報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「土曜日のおやつ」

2024-04-06 20:20:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月18日15時18分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 都営地下鉄浜町駅→都営新宿線1488K電車先頭車内]

 事前検査が終わった後、私とリサは再び菊川に帰ることにした。
 尚、事前検査の結果は、特に悪い数字が出なければ、私達に教えられることはない。
 検査結果のデータはデイライト、そして藤野の研究施設に送られる。

 愛原「……よし。送信っと」

 私は検査終了の報告を、善場主任にスマホからメールで送信した。

 リサ「今時、メールなんだね」
 愛原「LINEは外国製だし、セキュリティにも不安があるということで、官公庁や企業の業務報告はメールが未だに使われてるよ」
 リサ「ふーん……」

 来た道を戻るように、地下鉄の構内へと入る。

 リサ「ねぇ、先生。帰り際、ちょっとおやつ食べて行かない?」
 愛原「食べる?買うじゃなくて?」
 リサ「うん。コーヒーショップとか、カフェとか」
 愛原「お腹空いたのか?」
 リサ「それもあるね。検査の場合、体がというよりは、精神が疲れる感じ」
 愛原「はー、なるほど……」

 まあ、私もこの歳になれば、悪い結果が出やしないかとヒヤヒヤすることがあるが。

 愛原「分かったよ。検査頑張った御褒美だ。菊川駅に着いてからでいいな?」
 リサ「いいよ」

 ホームで電車を待っている間、高橋達にも連絡する。
 こちらはLINEでいい。
 検査が無事に終わってこれから帰るが、その前に休憩してから戻る旨であった。

 高橋「了解です。お疲れ様です。パールが、今日の夕飯は鍋にしようかと言ってますが、それでいいですか?」

 という返信が返ってきた。

 愛原「なるほど。それはいいな……」
 リサ「何が?」
 愛原「今日の夕飯は、鍋だって」
 リサ「すき焼き!?」
 愛原「ちょっと待て。聞いてみる」

 私は何の鍋かと聞いてみた。
 その回答は……。

 愛原「寄せ鍋らしい」
 リサ「寄せ鍋……」

 週末だから、余った食材の一掃が目的だろう。
 週末にカレーにするのも、それが理由である。
 とはいえ、カレーだけでは材料が限定されるので、それでも一掃できない場合、寄せ鍋にすることがある。

 愛原「肉類も多少は入っているだろう。大きな土鍋を使うから、少なくとも足りないってことはないと思うが……」
 リサ「まあ、そうだね」

〔まもなく2番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。一部、電車とホームの間が広く空いておりますので、足元にご注意ください〕

 カーブの途中に駅がある為、菊川駅や岩本町駅よりも、電車は速度を落として入線してくる。
 だからか、菊川駅ほど強い風が浜町駅では吹かない。
 帰りは京王電鉄の電車がやってきた。
 クリーム色のフロント部分が目立つ。

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。はまちょう、浜町〕

 

 下りの電車は、そんなに混雑していなかった。
 帰りは空いているローズピンクの座席に、隣り合って腰かけた。
 すぐに短い発車メロディが鳴る。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 往路の都営の車両とは音色の違うドアチャイムを鳴らしながら、電車のドアが閉まる。
 ホームドアも閉まると、運転室内から発車合図のブザーが微かに聞こえる。
 そして、ガチャッとハンドルを操作する音が聞こえると、電車が動き出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 愛原「おっ、善場主任から返信が来たぞ」
 リサ「ふーん……」

 『お疲れ様でした。お気をつけてお帰り下さい』とのことだった。
 『特に指示があれば、またこちらから連絡させて頂きます』とも添えられていた。
 仮に今回の検査結果が悪い物であれば、連絡するということだろう。

 リサ「公一伯父さんのこと、善場さんに報告しなくていいの?」
 愛原「次の伯父さんの行き先は分かってる。上野利恵の所だ。そこで何かあったらBSAAが出動するだろうから、どうせそこで分かるよ」
 リサ「ふーん……」
 愛原「伯父さん、ああ見えて金持ちだから、俺達の時も、きっと高い御祝儀を貰えるぞ?」
 リサ「! それもそうか!」

 低かったリサのテンションが、やや上がったw

[同日15時21分 天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→珈琲館菊川店]

〔菊川、菊川。警備会社の全日警、東京中央支社はこちらでお降りください〕

 電車が自宅最寄り駅に到着する。

〔2番線の電車は、各駅停車、本八幡行きです。きくかわ~、菊川~〕

 ドアが開くと、私達は電車を降りた。

 リサ「わっ!」

 出て行く反対方向の電車の風に、リサが被っていたパーカーのフードが少しズレた。

 愛原「別に今は人間形態だから、被らなくていいんじゃないか?」
 リサ「それもそうだね」

 リサは完全にフードを取った。
 黒いおかっぱ頭が現れる。
 鬼形態になると、髪の色も変わるから不思議だ。
 毛先がオレンジ色になるだけだったり、髪全体が脱色したような色になったりとバラバラ。
 因みに栗原蓮華は、見事な銀髪となっている。
 上野利恵やその娘達は、特に髪の色が変わることはない。

 愛原「どこの店がいい?」
 リサ「珈琲館。ホットケーキ食べたい」
 愛原「そういうことか」

 エスカレーターで改札階に上がり、それから改札口を出る。
 そこから地上に向かうエスカレーターに乗るが、それは途中までで、あとは階段を上る。

 愛原「やっと帰ってきたな……」

 新大橋通りに面している出口から地上に出ると、リサのお目当ての店に向かった。

 リサ「先生は何か食べるの?」
 愛原「いや、俺はコーヒーだけでいいよ」
 リサ「少食」
 愛原「そ、そうかな?まあ、夜は鍋だし」
 リサ「そうだけどさ……」

 今日は少し肌寒い日だから、鍋でちょうど良いだろう。
 私とリサは店内に入ると、空いているテーブル席に向かい合って座った。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの事前検査」

2024-04-06 13:01:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月18日12時53分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1211T電車先頭車内]

 私とリサは、自宅最寄りの地下鉄の駅にいた。
 今朝の朝食は、昨夜のカレーの余り。
 リサが沢山食べるだろうと思って、大量に作り過ぎたのが余ったらしい。
 そのうちの1食分は、公一伯父さんが食べてくれたのだが……。
 まあ、朝カレーも悪くない。
 今日は午前中だけ事務所を開けたこともあり、昼食は高橋がホットドッグを作ってくれた。
 取りあえずリサは、それを昼食に食べた。
 検査前なのに食べて良いのかと思うだろうが、特にそのような指示は受けていない。
 健康診断などとは違う目的だからだろう。
 即ち、リサの現在のGウィルスや特異菌の状態についてだ。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 電車の接近放送がホームに鳴り響く。
 リサはピンク色のパーカーに、黒いショートパンツを穿いていた。
 トンネルの向こうから、強風と共に電車が接近してくる轟音が聞こえて来る。
 ホームに進入してきた電車は、東京都交通局の車両だった。
 フロント部分に、東京都のマークであるイチョウが描かれている。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 土曜日の昼間ということもあり、電車はそんなに混んでいなかった。
 それでもガラガラというわけでもなかった為、私達は吊り革と手すりに掴まった。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 短い発車メロディの後で、電車のドアとホームドアが閉まる。
 運転室内から発車合図のブザー音が微かに聞こえたかと思うと、ハンドルをガチャガチャ操作する音が聞こえ、それから電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 リサは人間形態に化けている状態だが、瞳の色などは赤いままである。
 牙も隠し切れていないので、今は黒いマスクを付けている。

 リサ「はぁーあ……。検査ヤだな……」
 愛原「俺も一緒にいるから。何とか頑張ってくれ」
 リサ「実験動物は、死ぬまで実験動物だってことだね」
 愛原「いや、人間にさえ戻れば……」
 リサ「善場さんやシェリーさんも、定期的な検査は受けてるんでしょ?」
 愛原「ま、まあ、それはそうだが……」

 まだヨチヨチ歩きのローズマリー・ウィンターズもそうだと聞く。
 両親共にアメリカからの移住……つまり、BSAA北米支部から欧州本部での管理になったということだ。
 ……いや、もう小学校に入るくらいにはなったのだろうか?
 子供というのは、しばらく見ないうちに大きくなるというからな。
 まあ、ここにいるリサもそうか。
 初めて会った時は、まだ小学校高学年くらいの歳だっただろうに、今ではもう高校生だ。
 あの時と比べればだいぶ人間臭くなったものの、しかし、人間に近づいたかと言えば……首を傾げてしまう。
 それを一気に人間に近づけてしまおうというのが、今回の藤野行きの目的だ。
 リサが海外の人間型BOWと相まみえる機会はあるのだろうか?

[同日12時56分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 都営地下鉄浜町駅]

 菊川駅から浜町駅までは2駅ほど。
 この辺りは駅間距離が短い為、ものの数分で到着する。

〔浜町、浜町。明治座前。警備会社の全日警本社へおいでの方は、こちらでお降りください〕

 電車がカーブしているホームに到着する。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。はまちょう、浜町〕

 愛原「だいたいベタな法則で、クリニックの営業時間、土曜日は午前中だけ。一般の患者が殆どいなくなった時間を狙って、お前の検査だそうだ」
 リサ「でしょうね」

 電車を降りると、エスカレーターに乗って改札口を目指す。
 それから更に地上を目指して、駅の外に出た。

 リサ「眩しい……」

 外に出ると、昨日と打って変わって好天となった太陽が出迎える。
 リサは眩しそうにしたものの、特に何かダメージを受けることはない。
 これが栗原蓮華や、彼女に鬼化させられた元人間達は体が炎上するだろう。
 それはリサだけではなく、上野利恵達も同じ。

 愛原「大丈夫か?行こうか」
 リサ「うん」

 まだ太陽の下に出られるのなら、見込みはある。

[同日15時00分 天候:晴 同地区内 某クリニック]

 駅の近くのビルの中にあるクリニックに向かった。
 そこでリサが受けた検査は、私が受けるような健康診断とほぼ同じ。
 まずはレントゲン検査。
 それから採血、採尿。

 リサ「……あ。わたし、まだ先生にマーキングしてない。今度、オシッコ引っ掛けていい?」
 愛原「ダメ!」
 リサ「……『1番』からはマーキングされたくせに」
 愛原「あれは無理やりされたの!」

 それから検便。
 リサの寄生虫の状態を調べる為だという。
 特に今は排便の欲求が無いリサは……。

 看護師「それでは、お浣腸します」
 リサ「わたし、先生にやってもらたいたなぁ……」
 愛原「アホか!」

 次は身長とか体重、聴力や視力。

 リサ「お!少し伸びたよ、先生!」
 愛原「そりゃあ、良かった」

 せめて、アグネス・ラムくらいなグラマーにはなってもらいたいものだ。
 “うる星やつら”のラムちゃんも、そのアグネス・ラムがモデルだというしな。
 現実はFGOの酒呑童子……。

 リサ「

 バチッ

 愛原「いでっ!?」
 リサ「大丈夫ー?何か空気が乾燥してるっぽいからぁ~?静電気には注意しないとねぇ?」
 愛原「オマエ、ワザとだろ……」

 ラムちゃんみたいな電撃は使えなくなったものの、静電気を放つくらいはできるもよう。
 それも藤野に行った時に、封印してもらいたいものだ。

 検査技師「両視力とも2.0です!」
 リサ「余裕余裕!」
 愛原「さすがだな……。アフリカ原住民くらいの視力はありそうだな」

 次は、医師による問診。

 医師「それでは、喉の奥を見させてください」
 リサ「おー、出た。長いアイスの棒みたいなヤツ」
 愛原「いいから口開けて」
 医師「…………」
 愛原「どうですか、先生?」
 医師「喉の奥で、イモムシさんがバイバイしているようですねぇ……」
 愛原「は?」
 リサ「見る?」
 愛原「いや、いいよ!」
 医師「こういうのも、藤野の施設で取ってもらえるといいですねぇ……」
 愛原「そう願っています」

 Gウィルスだけはどうしても取り除けないから、せめて他の特異菌や寄生虫が除去できれば良いというのがBSAAなどの考えらしい。
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