[3月17日12時15分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]
私のスマホに、タクシー配車アプリからの通知音が鳴る。
呼んでいたタクシーが事務所に到着したらしい。
愛原「気をつけて行けよ?」
高橋「はい!」
私は一応、ガレージまで2人を見送ることにした。
エレベーターで1階に下りると、目の前がガレージである。
ガレージは車が2台止められるようになっていて、1台はリースしている業務用のライトバンがある。
もう1台は来客用に空けている。
といっても車で来る来客は皆無に等しく、せいぜい善場主任達くらいか、或いは宅配業者くらいであった。
今は予約したタクシーが止まっている。
都内ではもう珍しくない、黒塗りのトールワゴンタイプのタクシーだった。
愛原「アプリ決済になっているから、行きは金出さなくていいぞ」
高橋「ありがとうございます」
パール「それでは、行ってきます」
愛原「ああ、行って来い」
高橋とパールは、タクシーのリアシートに乗り込んだ。
運転手が運転席に乗り込むと、タクシーは事務所の前の路地を左折していった。
その後、三ツ目通りを左折して区役所を目指すのだろう。
タクシーの車体は雨で濡れていたから、タクシーが出て行った後のガレージの床が濡れていた。
もちろん、洗車もできるようになっているから、ちゃんと排水口があるので、冠水の心配は無い。
私が事務所に戻ろうと、エレベーターに乗り込もうとした時だった。
リサ「ただいまー!」
傘を差したリサがガレージに入って来た。
愛原「おー、リサ、お帰り。……また何か買ってきたのか?」
リサ「ただいま」
リサはガレージの中に入ると傘を閉じた。
彼女の手には、傘以外にも何か持っている。
リサ「エヘヘ……。ドトールコーヒーで、チーズケーキ買ってきちゃった」
愛原「それがオマエの昼飯か?」
リサ「まさか!おやつだよ!」
愛原「今日はビーフジャーキーじゃないんだな」
リサ「鬼の形したBOWでも、たまには甘い物が食べたくなるの」
チーズケーキって、そんな甘い物かな?
甘さは控えめだと思うが、まあいいだろう。
リサ「あ、もちろん、先生の分も買ってるからね。一応、お兄ちゃんとメイドさんも」
愛原「あ、そうなの。それは悪いね」
リサ「それより、お腹空いたよー」
愛原「早いとこピザ頼もう」
私達はエレベーターで2階に上がった。
愛原「何がいい?」
リサ「そりゃもう、ミート系!これしか無いね!」
愛原「だろうな」
リサ「あれ?お兄ちゃん達は?」
愛原「婚姻届がやっと届いたからな、今、区役所に出しに行ってる。昼飯も、外で食ってくる」
リサ「じゃあ、わたしと先生、2人っきりだね!」
愛原「あー、そうだな」
リサ「わたし達の婚姻届はいつ出す!?」
愛原「せめてお前が、学生を卒業してからだ。職業、学生のうちは無理だと思え」
リサ「ふーん……。わたしが『人間に戻ってから』という条件は良くなったんだ?」
愛原「えっ?……あ!」
リサ「まあいいや。現状、わたしが人間に戻るのは難しいんだもんね。しょうがないね」
愛原「いや、それはその……」
リサ「それより、早く頼んで。わたし、Lサイズのピザ、半分でいいよ。その代わり、サイドメニューはフライドチキンのセットでね」
愛原「……だろうな」
私は事務机のパソコンから、宅配ピザ店にネットで注文した。
Lサイズのハーフ&ハーフで、リサにはミート系、私はマルゲリータにした。
愛原「……で、フライドチキンのサイドメニューだな」
リサ「そうそう!」
愛原「……はい、注文OKっと。30分後に来る」
リサ「おー!……じゃあ、わたしは着替えて来る」
愛原「ああ」
リサは階段から上の階に上がって行った。
それから私がパソコンに向かっていると、メールが着信していたことに気が付いた。
それは善場主任からだった。
何か、重要なお知らせだろうか?
愛原「へえ……」
しばらくして、リサが私服に着替えて下りて来た。
体操服にブルマではなく、白いTシャツの上にピンク色のパーカーを羽織り、下は黒いミニスカートである。
愛原「リサ、善場主任からメールが来たぞ」
リサ「なーに?藤野行きは中止だって?」
愛原「なワケねーだろ」
リサ「ちっ」
愛原「善場主任、4月から出世だよ。『主任』から『係長』だってよ」
リサ「……そんなに偉いの?」
愛原「少なくとも役所では、主任より上だよ。だから出世だ」
善場主任の所属するNPO法人デイライトは、実質的には政府からの出先機関であるとされている。
今では善場主任も、自分がそういう身分の国家公務員であることを隠さなくなった。
事実、こうして挨拶状を送って来たのも証拠の1つだ。
さすがに、日本政府のどこの省庁からの出向なのかまでは教えてくれないが。
リサ「ふーん……」
まだリサはピンと来ないようだ。
まあ、学校では馴染みの無い役職だからだろう。
愛原「藤野の研究施設のことだが、そこの守衛さん達は知ってるだろ?」
リサ「気のいいオジさん達だよね。それがどうしたの?」
愛原「警備会社と契約して、そこから派遣される警備員ではなく、直接センターを運営する国の機関に雇われている守衛さん達だ。つまり、あの人達も公務員ということだな」
それも、警察官のような地方公務員ではなく、刑務官のような国家公務員である。
リサ「だろうね。で、それがどうしたの?」
愛原「その守衛さん達、『総務課警備係』という部署に所属してるわけだ。で、その守衛さん達のトップ、係長さんって言ったよね?」
リサ「ああ。警備室の奥の、偉い人の椅子にドカッと座ってる人」
愛原「ま、まあな。要は、その身分ってことだよ」
リサ「偉そうだねぇ!」
愛原「偉そうじゃなく、本当に偉いんだよ」
民間企業だと係長という役職名は大したこと無さそうに聞こえるが、お役所ではとんでもない。
ノンキャリアであれば、定年までそこまで到達できれば御の字という役職なのである。
それを20代後半の歳でなれるのだから、やはり善場主任はエリートなのだろう。
リサ「じゃあ、何かお祝いしたいねぇ?」
愛原「胡蝶蘭でも送るか?……なーんてな」
利益供与だと断られない物でも考えておこう。
私のスマホに、タクシー配車アプリからの通知音が鳴る。
呼んでいたタクシーが事務所に到着したらしい。
愛原「気をつけて行けよ?」
高橋「はい!」
私は一応、ガレージまで2人を見送ることにした。
エレベーターで1階に下りると、目の前がガレージである。
ガレージは車が2台止められるようになっていて、1台はリースしている業務用のライトバンがある。
もう1台は来客用に空けている。
といっても車で来る来客は皆無に等しく、せいぜい善場主任達くらいか、或いは宅配業者くらいであった。
今は予約したタクシーが止まっている。
都内ではもう珍しくない、黒塗りのトールワゴンタイプのタクシーだった。
愛原「アプリ決済になっているから、行きは金出さなくていいぞ」
高橋「ありがとうございます」
パール「それでは、行ってきます」
愛原「ああ、行って来い」
高橋とパールは、タクシーのリアシートに乗り込んだ。
運転手が運転席に乗り込むと、タクシーは事務所の前の路地を左折していった。
その後、三ツ目通りを左折して区役所を目指すのだろう。
タクシーの車体は雨で濡れていたから、タクシーが出て行った後のガレージの床が濡れていた。
もちろん、洗車もできるようになっているから、ちゃんと排水口があるので、冠水の心配は無い。
私が事務所に戻ろうと、エレベーターに乗り込もうとした時だった。
リサ「ただいまー!」
傘を差したリサがガレージに入って来た。
愛原「おー、リサ、お帰り。……また何か買ってきたのか?」
リサ「ただいま」
リサはガレージの中に入ると傘を閉じた。
彼女の手には、傘以外にも何か持っている。
リサ「エヘヘ……。ドトールコーヒーで、チーズケーキ買ってきちゃった」
愛原「それがオマエの昼飯か?」
リサ「まさか!おやつだよ!」
愛原「今日はビーフジャーキーじゃないんだな」
リサ「鬼の形したBOWでも、たまには甘い物が食べたくなるの」
チーズケーキって、そんな甘い物かな?
甘さは控えめだと思うが、まあいいだろう。
リサ「あ、もちろん、先生の分も買ってるからね。一応、お兄ちゃんとメイドさんも」
愛原「あ、そうなの。それは悪いね」
リサ「それより、お腹空いたよー」
愛原「早いとこピザ頼もう」
私達はエレベーターで2階に上がった。
愛原「何がいい?」
リサ「そりゃもう、ミート系!これしか無いね!」
愛原「だろうな」
リサ「あれ?お兄ちゃん達は?」
愛原「婚姻届がやっと届いたからな、今、区役所に出しに行ってる。昼飯も、外で食ってくる」
リサ「じゃあ、わたしと先生、2人っきりだね!」
愛原「あー、そうだな」
リサ「わたし達の婚姻届はいつ出す!?」
愛原「せめてお前が、学生を卒業してからだ。職業、学生のうちは無理だと思え」
リサ「ふーん……。わたしが『人間に戻ってから』という条件は良くなったんだ?」
愛原「えっ?……あ!」
リサ「まあいいや。現状、わたしが人間に戻るのは難しいんだもんね。しょうがないね」
愛原「いや、それはその……」
リサ「それより、早く頼んで。わたし、Lサイズのピザ、半分でいいよ。その代わり、サイドメニューはフライドチキンのセットでね」
愛原「……だろうな」
私は事務机のパソコンから、宅配ピザ店にネットで注文した。
Lサイズのハーフ&ハーフで、リサにはミート系、私はマルゲリータにした。
愛原「……で、フライドチキンのサイドメニューだな」
リサ「そうそう!」
愛原「……はい、注文OKっと。30分後に来る」
リサ「おー!……じゃあ、わたしは着替えて来る」
愛原「ああ」
リサは階段から上の階に上がって行った。
それから私がパソコンに向かっていると、メールが着信していたことに気が付いた。
それは善場主任からだった。
何か、重要なお知らせだろうか?
愛原「へえ……」
しばらくして、リサが私服に着替えて下りて来た。
体操服にブルマではなく、白いTシャツの上にピンク色のパーカーを羽織り、下は黒いミニスカートである。
愛原「リサ、善場主任からメールが来たぞ」
リサ「なーに?藤野行きは中止だって?」
愛原「なワケねーだろ」
リサ「ちっ」
愛原「善場主任、4月から出世だよ。『主任』から『係長』だってよ」
リサ「……そんなに偉いの?」
愛原「少なくとも役所では、主任より上だよ。だから出世だ」
善場主任の所属するNPO法人デイライトは、実質的には政府からの出先機関であるとされている。
今では善場主任も、自分がそういう身分の国家公務員であることを隠さなくなった。
事実、こうして挨拶状を送って来たのも証拠の1つだ。
さすがに、日本政府のどこの省庁からの出向なのかまでは教えてくれないが。
リサ「ふーん……」
まだリサはピンと来ないようだ。
まあ、学校では馴染みの無い役職だからだろう。
愛原「藤野の研究施設のことだが、そこの守衛さん達は知ってるだろ?」
リサ「気のいいオジさん達だよね。それがどうしたの?」
愛原「警備会社と契約して、そこから派遣される警備員ではなく、直接センターを運営する国の機関に雇われている守衛さん達だ。つまり、あの人達も公務員ということだな」
それも、警察官のような地方公務員ではなく、刑務官のような国家公務員である。
リサ「だろうね。で、それがどうしたの?」
愛原「その守衛さん達、『総務課警備係』という部署に所属してるわけだ。で、その守衛さん達のトップ、係長さんって言ったよね?」
リサ「ああ。警備室の奥の、偉い人の椅子にドカッと座ってる人」
愛原「ま、まあな。要は、その身分ってことだよ」
リサ「偉そうだねぇ!」
愛原「偉そうじゃなく、本当に偉いんだよ」
民間企業だと係長という役職名は大したこと無さそうに聞こえるが、お役所ではとんでもない。
ノンキャリアであれば、定年までそこまで到達できれば御の字という役職なのである。
それを20代後半の歳でなれるのだから、やはり善場主任はエリートなのだろう。
リサ「じゃあ、何かお祝いしたいねぇ?」
愛原「胡蝶蘭でも送るか?……なーんてな」
利益供与だと断られない物でも考えておこう。