報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの入学前準備」 3

2018-10-18 19:29:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月13日13:57.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 岩本町駅]

 私と高橋、そしてリサ・トレヴァーを乗せた地下鉄は岩本町駅の副線ホームに入った。

〔2番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。京王線内、区間急行となります。いわもとちょう、岩本町〕
〔「岩本町です。当駅で急行電車の通過待ちを致します」〕

 電車を降りた私達はエスカレーターへと向かった。

 愛原:「で、ここから秋葉原駅までか。150メートルは離れてるぞ?」
 高橋:「ええ。ちょっとしたゾンビ無双ですね」
 愛原:「嫌だ、こんな巨大都市の真ん中でゾンビ無双……」

 ああ、分かっている。
 “バイオハザード6”では香港(をモデルにした架空の大都市)のステージがあったな。

 リサ:「電車通学もいいなぁ……」
 愛原:「そうかな?」

 リサはすれ違う女子高生だか女子中学生だかを見て呟いた。

 愛原:「中学校は徒歩圏内みたいだから、高校生になったらさすがに電車通学になるんじゃない?」
 リサ:「そっかぁ……」

 それにしても深い駅だ。
 ゲームの“バイオハザード”の地下鉄ステージは、銀座線や丸ノ内線並みに地下浅い駅だったのにな。
 ようやく地上に出た時、そこは昭和通り(国道4号線)の歩道だった。

 高橋:「こっちです」
 愛原:「アキバだから、さっきのジャンク屋以上のマニアックな店とかに連れて行くんじゃないだろうな?」
 高橋:「先生がそちらをお望みでしたら、ご案内しますよ?」
 愛原:「いや、いいよ!今度こそリサがキレるから!」
 高橋:「そうですか?」
 愛原:「ちゃんとした物を売ってる店に連れて行けよ?」
 高橋:「分かりました。お任せください」

[同日14:15.天候:晴 東京都千代田区神田花岡町 ヨドバシAkiba]

〔まあるい緑の山手線♪真ん中通るは中央線♪……〕

 愛原:「ヨドバシかよ!?」
 高橋:「ここの2階とか、結構揃ってるんですよ。3階にもあるみたいですよ。万年筆」
 愛原:「中学生で万年筆とか使うか!ってかこの展開、恣意的たぞ!?」

 私は後ろでペコペコ頭を下げている作者をチラッと見たような気がしたが、気にしないことにした。

 雲羽:「この通り、ちゃんと宣伝致しますから、どうか撮影の許可を……」

 私は気にせず、エスカレーターで2階に上がった。
 そこの文房具コーナーで見つけたものは……。

 リサ:「おおっ!?」

 煌びやかな小中学生向けの文房具の数々だった。

 愛原:「何これ……?目がチカチカする」
 高橋:「これならリサも満足でしょう」
 愛原:「う、うん。まあ、そうだな……」
 リサ:「愛原さん、私は何を買っていいの!?」

 リサは少し興奮気味となった。

 愛原:「筆記具から選ぶか。小学生は鉛筆だけど、中学生からはシャープペンとかボールペンでもいいんだっけか?」
 リサ:「これ!これがいい!」
 愛原:「いいと思うけど、少し子供っぽくないか?それとも、これが今時の女子中学生のチョイスするセンスなのか?」

 私には子供がいないから、よく分からんなぁ。

 愛原:「高橋、どう思う?……高橋?……高橋!?」

 いつの間にか高橋の姿が見えなくなった。

 愛原:「何だ、ここにいたのか……」

 高橋は何やら一生懸命、試し書きをしていた。

 愛原:「何をやってるんだ?」
 高橋:「先生っ、どうですか!?」

 高橋もまた鼻息を荒くして、私に試し書きしたメモ書きを見せた。

 『愛原先生 命!愛原先生 命!愛原先生 命!愛原先生 命!愛原先生 命!愛原先生 命!【以下、無限ループ】』

 怖っ!?

 愛原:「お、オマ……ちょ……なに書いて……!?」

 高橋がイケメンながら、彼女がいない理由って……。
 私が凍り付いていると、リサがやってきた。

 リサ:「愛原さん、これはどうやって使うの?」

 リサが持って来たのはホッチキス。
 おおっ、ちょうどいい物を持ってきてくれた!

 愛原:「こうやって、紙を綴じるんだ」

 私は高橋のメモ書きを隠すように、紙を綴じた。

 リサ:「おー!」
 高橋:「な、何という……拷問器具ですね……」

 高橋は半泣きで言った。

 愛原:「何でそうなる?」
 高橋:「少年刑務所にいた頃、敵対メンバーのヤツをそれで拷問していたってヤツがいました」
 愛原:「真顔で言うな!」
 高橋:「そいつ、『2度と俺にガン付けられねぇように』ってんで、上の瞼と下の瞼をホッチキスで留め……」
 愛原:「いや、もういい!」

 ※作者が、刑務官やってる同級生から聞いた話です。

 リサ:「これと、これと……」
 愛原:「あと、これもだな。あとは……」

 私達はリストを見ながら、入学に必要なものを集めた。

 リサ:「愛原さん、あれ見て。ユニコーン」
 高橋:「ほお」

 ユニコーンを可愛くあしらった筆箱とかが特売されていた。
 そこには、リサよりも年下の女の子達が集まっている。
 なるほど。
 小学生をターゲットにしているわけか。
 それにしても……。

 高橋:「あれならユニコーンも本望でしょうね」
 愛原:「そ、そうかな……」

 どういう意味か知りたいような、知りたくないような……。
 少年院とか少年刑務所とか行ってたくせに、高橋はちゃんと高校は出てるんだよな。
 その為か、それなりに博識だ。

 愛原:「あとは防犯ブザーだって」
 高橋:「先生、こいつは逆に不審者を八つ裂きにする奴ですよ?必要無いでしょう」
 愛原:「俺もそう思うんだが、まあ用意しろって言われてるんだから、そうしよう」
 高橋:「俺にとっての防犯ブザーは、サムライエッジです」
 愛原:「でもそれ、某ゲームの中でしか手に入らないじゃない?」

 要は某ゲームに出て来るマグナムのこと。
 ていうかマグナムって、大型の拳銃ということもあってか、両手で構えて撃つタイプじゃなかったか?
 2丁撃ちの高橋が使える代物ではないと思うが……。

 愛原:「よしっと、こんな所か。文房具関係は集まったから、あとは通学鞄とかだな」
 高橋:「制服とかはどうするんですか?この近くに、作ってる店とかはありますけど?」
 愛原:「それ、JCコスプレ用だろ!?違うって!」
 高橋:「あ、違いますか」
 愛原:「制服とかは高野君に任せるさ。一旦帰るとしよう」

 私達は会計を済ませ、再び店の外へと出た。
 もちろん、領収証を切ることは忘れない。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの入学前準備」 2

2018-10-18 10:33:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月13日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は午後から半休にして、リサの入学前の準備を行うことにした。

 愛原:「東京中央学園墨田中学校とは……」
 高橋:「地味に私立な学校狙いやがりましたね、あのネーチャン」

 名前の通り同じ墨田区であり、確かに徒歩通学可能な場所にある。
 多分、リサが毎朝見下ろしていた中学生の中には、そこに通うコも含まれていたのではないか。

 愛原:「まず先に揃えやすい物から揃えることにしよう」
 高橋:「何から行きますか?」
 愛原:「そうだな……」

 私はエージェントの善場氏からもらったリストを見た。

 愛原:「取りあえず、文房具から揃えるか」
 高橋:「ウっス!」
 愛原:「一応、リサも連れて行こう」
 高橋:「大丈夫ですか?」
 愛原:「俺達のセンスで、リサが納得すると思うか?」
 高橋:「……多分キレると思います」
 愛原:「だろ?こんなことで東京を第2の霧生市にはしたくないだろ?」
 高橋:「あー、今手元に銃が無いので、今すぐ起こられるとマジヤバっすね」

 手元に銃があれば、いつでもバイオハザードOKなのかよ。
 まあ、それはそれとして……。

 愛原:「そうと決まったら、リサを呼びに行くぞ」
 高橋:「はい」

 それから30分後、リサを連れて私達は再び都道50号線(新大橋通り)に出た。

 リサ:「愛原さん!早く早く!」

 リサははやる気持ちを抑えきれないでいる。
 嬉しい時くらいでは、テンションが上がっても腕がクリーチャー化することはなくなった。
 今でも、誰もいない所で自分の力を制御する練習はしているみたいだが……。

 高橋:「おい、リサ。あんまり先生を困らせるんじゃねぇぞ」

 高橋がすかさず窘めてくれる。
 それにしても、だ。
 私は善場氏に渡されたリストを見た。

 愛原:「入学に必要なものってこんなにあるんだなぁ。これだけで一ステージ分はあるぞ」
 高橋:「最後、脱出するのにクランクまで用意しろってことですかね?」
 愛原:「クランクはリストに載ってないな。まあ、それくらいの勢いでアイテムかき集めさせれるってことだよ。とにかく、先に文房具から揃えよう」
 リサ:「はーい!」(^O^)/
 高橋:「予定通りですね。うス!」

 で、私が向かった先は……。

 老婆:「いらっしゃーい」

 昭和時代にタイムスリップしたかのような、老婆の店長が切り盛りする文房具屋だった。

 愛原:「んー、これこれ。いや〜、文房具屋なんて今も昔も変わらないものだなぁ」

 私が懐かしがっていると……。

 リサ:「ずーん……」
 愛原:「な、なにその反応!?」

 リサの顔は暗く、心なしか少し肩が盛り上がっているように見えた。
 目も赤くなっている。

 リサ:「かわいくない……」
 愛原:「ええっ!?」
 高橋:「いや、先生。申し訳無いですけど、これはさすがにちょっとセンスヤバイかと……」
 愛原:「えっ、そう?」
 高橋:「はい。ここは1つ、俺に任せてください」
 愛原:「わ、分かった」

 私達は文房具屋をあとにした。
 今度は高橋に連れられて、裏路地に向かう。
 そして、何でここにあるのかイミフなジャンクショップに辿り着いた。

 愛原:「なにここ?」
 高橋:「知り合いがやってるジャンク屋なんですけどね、色々置いてあるんですよ。要はこれで、さっきの地味〜なペンとかをカッコよくカスタムするんです。おっ、これ見てください。このドクロなんか、カッターの頭に取り付ければ、いかにもバイオっぽくなりません?」
 愛原:「いや、ならないだろ!」(# ゚Д゚)
 リサ:「ずーん……」

 リサの両手の爪が長く鋭く伸びた。
 目が赤みも更に強くなっている。

 愛原:「ほら、怒ってるぞ!どうするんだ!?」
 高橋:「えっ?えっと……ですね……。オマエも黙ってないで、希望があればちゃんと言え!」
 リサ:「もっと可愛いのがいい……。キュートなの……」
 愛原:「……と、仰ってますが?」
 高橋:「あっ、えーと……。わ、分かりました!多分、あれのことだと思います!」
 愛原:「ほお、いい場所があるのか?」
 高橋:「ええ。ちょっと移動しましょう」

[同日13:50.天候:晴 都営地下鉄新宿線菊川駅]

〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください。この電車は京王線内、区間急行となります〕

 愛原:「電車で移動するのか?」
 高橋:「まあ、やっぱり都心に行った方が揃ってますからね」
 愛原:「いや、そりゃそうだが……」

 トンネルの向こうから電車がヘッドライトの光を放ってやってきた。
 リサのショートボブの髪と、スカートの裾が風で揺れる。

〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。京王線内、区間急行となります。きくかわ〜、菊川〜〕

 やってきたのは京王線からやってきた電車。
 京王線と相互乗り入れしているせいか、乗り入れ先の電車が来ることも多い。
 空いているローズピンクのシートに腰掛ける。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 ピンポーンピンポーンと2点チャイムを鳴らしてドアが閉まる。
 地下鉄に乗っていると、やっぱり霧生市のバイオハザードを思い出すな。
 あれは地下トンネルではなく、山岳トンネルではあったのだが……。
 電車が走り出す。

〔「この電車は京王線直通、各駅停車の大沢……失礼しました。橋本行きです。京王線内は区間急行となります。次は森下、森下です。都営大江戸線は、お乗り換えです」〕

 東京の地下鉄では珍しく、車掌の肉声放送が流れる。

 愛原:「一体、どこまで行くんだい?」
 高橋:「岩本町です。岩本町」
 愛原:「それって……?」
 高橋:「アキバは何でも揃ってますからね」

 ああ、やっぱり。
 ま、そんなことだろうとは思った。
 リサも落ち着いているようだし、取りあえずは順調といったところか。
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