな」
 稲生:「……と、その前に」
 マリア:「?」

 稲生、ホテルメトロポリタンに入る。
 まさか、ついにマリアと……【お察しください】。

 ローソン店員:「いらっしゃいませー」
 稲生:「えーと、ロッピー、ロッピー……と」

 ……ではなく、テナントとして入居しているローソンに入った。
 そして、店内にあるロッピーに向かう。
 因みにローソンはロッピー、ファミリーマートはファミポートと色々あるが、この端末の正式名称が分かる方はいらっしゃるだろうか?
 マルチメディアキオスク端末というらしい。
 稲生はスマホ片手に慣れた手つきで端末を操作した。

 マリア:「何をしてるの?」
 稲生:「ちょっとね……高速バスのチケットを……」
 マリア:「帰りの?」
 稲生:「ええ。帰りの」
 マリア:「今頃?」
 稲生:「今頃……です」

 操作が終了すると、ベーッとバーコードが記載された用紙が発行される。

 稲生:「それじゃ、ちょっと行ってきます」
 マリア:「Year.」

 一体稲生は何のバスのチケットを発券したのだろうか。

 稲生:「お待たせしました。それじゃ帰りましょう」
 マリア:「ああ」

[同日16:45.天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 イリーナ:「やあ、お帰り」
 稲生:「先生、ただいま戻りました」
 イリーナ:「色々楽しんだみたいだねぇ」
 稲生:「おかげさまで。でも、まだまだですよ」
 イリーナ:「まだ遊び足りないの?」
 稲生:「マリアさんと約束したんですよ」
 イリーナ:「結婚の?」
 マリア:「師匠ッ!」
 稲生:「そ、それはまだ……。この前仙台に行った時、威吹と一緒に船旅をした話をしたら、マリアさんもってことになりまして……。明日はそこに行こうかと……」
 イリーナ:「あー、それは残念ね。明日は止めた方がいいわよ」
 稲生:「えっ?それはまたどうして?」
 イリーナ:「これを見て」

 ここはリビング。
 なのでテレビがある。
 イリーナはリモコンを取ると、テレビを点けた。

〔「……これはもう大変な異常気象としか言いようがありません。気象学上、有り得ないことが発生したわけです。よって、どんな被害が出るか分かったものではありません」「なるほど。えー、何度もお伝えしておりますように、日本近海で突然台風が発生しました。関東直撃は明日になるもようで……」〕

 普通は南太平洋上で発生するはずの台風が、何故か伊豆諸島で発生したのこと。

 稲生:「な、何ですかこれは!?」
 イリーナ:「ナスっちがバカンス……もとい、合宿で大島って所に行ったんだけど、そこで魔法の実験をしたら台風を発生させちゃったらしくて……」
 マリア:「あの組、日本を超エンジョイしてるじゃないですか」
 稲生:「アナスタシア組で合宿という名のバカンスに行き、そこで魔法の実技講習を行ったら、弟子の誰かが失敗したってことですね」
 イリーナ:「う、うん。日本語に直すとそんな感じ。さすが日本人ね」
 稲生:「いえ、先生も最初から日本語を話しておられます」
 イリーナ:「私はロシア語しか喋ってないわよ?」
 マリア:「迷惑な連中め!」
 稲生:「魔法で発生させたのだから、魔法で消すこともできるのでは?」
 イリーナ:「私もそう言ったのよ。いや、私とあのコとはジャンルが違うから、私がどうこう言えることではないんだけどね。そしたら、こんなことを言ってきたのよ。『1度焼いたステーキ肉を生肉に戻す魔法があると思う?』なんて……」
 稲生:「え?ホイミとかケアルとか唱えればいいんじゃ?」
 イリーナ:「それは生き物の話。あくまでこれは気象現象の話なんだから」
 マリア:「要はアナスタシア先生の力を持ってしてもダメってことですね。分かりました」
 稲生:「ちぇっ。せっかく計画してたのに……」
 イリーナ:「ゴメンねぇ。私からナスっちにはよく言っておくから。『こっちのバカンス妨害してんじゃねーよ』ってね」
 マリア:「こっちはバカンスであることは認めるんですね。因みに、こっちに直撃するのはいつですか?」
 イリーナ:「明日の朝からだね。で、1日掛けて通過するみたい。だから明日のバカンスは申し訳無いけどオジャンに……」
 稲生:「そんなに早く?!」
 イリーナ:「消すことは無理だけど、なるべくスピードアップさせたり、勢力を弱めるように努力はできるみたい」
 マリア:「自分達の不始末なんだから、自分達で処理して欲しいですね」
 イリーナ:「ま、向こうもそう言ってるんだけど……。明日は映画でも観てたら?」
 稲生:「今日、映画観て来たんですけどね。先生はどうなさるんです?」
 イリーナ:「アタシもナスっちのせいで計画がパーよ。申し訳無いけど、ここにいさせてもらえる?」
 稲生:「それは構いませんよ。せっかくだから先生、講義してくださいよ」
 イリーナ:「えぇ?」
 マリア:「それはいいな。師匠、魔法の根本から教えてください」
 イリーナ:「せっかく1日昼寝しようと思ってたのにぃ……」
 マリア:「何言ってるんですか。たまには起きて……」

 その時、マリアはハッと気づいた。

 稲生:「? マリアさん?」
 マリア:「あ、いや、何でも無い」
 イリーナ:「しょうがない。そこまで言うなら、やらせてもらうわ。だけど、明らかに眠くなるラテン語講座から始めるけどいい?」
 稲生:「は、はは……。お手柔らかに、お願い致します」
 マリア:「よろしくお願いします。(師匠、ここ最近むしろ寝てないんじゃないのか?)」

 夜はちゃんと寝ているのだが、最近イリーナが昼寝している所を見る機会が無いことに気づいたマリアだった。
 これは何を意味しているのか……。

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