報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「雨の金曜日」 2

2024-04-05 21:04:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月17日18時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 予定通り、金曜日の夜はカレーとなる我が家。
 カレーの具材は、スーパーの値段によって決まる。
 今日は幸いカレー用の牛肉が特売となっていた為、それを購入した。

 リサ「カレーにはお肉!お肉だよね!赤身肉がいっぱい入ったヤツ!」
 パール「野菜も食べないとダメですよ。野菜カレーはオススメです」
 高橋「俺は、ムショ時代にも食えなかったシーフードカレーなんかいいと思ってるんだけどな」
 愛原公一「何の何の。ワシほどの食通になれば、ルゥのみで十分ぢゃ」
 愛原学「皆して好みがバラバラだねぇ……。高橋が今夜の夕食当番の時は、シーフードカレーになるところだったかな」
 高橋「そうかもです」
 公一「うーむ……カレーの成り立ちからして、シーフードは、ワシはあんまりオススメできんがの」
 高橋「そうスか?でも、ここは日本っスからねぇ……」
 学「いや、ちょっと待て待て待て!マテウス!」
 高橋「何スか?」
 学「何で公一伯父さんがしれっとうちの夕食に参加してんの!?」
 公一「何じゃ?伯父が甥っ子の家に遊びに行っちゃいかんのか?」
 学「いや、あんた、普通のおじさんじゃないじゃん!」
 公一「つれないのォ……。せっかく、お前の弟子達が結婚するというんで、お祝いを持って来たというのに……」
 学「どこで聞き付けたの……。だいたい伯父さん、指名手配食らってるんだから、あんまりのこのこ出歩かない方がいいんじゃない?」
 公一「指名手配といっても、ワシのはお前達の想像する指名手配とは違うからの」
 学「何だい、それ?」
 公一「もしも警察がワシを見つけても、任意同行しかさせられんのぢゃ。あくまでも、BSAAに指名手配されとるというだけ。ワシを拘束できるのは、BSAAやその窓口機関のデイライトだけぢゃよ。学、オマエも元警備員なら分かっているように、如何に探偵とて、民間人のオマエ達にもワシを拘束できる権限は無いのぢゃ」
 学「あー、そうだね」
 公一「というわけで、これはワシからの御祝儀ぢゃ。結婚、おめでとう」
 高橋「あざっス!……いや、ありがとうございます!」
 パール「ありがとうございます」

 なかなか厚みのある封筒だが、一体諭吉先生が何人分入っているのだろう?

 愛原「ちゃんと祝儀返ししないとダメだぞ?」
 高橋「は、はい!」
 公一「そんなもん要らんよ。それじゃ、ごちそーさん」

 公一伯父さんは席を立った。
 どうやら用件としては、夕食のタダ飯と、高橋夫婦に御祝儀を渡しに来ただけのようである。

 公一「ああ、そうそう。藤野に行く件じゃが……」
 学「それも知ってるのか……」
 公一「多分、鬼には気をつけなくても大丈夫かもしれんぞ?」
 学「えっ、どういうこと?」
 公一「ワシの知っている限り、今、鬼達で争いが起きておる。そうじゃのう……」

 公一伯父さんは、リサを指さした。

 リサ「ん?」

 公一「このコが第1の勢力だとしたら、第2は言うまでもなく、栗原蓮華。そしてもう1つは……」
 学「上野利恵か?」
 公一「ほっほ!さすがの学も察しが良いわい!」
 学「他に思いつかないんでね」
 リサ「勢力って、わたし1人だけ?」
 学「まあ、デイライト、引いてはBSAAがバックに付いているじゃろうがな」
 リサ「リエが……」
 学「天長会の布教活動でも始めるつもりなのかね?」
 公一「気になるようなら、オマエも『現地調査』してみてはどうかね?」
 学「現地調査……。天長園に泊まれってか」

 するとリサが……。

 リサ「ダメーッ!絶対ダメーッ!」

 目の前にまだ牛肉たっぷりのカレーが残っているにも関わらず、リサはそれを食べるのを中断して席を立った。

 リサ「先生!リエのヤツ、先生を食べようとしてるんだよ!だから絶対行っちゃダメ!」
 愛原「あ、ああ、そうだな……」

 既に宿泊招待券が来ているだなんて、口が裂けても言えねぇ……。

 公一「かなり確信的な事を言うが、何か証拠でもあるのかね?」
 リサ「まず、前科がある!それから、リンが言ってたの!」
 公一「リン?ああ、上野利恵の娘か」
 学「何て?」
 リサ「『実家のお母さんが、「再婚するなら、愛原先生みたいな人がいいね」って言ってました』って!」
 学「何で俺は鬼の女にしかモテないんだ……」
 高橋「先生、ドンマイです!」
 公一「ふーむ……。確か上野利恵の夫は、次女を作る最中、あまりにも興奮してしまったことで理性が飛んだ利恵に食い殺されたんじゃそうじゃな?」
 リサ「そう!」

 食い殺してしまった夫の子種は見事、利恵の子宮内の卵子に当たり、次女の上野理子を産むことになる。
 長女と同様、人間の夫なので、娘達は『半鬼』ということである。
 但し、食人衝動こそ皆無に等しいものの、人間以上の身体能力は持つ為、リンは陸上部では大活躍である。

 リサ「いい年こいて、きっと先生とヤりたいんだよ!で、その後で食べるつもりなんだ!」
 高橋「オマエもそうするつもりなんじゃねーのか?」
 リサ「た、食べないよ~……」
 高橋「嘘つけ!オマエは、だいたい……」
 公一「上野利恵って、いくつくらいぢゃ?」
 学「確か、40くらいですね。俺と大して歳変わらないはずなんで」
 パール「ヤろうと思えばヤれる歳ですよ。私、女子刑務所に入ってたこともありますけど、そういうアラフォーのオバさんいましたから」
 愛原「やっぱ危険かな……」
 公一「栗原蓮華と、どっちが危険かね?」
 愛原「いや、比べちゃダメだと思いますけど……」
 高橋「鬼全般危険物に決まってんじゃないスか。コイツもそうですよ」
 リサ「ガァァッ!」
 高橋「ほら、これ」
 公一「ふーむ……。よし、ではこうしよう。ワシが行って来る」
 学「ええーっ!?」
 高橋「ま、マジっスか!?」
 パール「チャレンジャーですね」
 公一「なーに、現地調査ぢゃよ。学の伯父のワシが来たとあらば、向こうもそんな邪険な対応はせんじゃろう。手持ちのカードとしては、ワシをもてなせば、学に多少は口利きができるとでも言っておけばいい。もしも万が一、ワシの身に何かあった場合は……分かっておるな?と。こんなところでいいじゃろう」
 学「そう上手く行くかなぁ……?」
 公一「上手く行けば彼女らを扇動させることで、栗原蓮華討伐に駆り立たせる。栗原蓮華も、オマエ達どころじゃなくなるぢゃろうから、藤野は安全地帯となるわけぢゃ」
 学「そう、上手くいくかなぁ!?」

 何かムシの良すぎる伯父さんの計画に、私は却って事態を悪化させるのではと不安になった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「雨の金曜日」

2024-04-05 16:45:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月17日13時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 事務所のインターホンが鳴る。

 愛原「はい。愛原学探偵事務所です」
 配達員「こんにちはー!ドミノピザでーす!」
 愛原「あ、はい!今行きます!」
 リサ「おー!やっと来た!」

 私は財布を手に、玄関に向かった。
 代金を払って、ピザとサイドメニューを受け取る。

 配達員「ありがとうございましたー!」
 愛原「どうもお世話さま」

 再び階段を上がって、2階に戻る。

 愛原「はい、来たよー!」
 リサ「早速食べよ!」

 リサは冷蔵庫からお茶やジュースを出していた。

 愛原「慌てて食べるなよ」
 リサ「いただきまーす!」

 リサは人間形態ながら、牙を剥き出しにしてピザに齧り付いた。
 リサが鬼型BOWながら、何とか食人衝動が抑えられているのは、理性や知性が失われていないのも去ることながら、他のBOWと違って、普通の食事が取れるからである。
 栗原蓮華も言っていたが、普通は鬼化すると、味覚がかなり変わってしまい、人間の血肉しか美味にしか感じなくなるのだそうだ。
 肉食ながら、動物の肉で満足できるリサは、そういった意味ではまだ見込みがあるのかもしれない。
 この差は一体何なのだろうか?
 善場主任は、Gウィルスに何か秘密があるのではと思っているようだが……。
 この辺の解明の為にも、改めて藤野に行く必要があるらしい。

 愛原「明日は午後、最終確認の為の浜町に行くから」
 リサ「実質的に1日潰れるのかぁ……」
 愛原「まあ、そう言うなよ。遊びに行きたいのなら、明後日の日曜日にしなって」
 リサ「そうするけどさ……」
 愛原「エリア外からは出るなよ?BSAAがすっ飛んで来るぞ?」
 リサ「そのBSAAも一緒だから大丈夫だよ」
 愛原「ほお?」
 リサ「明後日はアキバとかに行くだけだから」
 愛原「それならエリア内だな」
 リサ「お兄ちゃん達に、何かお祝いはしなくていいの?」
 愛原「そうだなぁ……。夕食くらいは御馳走してもいいかと思ってる。御祝儀は渡そうと思っているんだが……」
 リサ「じゃあ、焼肉食べ放題でも……」
 愛原「何でー?そこはホテルのレストランとかだろ」
 リサ「高級過ぎて、食いでが無いよ」
 愛原「お前のお祝いじゃないって!」
 リサ「でもねぇ……。あ、そうだ。エレンにも、メイドさんが結婚したって教えてあげよ」
 愛原「ああ、それはいいんじゃないか?」
 リサ「先にこれ食べてからね」
 愛原「ああ、そうしろ」

 リサはフライドチキンに齧り付いたが、骨まで鋭い牙でバリボリ食べる有り様だった。
 ピザを食べていると、事務所の前にタクシーが止まった。
 今度は東京無線の普通のセダンだった。
 窓の外を見ると、雨足が強まっている。
 傘が無いと、外を歩くのは厳しいだろう。
 ガレージ経由で、エレベーターで2階に上がってきたのは高橋とパールだった。

 高橋「只今戻りました!」
 愛原「おう、お帰り。帰りもタクシーだったか」
 高橋「サーセン!雨が強かったもんで、傘持って行くの忘れちゃって……」
 愛原「ああ、そうか!」

 そういえば、傘を持って行くように言うのを忘れてたな。

 愛原「領収書はあるか?交通費だから、経費で落としとくよ」
 高橋「あっ、はい!いいんスか?」
 愛原「いいよ。これもお祝いだ」
 高橋「サーセン」
 愛原「いずれ近いうち、パーティーくらいはやりたいもんだな」
 高橋「そんな、先生……」
 愛原「いや、いいんだよ。そのうちどこか、レストランでも予約してだな……」
 リサ「焼肉食べ放題」
 愛原「だから、お前のお祝いじゃないって」
 リサ「むー!エレンのお父さんが日本にいたら、ガッツリやってくれるのに」
 愛原「それどころか、会場は旧・斉藤家になるだろうな。まあ、しょうがない」
 高橋「俺ら、養老乃瀧でもいいですよ?」
 愛原「北野武か!いいからいいから!お前とは、リサより長い付き合いなんだからな!」
 高橋「そ、それはそうですが……」
 リサ「えー?そんなに変わんないんじゃない?」
 高橋「いや、違うだろ!」
 パール「取りあえず、先生方の食事が終わったら、スーパーへ買い出しに行ってきますので」
 愛原「そうか?」
 パール「先週はポークカレーだったので、今日はビーフカレーです」
 愛原「今日は牛肉が安いのか」
 リサ「はい!わたしも行くー!」
 パール「ええ?」
 リサ「わたしも、先生にお料理作れるようになる!」

 時々リサは手伝っていたりすることはあったが。

 愛原「そりゃ助かるけど、肉、つまみ食いするなよ?」
 リサ「し、しないよ」
 愛原「お前の体のウィルスとか寄生虫、混入させるんじゃないぞ?」
 リサ「し、しないよ……」
 高橋「怪しいですなぁ、先生?」
 愛原「まあ、やる気があるなら、尊重するべきだとは思うが……」

 後になって、パールとリサは買い物に出かけて行った。

 高橋「ったく、どういう風の吹き回しなんだか……」
 愛原「お前達が結婚したから、急に焦り出したのかもしれんな……」
 高橋「えっ?そうですか?」
 愛原「見た目はJKでも、中身は俺より10歳は年上のアラフィフだで?」
 高橋「あー、もう生涯独身年齢っスね」
 愛原「それより、これからどうするんだ?」
 高橋「これから、と申しますと?」
 愛原「いや、パールと2人、どこかに住むのかなと思って……」
 高橋「サーセン。資金繰りがちょっと……」
 愛原「安月給で申し訳ないと思っているが、引き続きそこの部屋を夫婦寮として使わせてやるよ」
 高橋「あざーっス!」
 愛原「さすがに子供ができたら、住む場所は変えた方がいいと思うぞ?」
 高橋「多分できないと思うんで、その心配は無いと思います」
 愛原「んん?」
 高橋「あ、先生、空き箱片付けておきますね」
 愛原「ああ、スマンね」
 高橋「今日は来客がありましたっけ?」
 愛原「まだ不動産屋さんからだよ。事故物件の調査依頼だとよ。何か知らんが、そういう仕事の依頼が増えたな?」
 高橋「楽なもんじゃないっスか。殆ど怪奇現象は起きないわけですし」
 愛原「依頼を受ける度に、お前やパールの知り合いをバイトに紹介してもらうというのもなぁ……」
 高橋「どうせ真夜中、暇つぶしで廃墟に肝試しに行くような連中っスから、別にいいんスよ」

 実は事故物件の調査依頼については、最初は私や高橋で直接やっていたのだが、今ではバイトを雇って委託している。
 高橋やパールの知り合いを紹介してもらっているので、わざわざ募集する必要は無いし、2人のツテなので、バイト代も高めである必要は無い。

 愛原「そうかい?それはまあ、助かるよ」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする