報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「出発当日」

2024-04-11 20:22:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月21日09時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 私がダイニングで朝食を取っていると、リサが4階から降りて来た。

 

 リサ「ふわあ……」

 体操服に紺色のブルマ姿である。
 大きな欠伸をすると、牙が口の中から覗いた。
 角も2本生えており、今は鬼形態となっている。

 愛原「おはよう、リサ。今日出発だぞ?調子はどうだ?」
 リサ「いや、もうサイアク!」
 愛原「えっ?」
 リサ「夢の中にリエが出て来たの!」
 愛原「リエって、上野利恵?」
 リサ「何か、鬼ヶ島みたいな所にいて、先生が攫われてるの!」
 愛原「鬼ヶ島なら桃太郎だな。……桃鉄やり過ぎて、夢でも見たか?」
 リサ「桃鉄に鬼ヶ島は出てこないから!」
 愛原「それもそうだ」

 もっとも、NPCとして赤鬼や馬鬼を出している。
 以前は夜叉姫や阿修羅、閻魔大王を出してみたが、ボロクソに負けてしまった。
 ゲームのキャラクターたる夜叉姫に何故かライバル心を燃やし、『あの鬼女、ブッ殺してやる!!』と、リサが興奮したのは良い思い出。
 鬼同士の戦いなんて不毛だと、上野利恵の受け売りを話して、何とか宥めさせた。

 リサ「先生も鬼ヶ島の女達にデレデレしやがってさ!」
 愛原「夢の中の俺、何やってんだ!」
 リサ「リンとリコも後で半殺しにておく!」
 愛原「夢の中の話なんだから、やめなさい!」
 リサ「リンのヤツ、『リサ先輩より胸大きいですよォ?』とか、『今は体操服ブルマじゃなくて、陸上ユニフォームの時代です。こっちの方が露出高いでしょお?』とか言って、先生を誘惑しやがった!」
 愛原「上野凛は女子陸上部だったな……」
 リサ「何故かこの前の練習試合は、スパッツで出場してた!」
 愛原「あー、それはイカンな。今度はブルマで出場するように言っておきなさい」
 リサ「了解でヤンス!」
 パール「話は終わった?はい、朝食」
 リサ「いただきまーす!」

 今朝は火曜日ながら祝日であるので、御飯食ではなく、パン食である。
 トーストに卵2個分のスクランブルエッグ、カリカリに焼いたベーコンにウィンナーが出て来た。
 あとは生野菜サラダと、オニオンスープ。

 愛原「15時20分発の電車に乗るから、それまでは家でゆっくりしてていい」
 リサ「分かった。レイチェルとは連絡取っていいの?」
 愛原「いいよ」
 高橋「車さえブッ壊れなければ、八王子まで中央道で軽く行けたんスけどね」
 愛原「しょうがないよ」

 本当は修了式が終わったら、八王子入りするのがベストなのだが、春分の日を挟んでしまっている。
 官公庁関係は休みの為、明日にズレ込んだというわけだ。
 頼めば藤野の宿泊施設に泊まらせてもらうことはできるのかもしれないが、何にも無い合宿所のような場所に率先して泊まりたいか?というと、答えはNoである。
 まだ、ビジホの方が良い。

 リサ「食べ放題、食べ放題……」
 愛原「何が?」
 リサ「ホテルの朝食、バイキングで食べ放題でしょ?」
 愛原「ま、まあな……」

 そういうホテルにしておいて良かった。
 ビジホによっては朝食が無かったり、あっても定食形式だったり、パンや卵だけだったりと、リサの望むカフェテリア方式でない場合が多い。

 愛原「宿泊料金に入ってるからって、食べ過ぎるなよ?」
 リサ「分かってるよ」

[同日13時00分 天候:雨 同地区 愛原家2階・事務所→3階ダイニング]

 私は善場主任と電話していた。

 善場「ホテルの場所ですが、八王子市内の歓楽街にありますね。夜間は治安に問題があるかもしれませんので、ご注意ください」
 愛原「分かっております。ホテルチェックイン後、夕食で外出はしますが、その後は出発までホテルの中にいるように致します」
 善場「そうしてください。セキュリティは比較的良さそうではありますね」
 愛原「そうです」

 ホテルのカードキーが無いと、エレベーターを起動できないタイプのホテルを予約した。

 善場「所定の電車に乗車しましたら、定時連絡をください。メールで構いませんので」
 愛原「了解しました」

 私が電話を切ると、内線電話のブザーが鳴った。

 愛原「はいはい」

 電話を取ると、高橋からだった。

 高橋「先生、昼飯の時間っス!」
 愛原「ああ、分かった。今行く」

 電話を切って、3階に移動する。
 移動には階段を使ったが、階段の窓から外を見ると、サーッと雨が降ってきたようだ。
 天気予報では曇だったのだが、変わったのだろうか。

 高橋「あっ、先生。どうぞ、飯です」
 愛原「ありがとう」

 昼食はラーメンだった。
 どうやら高橋が袋麺から作ってくれたらしい。
 袋麺のままだと具が無いので、具は別に入れてくれたようだ。

 愛原「取りあえず、ここで食べる飯はこれまでだな」
 リサ「確かに、ラーメンは向こうじゃ食べれないかもねぇ……」
 高橋「そうだろうと思って、オマエだけはチャーシュー麺にしておいたぜ?」
 リサ「おー、ありがとう」
 愛原「そういえば、八王子もラーメンが有名だったな」
 高橋「だいぶ前、食いましたね」
 愛原「うん」

 リサを送った後、帰りに食べてもいいな。

[同日15時20分 天候:曇 同地区 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1473K電車・最後尾車内]

 

 リサ「雨、止んだね」

 空はまだ若干曇っているものの、既に雨が上がっていた。
 今日は湿気があって暖かい。
 もうすぐ桜、咲くだろうか?
 少なくとも、花粉はそんなに飛んでいないようだ。
 リサは人間形態に化けた。
 人間形態だと、髪の色は黒くなる。
 クリーム色のパーカーに、デニムのハーフパンツを穿いている。

 愛原「ああ。このまま、八王子まで持ってくれればいいが……」

 菊川駅の階段を下りる。
 リサはヨドバシAkibaで買った大きなキャリーバッグを持っていたが、人間形態ながら、それをヒョイと持ち上げて階段を下りた。

 愛原「今日は新宿駅まで乗って行くから」
 リサ「間違えて、岩本町で降りないようにしないとね」
 愛原「全くだ」

 改札口を交通系ICカードで通過し、ホームに降りる。
 そして、BSAAとの取り決め通り、ホームの後ろに向かった。
 運行情報によれば、今日の都営新宿線や京王線は遅れは出ていないという。

〔まもなく1番線に、京王線直通、各駅停車、橋本行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 トンネルの向こうから強風と轟音を立てて入線してきたのは、京王線の電車だった。
 相変わらず、なかなか新型車には当たらない。
 まあ、新宿からはその新型車に乗るのだが。

〔1番線の電車は、京王線直通、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕

 各駅停車なのは京王新線の笹塚まで。
 笹塚先の京王線内は快速となるそうだが、そのような案内は京王線に入ってからするのだろう。
 いずれにせよ、地下鉄線内は各駅停車。
 ちょうどドア横の座席が空いたので、そこに腰かける。
 キャリーバッグはドア横のスペースに置いた。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 車両のドアとホームドアが閉まり、上り電車は予定の時刻通りに発車した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 私はスマホを取り出すと、予め入力しておいた定型文を善場主任にメールした。
 『お疲れ様です。愛原です。予定通り、菊川駅を出ました』というもの。
 送信が完了すれば、あとは主任の返信を待つ必要は無い。

 リサ「レイチェル、もう新宿駅に着いたって」
 愛原「早いな!?」
 リサ「あくまでも電車が新宿駅に着いただけだから、待ち合わせ場所に行くのはこれからみたいだよ。新宿駅は迷宮だから、迷子になる時間も加味してるんだって」
 愛原「さすがは軍人の卵」

 そうならないよう、あまり人の多くない場所を選んで待ち合わせ場所としたのだが、大丈夫だろうか?

 リサ「いざとなったら、わたしのGPSを辿るってさ」
 愛原「ああ、そういうことか!」
コメント
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