報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「終業式の終わり」

2024-04-09 20:31:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月20日15時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 愛原「ただーいまぁ!」
 パール「先生、お帰りなさい」
 愛原「いやあ、PTA会長ってのも大変だねぇ……」

 修了式の片づけの手伝いから懇親会までやって、ようやく解散して帰った時にはこの時間だったというわけだ。
 リサはもう帰宅しているはずだ。

 愛原「しかもボランティアだ」
 パール「そうですね」
 高橋「先生。ブクロの警察署まで行って、事故証明取って来ました。あとはレンタカー会社に、事故証明書を出すだけです」
 愛原「そうだな。それは俺が今から行ってこよう」
 善場「あいにくですが、それは高橋助手にやってもらっても構いませんか?」
 愛原「えっ!?」

 善場主任が事務所の女子トイレから出て来た。
 事務所にもトイレがあり、男女別となっている。
 男子トイレは個室が1つの小便器が1つ。
 女子トイレは個室が1つとなっている。

 善場「後付けながら、きれいなお手洗いで素晴らしいです」

 後付けなのは、最初は男子トイレしか無かった。
 これは恐らく、最初に建てられた頃は暴力団組事務所としての用途だったからだろう。
 そこに女性用トイレは必要無いからだ。
 ところがその後、暴力団は事務所を移転。
 後から入って来た機械設備会社では、事務員などに女性を雇用していたのだろう。
 女性トイレが必要になり、増設したというわけだ。
 図面上は当初、小便器が2つあったようで、そのうちの1つを潰し、その水回りを女性用トイレに転用したのだろう。

 愛原「それは恐れ入ります」

 尚、掃除はメイドのパールや刑務所時代によく房内の掃除をしていた高橋がやっている。
 たまにリサもやるし、リサがバイトと称し、『魔王軍』メンバーを連れてきてやることもあった。

 愛原「それで、何の御用で?」
 善場「明日のことです。明日、前泊で八王子に行かれますね?その話です」
 愛原「あ、はい!これは、わざわざ御足労頂けるとは……」
 善場「事故証明書の件、高橋助手にお願いしても宜しいですか?」
 愛原「はい。悪いが、高橋……」
 高橋「分かりました。じゃあ、ちょっくらレンタカー屋に行ってきます」

 高橋はバイクで向かうようだ。
 エレベーターで1階のガレージに向かったからだ。
 実際、バイクのエンジン音が聞こえた。

 愛原「パール、お茶を」
 パール「はい」

 私と善場主任は、応接コーナーのソファに向かい合って座った。

 善場「色々とお忙しいかもしれませんが、宜しくお願いします」
 愛原「いえ、大丈夫です。宜しくお願いします」
 善場「明日の計画書のことですが、この様子ですと、計画変更になる恐れが高いとお見受け致しますが、如何でしょうか?」
 愛原「お察しの通り、往路の交通手段を変更せざるを得ないようです。と、申しますのは、計画書に記載した交通手段は、当事務所でリースしている商用車を使用するはずだったのですが、それが先日の業務中において人身事故を起こしてしまい、車に損傷が発生してしまいました。その車はレンタカー会社に返納したのですが、代わりの車が借りられるまで数日間のブランクが発生することが分かりました」
 善場「すると、翌日の出発には間に合いませんね。どうなさるおつもりですか?」
 愛原「電車移動に切り替えます」
 善場「そうですか。具体的には、どのようなルートで?」
 愛原「京王線での移動を考えています。今回の移動にはBSAAのレイチェルも護衛として付いてくることになってまして、新宿駅で合流して、それから向かう方向で考えています」
 善場「なるほど……」
 愛原「何か、問題ありますか?」
 善場「いえ……。宿泊先のホテルですが、市内のビジネスホテルですね。距離的には京王八王子よりも、JR八王子駅の方が近いようですが?」
 愛原「リサにとっては、私と一緒に取れる最後の夕食です。しばらくは、お別れになるわけですからね。京王八王子駅からホテルまでの移動の間に、色々と飲食店もあることでしょう。その中でリサが食べたい店があったら、そこに入るという形にしてみようかと思いました」
 善場「なるほど。そういうことでしたか」
 愛原「車なら、車の窓から色々と物色できたかもしれませんけどね」
 善場「そういうことなら、仕方がありませんね。BSAAの護衛もいるので、大丈夫でしょう。許可致します」
 愛原「ありがとうございます」
 善場「それ以外は、特に変更ありませんかね……」
 愛原「無いですね。往路の電車代だけお願いします」
 善場「はい。請求して頂ければ、大丈夫です」
 愛原「ありがとうございます。リサの事前検査の結果はどうでした?」
 善場「具体的な数値は御教えできませんが、少なくとも藤野行きを中止しなければならないようなものではないとだけお答え致します」
 愛原「了解しました」
 善場「リサには好きな物食べさせて頂いて何の問題もありませんが、アルコールだけはダメですよ?」
 愛原「あ、はい。それはもう……」

[同日18時00分 天候:曇 同地区 愛原家3階ダイニング]

 愛原「……なことを言われてさぁ……」
 リサ「ちっ、釘を刺されたか……」
 愛原「リサは公式には未成年なんだから、そりゃダメだよ」
 リサ「“鬼ころし”は?」
 愛原「あれは暴走を抑える為の『薬』だから、1日1パックまでは黙認ってことになってる」
 リサ「なるほど」

 今日の夕食は中華。
 チャーハンや餃子、回鍋肉や青椒肉絲が出て来た。
 回鍋肉の辛味が強いのは、高橋が作ったからか
 刑務所でも中華料理を作ることはあったが、基本的に薄味なもので、回鍋肉も殆ど辛くないという。
 その反発で、娑婆に出てからは辛めに作るらしい。
 まあ、私はビールが美味しくなるからいいし、辛党のリサには美味しいらしく、バクバク食べていた。

 愛原「明日は電車移動になるから、遅れるなよ?」
 リサ「はいはい。わたしは先生に付いて行けばいいんだね?」
 愛原「まあ、そうだな。新宿駅からは、レイチェルも合流するから」
 リサ「おー、レイチェル!」
 愛原「BSAAからの護衛だぞ」
 リサ「じゃあ、銃を持ってるのかな?」
 愛原「じゃないのかな」

 いよいよ、明日出発か……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「日曜日の仕事の終わり」

2024-04-09 15:32:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月18日15時00分 天候:晴 東京都豊島区西池袋某所 某事故物件アパート]

 愛原「な、何たるちゃあ……!」

 これまでの経緯は端折らせてもらうが、私は今日、高橋と一緒に事故物件の調査に回っている。
 今日は東京都豊島区を回ることにした。
 既に、怪奇現象が起こるとされている事故物件の部屋には、バイトを雇ってその部屋に住まわせている。
 最後に回ったアパートなのだが、何と火事が起きていた。

 愛原「ひゃ、119番だ!お前は車を安全な場所に移動させろ!」
 高橋「はい!」

 私はスマホを取り出し、119番通報した。

 愛原「……火事です、火事です!豊島区西池袋のアパートから火の手が上がっています!具体的な場所は……」
 高橋「……って、ゴルァッ!!」

 高橋の怒声が響く。
 そして、車は急停車!
 件のアパートから女性が飛び出してきて、高橋の車に跳ねられた!

 愛原「つ、ついでに事故もありました!」
 消防署「はい!?」
 バイト「あっ、マサさん!!」
 高橋「スーチン大統領!こら一体どういうこった!?」

 アパートから坊主頭のいかつい男が出て来た。
 高橋の知り合いであろう。
 バイトは基本、高橋やパールの知り合いにやってもらっている。
 豊島区の場合は、ほとんど高橋の知り合いだ。
 バイトの名前は鈴木という人物なのだが、『鈴木』→『(恐らく“釣りバカ日誌”のスーさんから取って)スーちん』→『(恐らくプーチン大統領からもじって)スーチン大統領』ということらしい。

 アルバイター鈴木「マサさん!ストーカー女をぶつけて捕まえてくれたんスね!さすがっス!」
 高橋「つったって、バンパーへっこんじまったぞ!?リース車なのに!」

 尚この鈴木、SNSで自分のバイトの仕事内容を紹介したりしているらしい。
 その際のアカウント名が『アルバイター鈴木』とのこと。

 愛原「今、警察にも通報した!ほれっ、大丈夫か、お嬢さん!?」

 私は車に跳ねられて倒れている20代の女性を抱え起こした。
 ややぽっちゃり型の眼鏡の女性だが、跳ねられた衝撃でメガネは壊れている。

 愛原「ていうか、ストーカーってどういうことだ!?」
 アルバイター鈴木「このアパートで起きてた怪奇現象、この女のせいだったんですよ!今、俺が住んでる部屋には、もう元カレはいねぇって何度も言ってんのに!」
 高橋「しつこい女は嫌われるぜ!あぁっ!?」
 愛原「……オマエ、それ、リサにも言えんのか?」
 高橋「あ、いや……」

 そうこうしているうちに、黒い煙がこっちまで漂って来る。

 愛原「ちょっと危ないな!少し離れよう!」
 高橋「はい!」
 アルバイター鈴木「因みに、放火したのもこの女です!」
 愛原「なにいっ!?」
 アルバイター鈴木「『このアパートに隠れてる元カレを炙り出す』とか言って!」
 愛原「地雷女どころの騒ぎじゃねぇ!」

 尚、女子刑務所では放火犯は警戒されるのだそうだ。
 男子刑務所では、性犯罪者が他の受刑者から白い目で見られるのと同じ。
 何故なら、女性心理でも分かるだろう。
 放火魔はよほどのアタオカであると。

[同日20時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 愛原「ただーいまぁ」
 高橋「帰ったぞー」
 リサ「お帰りなさい!先生、大活躍だったね!?」
 愛原「いやあ、何か色々メンド臭かった」
 高橋「サツの野郎、俺達もついでに犯罪者扱いしようとしやがったんだぜ」
 愛原「『逃走するストーカー兼放火犯を、車でぶつけて阻止』ということにならなかったら、『元暴走族が前方不注意で女性を跳ねた、業務上過失致傷罪』だからな」
 パール「ちょっと、ムショでも仲良くなれないコのようですねぇ……。先生、すぐに御夕食の御用意を」
 愛原「ああ、悪いな」

 放火に関してはアルバイター鈴木や、他のアパートの住人も目撃していたこともあり、女は警察に連行された。
 木造2階建てのアパートは全焼。
 住宅が密集していたこともあり、近隣の住宅にも類焼。
 また、死亡者こそいなかったものの、煙を吸ったり、避難の際に転倒したりするなどして、数名が軽傷を負っている。
 そんな放火犯の逃走を、結果的にとはいえ阻止したわけなので、高橋の事故についてはお咎め無しとなった。
 また、その際についた車の傷については、レンタカー会社のフルサポートブランに加入していたこともあり、保険適用で直してくれるような話になっている。
 まずは警察署に行って、事故証明書を取ってこなくては。
 それは明日、行くことにしよう。
 まあ、高橋に行かせるか。
 明日は、PTA会長代行としての仕事がある。
 こういう時、助手とかいると助かるな。
 それにしても、クライアントの不動産会社としては、踏んだり蹴ったりだろう。
 怪奇現象の原因と犯人を突き止めることはできたものの、結局は物件1つを全焼させられたのだから。
 ……これって、成功報酬もらえるのかな?
 いや、着手金は既にもらってるから赤字ではないけど、成功報酬が無いと大した黒字でもないんだよな。
 ……やっぱ、事故物件調査の仕事は止めといた方がいいかな。

 

 リサ「ねぇ、先生」

 リサが不安そうな顔をして、私の顔を覗き込んだ。

 愛原「何だ?」
 リサ「明日、学校には来るよね?」
 愛原「ああ。PTA会長代行だから、修了式に何かしら挨拶しないといけないみたいだから。あとはPTA役員会だな」
 リサ「そっか……」

 リサは安心したように頷いた。

 高橋「あー……」
 愛原「どうした?」
 高橋「いえ、車、修理の為に一旦返しちゃったじゃないスか」
 愛原「そうだな」
 高橋「代わりの車が来るまで、数日掛かるって言われましたよね?」
 愛原「そうだな……」
 高橋「先生とリサ、八王子に前泊するんスよね?」
 愛原「そうだが……あっ、そういうことか!」
 リサ「なになに!?」

 本来の計画では、藤野に行く前、八王子市内のホテルに前泊することになっている。
 ホテルは既に押さえてあるのだが、そこまでの交通手段として、高橋に車で送ってもらうことにしていたのだ。
 しかし今、その車が無い。

 高橋「俺の知り合いに電話して、車出させますか」
 パール「そのくらいなら、私もお手伝いできます」
 愛原「待て待て!違法改造車になんて乗りたくねーぞ!」

 八王子までは電車だな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする