報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの大手術」

2024-04-24 16:14:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月23日08時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 いよいよ、リサの手術が始まった。
 まずは全身麻酔から行う。
 人間と違って、相手はBOW(Bio Organic Weapon)なので、生半可なことでは麻酔は効かない。
 まずはリサの体内にある特異菌を死滅させ、また、寄生虫も死滅させる必要があった。
 その際、クリーチャー化した寄生虫が暴れたり、リサ自身が暴走する危険性があるあので、手術室の内外には武装守衛の他、BSAAも配置されている。
 基本的には日本地区本部が対応に当たるが、在日米軍に間借りして出向している北米支部も出動していた。
 その中に、レイチェルが後方支援要員として配属されているという。
 養成学校生とあっては、まだ最前線に出せないからだろう。
 とはいえ、貴重な実地研修である。
 正規隊員でもなかなか滅多にお目に掛かれないBOWなだけに、訓練生も勉強の為に呼ばれたのだろう。
 正規隊員とは違う、養成学校生の軍服を拝む良いチャンスだ。
 ……ここまで詳細に実況できているのは、偏にこのもようはBSAAの広報官によって撮影されているからである。
 もちろん、視聴できるのは限られた者だけであるが。
 今回私達はリサの保護者ということもあり、特別にこの中継を視聴することが許可された。
 但し、実際の手術シーンは見せられないという。
 まあ、とんでもないグロ画像になるだろうから、そこまで見たいとは思わない。
 もう1度言うが、今日は地上の研修センターも含め、地下の研究施設もBSAAなどが武装警備に当たっている。
 まさかとは思うが、こんな時に栗原蓮華が出張ってくるとは思えなかった。
 行くなら、上野利恵のところだろう。
 今回は善場主任も、現地入りしているという。
 NPO法人デイライトは、BSAA日本地区本部隊の窓口業務を請け負っているからである。
 公式には存在しないことになっているが、善場主任は日本政府側の諜報機関の人。
 つまり、日本政府も関心を持っているということだ。

 高橋「先生、始まったみたいです」
 愛原「そうか」

 どうやら全身麻酔が効いたようで、手術が始まったようだ。
 当初の予定では、これでリサが人間に戻れることになっていたが、今は完全にはそれは無理となり、今では、『これ以上、化け物に変化するのを防ぐ』という後進的なものになっている。

[同日12時00分 天候:雨 同事務所]

 高橋「先生、昼飯っス」
 愛原「ああ」

 昼食は高橋が作ってくれた。
 ホットドッグではなく、今日は鍋焼きうどん。
 今日は1日中雨で肌寒い日なので、ちょうど良い。
 実は、進展はあまり無かった。
 何でも、特異菌の除去に手間取っているのだという。

 善場「リサが保有している特異菌は、Gウィルスと融合してしまっているので、まずはそれを分離させる必要があります」

 特異菌の除去には、アメリカのエブリン退治の際にも使用された薬剤が使用される。
 それで少しずつGウィルスから引き剥がす必要がある。
 Gウィルスにもワクチンがあるが、胚状態のものを殺す程度のものであり、ここまで本体と融合している状態での使用は危険ということで、見送られている(シェリー・バーキン氏や善場主任は『胚』を埋め込まれただけの状態だったので、ワクチンが効いている)。
 いずれは研究は進み、成長したGウィルスを除去できるようにはなるのだろう。
 この時、本当にリサは人間に戻れるのかもしれない。

 愛原「こりゃ、本当に何日も掛かる見込みですか?」
 善場「その見込みです」
 愛原「うへー……」
 善場「特異菌を除去さえできれば、あとはGウィルスを眠らせるだけなのですが」
 愛原「Gウィルスを眠らせる?そんなことができるんですか?」
 善場「はい。その仕組みはお話しできませんが、眠らせている間に触手の素を除去し、痣を除去することができます」
 愛原「そうなんですか。……あれ?何か、前に、『Gウィルス単体では危険』とか言ってませんでした?」
 善場「はい。本物の特異菌ではなく、無毒化した『偽の特異菌』をリサに投与します」
 愛原「そんなものがあるんですか?」
 善場「はい。そうすることで、Gウィルスは従来通り、特異菌を取り込んでいると勘違いするわけです。当初はTウィルスを使用するという案もありました。Tウィルスなら愛原所長方には抗体がありますし、今はワクチンもありますから」
 愛原「とはいえ、流出したら危険なことに変わりは無いのでは?」
 善場「はい。ですので、最終的にそれは見送られました」
 愛原「『無毒化した特異菌』とは、具体的にどういう特異菌なのでしょう?」
 善場「有毒な特異菌は感染者をモールデッドに『転化』したり、BOWに『転化』したりしますが、無毒化した物についてはそういう現象は起こりません」
 愛原「へえ……!」
 善場「寄生虫が感染して、リサに使役されることもないでしょう」
 愛原「たまにあいつ、寄生虫を悪用することがあるからなぁ……」
 善場「ただ、無毒化したといえ、元は特異菌です。リサに投与することで、再活性しないとは限りません。ただ、他に方法が無いので」

 公一伯父さんの薬剤って、結局何だったのだろう?
 善場主任の話を聞いている限り、かなり不完全なものだ。
 時間は掛かるが、有毒な特異菌を安全に除去できて?更には有毒であるはずの特異菌を無毒化できるなんて、それは確かに画期的なことだろう。
 Gウィルスが除去できないのは、私も前から知っている。
 『胚』の状態でワクチンを投与されても、残ったウィルスが体内に取り込まれたままという絶望的なのがGウィルスの特徴だ。

 高橋「先生、早く食べないと冷めちゃいますよ?」
 愛原「ああ、今食べる」

 現場ではリサも含め、飲まず食わずの状態なのだろう。
 それを想像するに申し訳無いことだが、私は昼食に箸を付けさせてもらうことにした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「鬼の... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「リサ... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事