報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「山奥の研究所」 2

2024-04-21 21:12:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月22日10時00分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター地下研究施設]

 重厚な鉄製の二重扉の先にある、リサが寝泊まりする施設。
 元からあった場所なのか、それともリサの為にわざわざ設置されたものなのかどうかは分からない。
 だが、あちこち改築の跡が見受けられることから、リサの為にそういう構造にされたというのは間違いないようだ。

 守衛長「ここがシャワールームです」

 

 廊下を挟んで右側の扉の先には、シャワールームがあった。
 脱衣所があって、シャワーブースの隣に洗面所が付いている。
 入って右側にはトイレがあり、そのトイレは……。

 

 愛原「良かったな。洋式のウォシュレットだぞ?」
 リサ「う、うん……」

 リサはホッとした。

 レイチェル「良かったですね。夢で見た汚い和式じゃなくて」
 リサ「そ、そうだね」

 確かに全体的にきれいで明るい水回りであったのだが、不満点があるとすれば、バスタブが欲しかったということだ。

 守衛長「ここが寝室です」

 

 リサ「むー……」

 広さとしては、4畳分弱くらいだろうか。
 シングルベッドが置いてあり、その横に小さなライティングデスクがある。
 天井にはダウンライトが2個ほど。
 そして、それに挟まれるようにしてエアコンが設置されていた。
 個別空調らしく、ドアの横にリモコンがある。
 地下階にある為、窓は無い。
 実質的に、リサの脱走防止に繋がっているというわけだ。

 守衛長「あ、因みにWiFiも飛んでいますから、自由に使ってください」
 愛原「ありがとうございます。良かったな、リサ」
 リサ「うん」

 他にも給湯室があり、食事はそこに設置されたテーブルで取ること、希望すればワンセグテレビを貸与されること。
 それ以外の飲み物や菓子の希望があれば、その日の検査・治療終了後または休憩中に自販機で購入可能とのこと。
 但し、ICカード等には対応しておらず、現金のみであるという。
 洗濯に関しては、シャワールームの隣にコインランドリーがあった。
 洗剤自動投入の新しい物ではなく、手動で投入するタイプである。
 ただ、料金は洗濯機が1回100円、電気式乾燥機が30分100円という破格の値段であった。
 こちらも現金のみであり、カードは使えない。

 愛原「リサ、取りあえず、現金を渡しておく。欲しい物があったら、これで購入してくれ」
 リサ「分かった」

 コインランドリーのことは聞いていたので、愛原がそれ用に小分けされた洗剤を購入している。

 守衛長「それではこれからの詳しい説明が、研究所職員からありますので、カンファレンスルームまでお願いします」

[同日12時00分 天候:不明 同地下研究施設]

 愛原「じゃあな、リサ。終わったら迎えに来るから、いい子にしてるんだぞ?」
 リサ「子供じゃあるまいし。でも、ちゃんと迎えに来てね」
 レイチェル「こんな地下なら、BOWが襲撃してくることはないでしょう。こちらの事は、私達に任せてください」
 リサ「分かった」

 リサはエレベーターの前で、愛原達と別れた。

 研究主任「それでは一旦、居住区に戻ってもらって、昼食を取ってください」
 リサ「先に食べていいの?」
 研究主任「はい。別に、健康診断というわけではありませんので」

 眼鏡をキラリと光らせ、オールバックの研究主任はしたり顔で言った。

 研究主任「その後は検査着に着替えておいてください」
 リサ「あの……ワンセグテレビ貸してください!」
 研究主任「いいですよ。後で持って行かせましょう」

 単独行動ができるのは居住区のみのようで、研究施設内では武装守衛の護衛……というより監視付きらしい。
 居住区は居住区で、出入口の扉が内側からは開かない構造になっている。
 どうあっても、リサを脱走させる気は無いようだ。
 また、居住区内の廊下に監視カメラが仕掛けられている。
 さすがに寝室やシャワールーム内には無いようだが。
 ダクトから脱出可能とはいえ、廊下にあるダクトは入口が小さかった。

 リサ「うーん……。確かに、夢で見た独房よりはマシだけど……」

 一応、給湯室の流しの水や洗面所の水は飲めるらしい。

 リサ「ん?」

 再び二重扉が向こう側から開けられたかと思うと、配膳台のワゴンを職員が押してやってきた。

 職員「昼食です」
 リサ「ありがとうございます」

 昼食はビーフカレーであった。
 リサの好みに合わせてか、辛口で、量も大盛り。
 但し、お代わりは無いようである。
 他に野菜サラダと味噌汁が付いていた。

 職員「あと、これはワンセグテレビです」
 リサ「あ、はい。ありがとうございます」

 災害用のポータブルタイプ。
 なので、画面はノートPCやタブレットの画面よりも小さい。
 スマホの画面よりは大きいくらいか。
 尚、ラジオも聴くことができる。
 アンテナが設置されているようで、テレビは受信できた。
 ACアダプタをコンセントに繋いで、それで視聴する。

 リサ(外に出る時間が全く無いってのが辛いな……)

 尚、外部との連絡は自分のスマホや、寝室内の内線電話だけのようである。
 リサの他、BOWの脱走の防止の為とはいえ、この圧迫感に慣れるかどうか微妙だった。

 職員「検査着を寝室の方に置いておくので、食事が終わったら着替えてください。食事は終了後、ワゴンの上に置いてくれれば結構です」
 リサ「分かりました」
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“愛原リサの日常” 「山奥の研究所」

2024-04-21 16:11:50 | このブログについて
[3月22日09時15分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター守衛所]

 藤野駅からタクシーに乗り込んだリサ達は、その足で国家公務員特別研修センターに向かった。
 そこ自体は既にもう何度も行った、勝手知ったる施設である。
 正門は普段、重厚な門扉が閉じられている。

 レイチェル「まるで刑務所のようですね」
 リサ「刑務所の受刑者の方がマシかもしれないよ……」
 愛原「あ、すいません。そこで止めてください」
 運転手「はい」

 リサ達が乗ったトールワゴンタイプのタクシーが、重厚な正門の前で止まる。
 愛原が支払いをしている間、リサはハッチを開けてもらい、そこから自分の荷物を降ろした。
 その間、レイチェルが辺りを警戒している。

 愛原「お待たせ」

 支払いを終えた愛原がタクシーから降りて来た。
 そして、正門横の通用口のインターホンを押す。

 愛原「おはようございます!東京から参りました愛原です!」

〔「どうぞ。お入りください」〕

 門扉の電気錠が解錠される音がする。
 愛原はドアを開けて、リサ達を先に入れた。

 守衛長「やあ、皆さん。またお越しですな」

 すっかり顔見知りとなった50代後半の守衛長がにこやかに出迎えた。
 便宜上、『守衛長』と呼ばれているだけで、正式には総務部総務課警備係長であり、部下の守衛達からは『警備官』と呼ばれているようだ。

 愛原「また、お世話になります。といっても、こちらのリサだけですが」
 リサ「ど、どうも……」
 守衛長「月並みですが、また手荷物検査をさせて頂きます」
 愛原「はい、分かりました。その前に、持ち込み禁止品は先に出しておきます」
 守衛長「ははは。さすが愛原さん、もう慣れたものですな」
 愛原「いや、それはもう……。レイチェル、ここでは銃器や刃物の持ち込みは禁止だ」
 レイチェル「Yes,sir.」
 守衛長「それにしても、日本の国家機密施設にアメリカ人が入って来るとはねぇ……。日本は敗戦国からねぇ……」
 愛原「米軍人ではないですよ、レイチェルは」
 レイチェル「BSAA北米支部、隊員養成学校生のレイチェル・グラハムです」
 守衛長「パスポートか在留カードは持ってますか?」
 レイチェル「はい」

 因みにレイチェルは、留学ビザで入国しているもよう。
 実際その通りなのだが。
 レイチェルの場合、BSAAが費用を負担している為、『公費留学』ということになる。
 留学後の進路は自由であることが多いが、BSAAの養成学校生ということもあり、大体がその後、BSAAに正規隊員として入隊することが普通。
 他にも、国防大学への進学の道もあるという。

 レイチェル「こちらがBSAAのIDです」
 守衛「はい」

 受付にいる守衛は、レイチェルの在留カードとBSAAの身分証の確認した。
 レイチェルの留学期間は来年春までと、比較的長期である為、在留カードの発行資格がある(90日以下の短期滞在者には発行されない)。
 本来は極東支部韓国地区本部のパク・ヨンヒが日本への留学対象者であったが、半死半生の憂き目に遭い、留学中止を余儀なくされた。
 そこで急きょ代わりに選定されたのが、レイチェルだったわけである。
 北米支部では地区本部制は実施されていない。

 愛原「これが私の銃器です」
 守衛長「これはまた立派なショットガンですな」
 愛原「もちろん、普段はこのようにバッグに入れております。で、これが許可証です」
 守衛長「安全装置は、ちゃんと付けていますか?」
 愛原「もちろんです。この通り」
 守衛長「さすがは愛原さんだ」
 守衛「ちょっと、困るな!こんなに持ち込まれちゃ!」
 レイチェル「Ah...ゴメンナサイ」
 愛原「どうしました!?……うっ!」

 レイチェルはどこに隠し持っていたのか、大型の拳銃が2丁とアーミーナイフが1丁、それとジャックナイフとサバイバルナイフを1丁ずつ持っていた。

 愛原「さすがは軍人さん……。養成員だけど」

 他にも大型拳銃に使用する銃弾もあった。

 レイチェル「これで全部です」
 守衛長「……一応、装備品につきましては、デイライトさんを通してBSAAの方に確認を取らせて頂きますので」
 レイチェル「はい。そうしてください」

 こうしてリサ達は、無事に入館証を手にすることができた。
 とはいえ、自由に構内を歩けるわけではなく、守衛長自らの護衛つき。
 それから、守衛も2人付いてくるVIP待遇だ。
 守衛達は警備会社から派遣されてきた、警備業法の適用を受けている『警備員』ではなく、国家公務員特別研修センターの運営元に直接雇用されている為、『守衛』である。
 着ている制服などは、殆ど『警備員』と変わらないように見えるが、やはり法務省の刑務官の制服に似ているところがある。
 紺色の制服なところは警察官に似ているようで、やはり警察官とは違う。

 守衛長「居住区へご案内致します。さすがに、研究施設まではお見せできませんが」
 愛原「それは仕方無いですね」

 まずは研修センターの建物の中に入る。
 その奥にあるエレベーターで、地下の研究施設に向かった。
 エレベーターを地下に向かわせる為には、専用のカードキーを読取機に読み取らさなくてはならない。
 しかし今回、リサ達に発行された入館証では、このエレベーターを動かすことはできなかった。
 先導する守衛長が持っている守衛用のカードキーで、ようやく起動させることができる。
 エレベーターは表向き、客室上階と下階を結ぶ車椅子対応用となっている為、ドアなどはガラス張りである。
 しかし、地下に向かうと、窓から見える景色は無機質なコンクリートだけのものとなる。

 レイチェル「かなり地下深い所まで下りるようですね」
 守衛長「元々が小高い所にありますからな、そのように見えるだけで、そんなに地下深い所まで潜るわけではありません」

 と、守衛長が説明する。
 そしてようやく、エレベーターは地下階に到着した。
 研究施設は見せられないとはいうが、導線上、リサが滞在する居住区に向かうまでの間、ちょこっとそこは通ることになる。
 研究施設ということもあって、白い床に白い壁が目立つメタリックな内装となっている。
 ガラス張りの部屋の前を通るが、そこは研究施設の事務所となっているだけのようだ。
 ブレザーに制帽、そして警棒を持っているだけの地上の守衛達と違い、地下研究施設を警備する守衛は、ヘルメットと防刃チョッキ、ショットガンで武装していた。
 ここには、研究用とはいえ、バイオハザードで暗躍したクリーチャーも保管されているからである。
 万が一、脱走した時のことを考えて、武装守衛を配置しているのだろう。
 だが、リサはそうは思わなかったようで……。

 リサ「もしかして、警戒されてる?」

 自分の警戒の為に、特別に配置されているものだと思ったようだ。
 しかも……。

 守衛長「まあ、万が一です。万が一。あなたが何もしなければ、我々も、あの人達も何もしませんよ」

 と、守衛長も肯定している。
 ということは、武装守衛はいつもいるわけではないのだろうか。

 守衛長「こちらです」

 事務所エリアの廊下を突き抜けると、カードキーで開けるドアがあり、守衛長はそれを開けた。
 しかも、二重扉になっている。
 それらを開けて、ようやく居住区に到着した。
 内部の詳しい案内は、次回にさせて頂く。
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