報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「藤野行き」

2024-04-18 20:32:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月22日08時13分 天候:曇 東京都八王子市旭町 JR八王子駅→中央線1457M列車・先頭車内]

〔おはようございます。今度の4番線の列車は、8時13分発、普通、大月行きです。この列車は3つドア、6両です〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 朝食後、ホテルをチェックアウトした私とリサ、そしてレイチェルはJR八王子駅に向かった。
 駅は朝のラッシュである為、多くの利用者でごった返している。
 それでも春休みに入ったからか、制服姿の学生達の姿はかなり少ない。
 上りの東京方面のホームには大勢の利用者が電車を待っていたが、下りホームはガラガラだった。
 逆に土休日の方が、行楽客で賑わっていたかもしれない。

〔まもなく4番線に、普通、大月行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は3つドア、6両です。次は、西八王子に、停車します〕

 

 やってきたのは、211系と呼ばれる中距離電車。
 旧国鉄時代に製造されたタイプもあれば、民営化後に製造されたタイプもある。

〔はちおうじ~、八王子~。ご乗車、ありがとうございます。次は、西八王子に、停車します〕

 

 旧国鉄時代に製造されたタイプだとボックスシート車だが、やってきた電車はロングシートタイプだった。
 平日ダイヤだからそうしているのか不明だが、それでも上り電車よりガラガラなのは事実だ。
 空いている緑色の座席に腰かけた。
 私とリサは座ったが、レイチェルは立っている。
 ここから先は、更に警戒区域なのだろう。
 ホテルから駅に向かうまでの間、地元警察のパトカーが走っていてパトロールしている感じだった。
 上野利恵一派と栗原蓮華一派では、前者の方が有利である。
 上野利恵自身はリサと同様、昼間でも活動できるし、そんな彼女に『半鬼』にされた手下達も昼間に活動できる。
 それで普段は、ホテルの従業員として働いているらしい。
 ところが蓮華一派は、蓮華自身が夜しか活動できない為に、その手下達も同様だ。
 だからそこまで心配することはないのかもしれないが、しかし油断はできない。
 外はどんより曇っているし、高尾駅から先はトンネルが断続的に続く区間でもある。

 リサ「駅弁食べて、『うむ、美味い!』って……」
 愛原「ロングシートしか無い電車でやっても、意味が無いねー」

 ホームから発車メロディが流れて来る。
 朝なのに、『夕焼け小焼け』だ。
 これは八王子市出身の作詞家、中村雨江に因んでのことらしい。
 アレンジ違いではあるが、全ホームでこれが流れる。
 尚、八高線ホームにあっては、全列車ワンマン運転となった為、流れなくなった。
 基本的に発車メロディは、車掌が鳴らす為。

〔4番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 何のドアチャイムも無く、しかもプシューとエアーの音を響かせてドアが閉まる。
 アナログではあるが、どこか味がある。
 そして、カクンとこれまたアナログな揺れ方をして、電車が動き出した。
 インバータ制御ではないからだろう。
 ビィィィンとアナログなモーターの音が響いてくる。

〔「ご乗車ありがとうございます。中央線、普通列車の大月行きです。次は西八王子、西八王子です」〕

 そして自動放送は無く、車掌が肉声放送を流す。
 レイチェルはリサの横に立って、辺りを警戒している。
 ジャンパーのポケットに片手を入れているが、そこに銃でも持っているのだろう。

 レイチェル「……Right.」

 片耳にはインカムを着けている。
 前方を照らせるライト付きである。
 それで、BSAA本隊と連絡を取っているようだ。
 私も予定通りの電車に乗ったことを、善場主任に報告した。
 レイチェルは車内よりも、外を気にしていた。
 恐らく、電車に一般乗客として乗っているというよりは、外から侵入してくる恐れがあると本隊に言われたのだろう。
 高尾から先はトンネルが断続的に続く為か、既に運転室と客室の間の窓にはブラインドが下ろされており、進行方向右側の窓越しにしか前方を見ることはできない。

[同日8時38分 天候:曇 神奈川県相模原市緑区 JR中央本線1457M列車・先頭車内→JR藤野駅]

 高尾駅で乗務員交替。
 私はレイチェルに、JR高尾駅には第2次大戦中、米軍からの機銃掃射を受けた痕跡が未だに残っていることを話した。
 レイチェルは首を傾げたが、それから開いた口からは、『マスタングですか?』であった。
 米軍人からの視点であったそうだ。
 マスタングとは、当時米軍が保有していた戦闘機のことである。
 実際機銃掃射は、それで行われた。
 また、トンネルが断続的に続く区間には湯ノ花トンネルがあり、高尾駅から発車した避難列車を追尾した米軍機がそこで列車を追い詰め、集中砲火を浴びせた出来事があったことも説明した。
 そのことに関してもレイチェルも、『作戦上仕方が無いことだし、そもそも自分は戦闘機の事は分からないから』と言っていた。

 リサ「レイチェルは飛行機、操縦できないの?」
 レイチェル「まだです。日本では操縦訓練はできないので、アメリカに帰国後、養成学校に戻ったら、そこでまずはヘリコプターの操縦訓練を受けることになると思います」
 愛原「アパッチか……」
 レイチェル「そうです!」

〔「まもなく藤野、藤野です。お出口は、右側です」〕

 そして電車は、何事もなく藤野駅に到着した。
 本来は半自動ドア区間だが、コロナ対策の為、自動扱いとなっている。

 

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野原に、停車します〕

 愛原「何とか無事に着いたな」
 リサ「でも、まだ油断しちゃダメなんでしょ?」
 愛原「まあな」
 レイチェル「ここから先は、何で行くのですか?」
 愛原「タクシーだね。駅前に止まってるから」
 レイチェル「そうですか」

 こちらもやや曇ってはいたが、少し空は明るかった。
 これから晴れて行くのだろう。
 私達は駅の外に向かった。

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