報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「リサの大手術の後で」 

2024-04-24 20:34:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月24日18時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 愛原「乾杯!」
 高橋「カンパーイっス!」
 パール「乾杯です!」

 リサの手術は2日掛かりであった。
 結論から言うと、手術は成功。
 2日掛かりであった。
 具体的には当初の予定通り、まずは体内の特異菌を死滅させ、感染していた寄生虫を全て除去する。
 そして、Gウィルスは完全除去できる技術が確立するまでの間、偽の特異菌を噛ませておく。
 偽の特異菌とは、無害化した特異菌のこと。
 特異菌の素は、ルーマニアの山奥で発見された新種のカビ。
 それをバイオテロ組織が手に入れて、生物兵器化させたものである。
 そのカビの菌根は焼却処分されている。
 偽の特異菌には、Gウィルスが変化の時に出す触手(通称、『ネメシスの鞭』)が異物であることを知らせる情報が入っている。
 それに騙されたGウィルスは、触手を体から排除しようとするので、Gウィルスの核に麻酔を打ち込んで黙らせると、その隙に触手を取り除くという荒療治であった。
 その後は美容外科手術で、触手が出入りしていた痣を綺麗にする。
 それから、手術の為に体に開けていた穴を塞いで終了というもの。
 Gウィルスは残り、無害化しているとはいえ、特異菌も残っているわけだから、リサを完全に元の人間に戻すことはできなかった。
 少なくとも、これでリサが触手の生える第2形態以降には変化しないはずである。
 あとは意識が回復するのを待つだけ。
 もちろんその後は経過観察があったり、点滴治療を行ったりするので、施設での暮らしはもう少し続くことになる。

 愛原「取りあえず、明日・明後日は上野利恵の所に行こう」
 高橋「そこは予定通りなんスね」
 愛原「ああ。まあ、仕方無いだろう。上野利恵達には、栗原蓮華と戦ってもらうという任務もあるし、その挨拶を兼ねてだ」
 高橋「鬼同士をケンカさせるなんて、いいアイディアっスね」
 愛原「元々が、蓮華達が上野達のシマで暴れたのが原因だからな。そこに便乗させてもらうだけの話だよ」
 高橋「さすがは先生っス」
 愛原「とはいえ、何の挨拶も無いのはアレだからな。それに、利恵達もバカじゃないから、俺の身に何かがあったら大変なしっぺ返しがあるということくらいは知ってるよ」
 高橋「なるほど」
 愛原「リサの意識が無い今のうちに、たーっと行って、たーっと帰って来るんだ。分かったな?」
 高橋「うっス!」
 パール「分かりました」

[同日23時00分 天候:晴 愛原家4階・愛原の部屋→リサの部屋]

 愛原「さーて、明日は朝から移動だし、もう寝るとしよう」

 リサがいないので、4階では私1人で寝ることになる。
 それでも私は自室に入り、ベッドに潜り込んだ。
 そして、消灯して幾ばくかもしないうちに……。

 愛原「ん?」

 トントンとドアがノックされた。
 それも、小さなノックの音。
 よく聞くと、ドアのあちこちから聞こえて来る。
 まるで、指でノックしているかのようだ。

 愛原「何なんだ?」

 私がドアを開けると、そこには……。

 愛原「うわっ!?」

 白い紐のようなものと、イモムシみたいな物が蠢いていた。
 リサの寄生虫が頭に浮かんだ。
 それを合図にするかのように、その白い物達は合体すると……。

 愛原「手!?」

 人間の手の形になった。
 具体的には、手首から先の部分だけ。
 右手があったり、左手があったりする。
 それが4~5個になった。
 一体、これは何なんだ?

 愛原「うわっ!?何をする!?」

 手達は私を軽々と抱えると、部屋から連れ出し、リサの部屋へと連れ込んだ。
 オッサン臭い私の部屋と違い、リサの部屋は女の子の匂いで一杯である。
 手達は私をそこで降ろすと、リサのベッドの掛布団を捲り上げた。
 そして、『右手』の1つはそこを指さし、『左手』の1つはマットレスをポンポンと叩いた。
 ここで寝ろと言いたいのか?
 何でー?

 愛原「そもそもオマエ達は一体、何なんだ?」

 私の問いに『右手』の1つが、リサの机の上に向かった。
 そしてそこにあるペンを取ると、メモ用紙にスラスラと何かを書いた。

 『リサのともだち』

 愛原「リサの友達だぁ?リサの友達が、こんな勝手なことをしていいのか?」

 すると、『右手』がまたスラスラとペンを走らせる。

 『これはリサがのぞんでること』

 愛原「女の子のいい匂いがするが、俺みたいなオッサンが寝たりしたら、オッサンの臭いが染み付くぞ。それでもいいのか?」

 『リサにとってはごほうび』

 愛原「マジか……」

 すると、別の『右手』にドンと背中を押され、私はベッドに倒れ込んだ。

 愛原「おいおい!」

 そして無理やりベッドの中に入れられると、掛布団を被せられた。

 愛原「ん?」

 ベッドの中に何かある。

 

 取り出すと、それはリサの脱ぎっ放しのショーツだった。
 あいつめ、脱いだら洗濯機のカゴに入れろって言っといたのに……。

 愛原「ん?」

 更に手達が何か書いて持って来る。

 『楽しんで💛』

 愛原「こらぁっ!」

 恐らく、リサの体内にいた寄生虫達が、彼女が寝ている間などに体から抜け出たものだろう。
 それまで体内にいたことで特異菌に感染し、彼女の意を多分に受けているのだ。

 だから、『リサの友達』を自称してはいるが、実際は手だけの分身みたいなものだろう。

 愛原「ちょっと握手してくれるか?」

 試しに私は右手を差し出した。
 すると、手達は我先にと私の手を握ろうとしてくる。

 愛原「握手は右手でするものだぞ」
 左手達(´・ω・`)
 愛原「あー、やっぱり」

 握手したみた結果、分かったことがある。
 まるで、人間の手と握手しているような感覚であったが、もっと言うと、リサと握手をしたような感じだった。
 だから、リサの実質的な分身だと確信した。
 これは恐らく、本人が帰宅するまでは消えることはないだろう。

 愛原「あー、分かった分かった。ここで寝りゃいいんだろ、ここで」

 どの道、従わないと部屋から出してもらえなさそうだ。
 私は観念して、リサのベッドに潜り込むことにした。

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