報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「日曜日の仕事」

2024-04-07 21:09:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月18日09時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 愛原「おはよー」

 私がゆっくり目に起きると、既に高橋達はダイニングにいた。

 高橋「おはようございます!」
 パール「おはようございます」
 高橋「先生、コーヒーをどうぞ」
 愛原「ああ、ありがとう。リサは何をしてるんだ?」
 高橋「パールの手伝いです。今朝は目玉焼きとウィンナーなんですが、パールを手伝っているんですよ」
 愛原「それは珍しい」
 パール「……はい、ここで返してください」
 リサ「はいっ!」
 パール「はい、上手にできました。これが目玉焼きの両面焼き、『ターンオーバーです』」
 リサ「ありがとう」
 愛原「目玉焼きの両面焼きって、『ターンオーバー』って言うんだ?」
 高橋「そうですね。俺の時は片面焼きですけど」
 愛原「ああ、そうだな。片面焼きは何て言うんだ?」
 高橋「『サニーサイドアップ』です」
 愛原「……前者はドライブテク、後者は女の子の髪型の名前っぽいな」
 高橋「あー、まあ、似てますね」
 愛原「どうしたんだ、高橋?」
 高橋「いや……明日の朝飯当番、俺なんスけど……」
 愛原「何か都合でも悪いのか?」
 高橋「いえ、そういうわけじゃなくて……。俺も明日、目玉焼きにしようと思ってたんで、先越されました」
 パール「そういうのは先に言ってよ!」
 高橋「そんなこと言ったってよォ……」
 愛原「別にいいよ、2日くらい続いても。目玉焼きは好きだし」
 高橋「サーセン。オムレツで良かったら、そっちにしますか?」
 愛原「そっちにしようよ!」
 高橋「あー、でも!今度はウィンナーが被っちまう!」
 愛原「だからいいって!2日くらい続いても!」
 パール「……だいたい、こんな所で良いでしょう。愛原先生は黄身は半熟がお好きなので、この辺で。これ以上焼くと、黄身が硬くなります」
 リサ「了解!」

 チーン♪(オーブントースターのチンベル)

 高橋「先生、パンが焼けました」
 愛原「おっ、ありがたい」

 高橋、オーブントースターから食パンを取り出した。
 パールはリサへの料理指導で忙しいので、当番外ながら、手の空いている高橋も少し手伝う形となっている。
 他にもカット野菜のサラダを盛りつけたり、インスタントスープを作ったりしている。

 リサ「はい、先生!できたよー!」
 愛原「ありがたい」

 卵の量としては1人2個分である。

 愛原「リサ、今日はどこに遊びに行くんだ?」
 リサ「池袋」
 愛原「ブクロかぁ……」
 高橋「今日の事故物件調査は豊島区っス」
 愛原「じゃあ、ブクロ近辺だな。向こうで会うかもな?」
 リサ「運命だね!」
 愛原「いや、ただの偶然だと思うが……」
 リサ「そこは運命って言ってほしい」
 愛原「ブクロのどこだ?」
 リサ「ラウンドワンでボウリングしたり、カラオケしたり、ダーツしたりするんだって」
 愛原「そうか。それは楽しそうだな」
 高橋「オマエの力でボール投げたら、ピンがバラバラになるぜ?ダーツも、的が真っ二つだ」
 愛原「それはダメだな!」
 リサ「人間形態で、そっと投げるから」

 私は栗原蓮華の岩投げを思い出した。
 漬物石くらいの大きさの石を片手で、簡単にぶん投げることができるのが鬼だ。
 誰かが、『女ギガンテス』と言っていた。
 もちろん蓮華はそこまで体が大きいわけではないが、実際にギガンテスの絵画を見ると、岩をブン投げようとしているのだからシュールである。
 リサもやろうと思えばできるのだろうが、やろうとはしない。

 愛原「気を付けてやれよ」
 リサ「分かってるよ」

[同日11時00分 天候:晴 東京都豊島区北池袋界隈]

 私は高橋の運転する車に乗って、クライアントの不動産屋から受けた事故物件の調査依頼について、現場に向かうことにした。
 不動産屋としては、告知義務が無くなるまでアルバイトを住まわせることになっているのだが、そんなアルバイトが逃げ出すような物件も稀にあり、それの調査依頼だった。
 こちらとしては、改めてこちらで雇ったバイトを住まわせてみることにしている。
 尚、家賃や光熱費は不動産屋持ちにしている。

 愛原「えーと……ここだな」
 高橋「日曜日でも仕事されるなんてさすがです!」
 愛原「何言ってるんだ。明日、報告期限なんだから、今日のうちに調査を終えるだけのことだ。探偵の仕事も警備員同様、土日とか関係無いんだからな?」
 高橋「はい!」

 車をどこか邪魔にならない所に置く。
 池袋地区の住宅街も、なかなか道が狭いので、車を止める場所に苦労する。
 運転席には高橋に乗っててもらい、私が単独で事故物件に向かうことにする。

 愛原「ここだな」

 とある築年数の行っているアパートに着いた。
 そして、インターホンを押した。

 バイト「はい?」
 愛原「お疲れ。様子はどうだ?」
 バイト「あっ、社長!」

 高橋やパールが集めたバイトなので、見た目のガラは悪い。
 ここに住んでいるのは高橋の知り合いで、スキンヘッドの肥満体の男だった。

 愛原「何か、幽霊でも出たか?」
 バイト「何か目に見える物が出たってわけじゃないんスけど、ここって、他に誰か住んでるんスすかね?」
 愛原「ああ。キミの部屋の隣の部屋に1世帯住んでるだけで、あとは空き部屋だって」
 バイト「……マジっスか?」
 愛原「築50年くらいだから、そろそろ建て直しの時期だろう。リノベーションもロクにしてないこのアパート、よっぽど金に困ってる人しか入らないだろうよ。で、何かあったのか?」
 バイト「隣の部屋から物音がするのはいいんスけど、上の階や下の階からも物音がするんスよ」
 愛原「……マジか?」

 このアパートは3階建てである。
 事故物件というのは、2階の角部屋だ。
 1フロアにつき3部屋あるから、全部で9世帯住めるアパートである。
 だが、今はこのバイトの部屋と、隣の部屋しか埋まっていないはずだ。

 愛原「例えばどんな?」
 バイト「便所の水を流す音とか……」

 ザザー!(トイレの水が流れる音)

 愛原「…………」
 バイト「あとは、流しの水流してる音とか……」

 バシャバシャバシャ!(流しで何か洗い物をする音)

 愛原「……今、キミの部屋、キミ以外に誰かいる?」
 バイト「俺だけっスよ!今、聞こえましたよね?!俺、別に便所の水も、流しの水道も使ってないっスよ!今は!」
 愛原「う、うん。知ってる。も、もしかして、このアパート……。この部屋だけじゃなくて、全部の部屋が事故物件なんてオチじゃ……?」

 探偵をやっていると、たまにこういうこともある……のか?
コメント
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