[8月30日17:41.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]
〔まもなく大宮、大宮です。お出口は、左側です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、京浜東北線、東武野田線とニューシャトルはお乗り換えです。大宮の次は、蓮田に止まります〕
残暑厳しい西日を浴びて、電車は稲生達の下車駅に接近する。
さすがに少し疲れたのが、2人は寝入っていた。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく大宮、大宮です。11番線に到着致します。お出口は、左側です。この電車は宇都宮線、快速、宇都宮行きです。大宮まで各駅に停車して参りましたが、大宮から先は快速運転を行います。停車駅は……」〕
ホームのある駅のみに停車をしたというだけで、ホームの無い駅はバンバン飛ばして行ったのだが。
稲生:「ん……?あっ、マリアさん、もうすぐ着きますよ」
マリア:「Ah...」
稲生がふとマリアの足を見ると、短いスカートの先から伸びた白い足が目に付いた。
マリア:「もう着くのか。寝たら早いな……」
稲生:「そ、そうですね」
大宮駅11番線は、かつて埼京線開通前の川越線が発着していたホームである。
今は11番線しか無いが、実は隣には閉鎖された12番線もあって、それが川越線ホームだった。
驚いたことに、埼京線が開通して相互乗り入れを行う前は非電化路線だったという。
貨物線を走る湘南新宿ライン下り電車が、ダイヤ上無理無く発着できるのが旧・川越線ホームということで、川越線がいなくなったこのホームを使うことになった次第(赤羽方面から大宮駅に来る湘南新宿ラインは、8番線・9番線と繋がっていない。本線と繋がる為には、わざわざ川口駅付近のポイントを使わないとダメらしい。10番線はそもそもホームが無い為、欠番になっている)。
席を立ったマリア。
何気に少しスカートが捲れていたのに気づいたか、しれっと裾を直して立ち上がる。
これが稲生以外の男であったらそんなことせず、この電車が大宮駅で運転打ち切りになる程の惨事を起こしただろう。
〔「ご乗車ありがとうございました。大宮、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。宇都宮線、快速、宇都宮行きです。蓮田、久喜、古河、小山、自治医大、石橋、雀宮、終点宇都宮の順に止まります。停車駅にご注意ください」〕
ここで降りる乗客は多い。
しかし、乗車客も多い。
夕方ラッシュに10両編成は短いと思うが、車両が足りないのか。
時折、付属の5両編成を奪い合うようなダイヤが組まれているようにしか見えないところがある。
稲生:「さすがに疲れましたね」
マリア:「ビジネスクラス……グリーン車じゃなかったら、もっと疲れただろうね」
稲生:「確かに……」
湘南新宿ラインは新しい運転系統である為、他の路線と比較検討はなかなかできないが、旧国鉄時代製造の115系や211系と比べると座席が硬めであり、やはり普通車で1時間40分はキツいかもしれない(乗車時間が長めとなる常磐線のE531系は、座席が柔らかめである)。
〔11番線の宇都宮線、ドアが閉まります。ご注意ください〕
11番線は宇都宮線と高崎線が共同使用する上、車両も共通運用なので誤乗されやすく、その防止の為に発車放送に路線名が付く。
稲生:「パレスホテルはこの近くなので、間に合いそうですね」
マリア:「そうだな」
夕方ラッシュで混雑するコンコースを通り抜け、更には多くの市民でごった返す西口ペデストリアンデッキに出た。
マリア:「夕日が眩しい」
稲生:「体育会系なら、『夕日に向かってダッシュだ!』とか言うんでしょうけどね」
マリア:「何それ?」
稲生:「いや、何か昔のマンガでそういうのがあったんですけど……。ネットで見ました」
マリア:「ジャパニーズ・ジョークか?」
稲生:「多分……」
[同日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 パレスホテル大宮]
(稲生家の面々が集まる為、ここからは名前表記にする)
イリーナ:「やあやあ、よく来てくれたねぇ」
ホテルのロビーに到着すると、イリーナが目を細めて出迎えた。
勇太:「先生、お待たせしました」
マリア:「? 勇太の御両親は?」
イリーナ:「もうすぐ着くと思うよ」
勇太とマリアの到着から間髪置かず、正面エントランスにハイヤーが到着した。
父親の宗一郎が通勤に使っているハイヤーだ。
恐らく帰り際、母親の佳子をピックアップして来たのだろう。
宗一郎:「どうも、先生。お待たせ致しました」
佳子:「今日はありがとうございます」
イリーナ:「いいえ。さあ、どうぞこちらへ」
マリア:「師匠!?」
勇太:「え、先生?まさか……」
イリーナ:「今回はアタシが奢るよ」
勇太:「ええーっ!?」
宗一郎:「本来なら私達がおもてなしをしなければならないのに恐縮です」
イリーナ:「いいえ。もう既に皆さんからは、十分におもてなしを受けましたから。これは私からのお返しです」
マリア:「勇太、きっとこれは師匠が魔法の実験に失敗して、大地震を起こすということだぞ」
勇太:「マジですか!?」
イリーナ:「……なワケないでしょ。もっとも、マルファが東アジア魔道団への攻撃と称してインドネシアに……ゲフンゲフン」
勇太:「インドネシアに何をする気ですか?」
ホテル1階のフランス料理レストランに連れて行かれる稲生達。
マリア:「凄いキレイ」
勇太:「ここなら大師匠様も御招待できそうですね」
イリーナ:「そこまで気を使わなくてもいいのよ」
勇太:「ですが……」
イリーナ:「マルファにお説教しに行った後、立ち寄ったタイのバンコクの屋台でディナーしてたらしいから」
勇太:「庶民派!?」
マリア:(やはり大師匠様はアジア系の御方なのだろうか……)
イリーナ:「今回はあくまで、宿代代わりよ」
レストランに入り、応対してきたウェイターに案内されてテーブルに着く。
稲生:「ドレスコードとか無いんですかね?」
イリーナ:「それは大丈夫。さ、飲み物を頼みましょう」
ビールを注文した稲生以外は全員ワインだった。
〔まもなく大宮、大宮です。お出口は、左側です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、京浜東北線、東武野田線とニューシャトルはお乗り換えです。大宮の次は、蓮田に止まります〕
残暑厳しい西日を浴びて、電車は稲生達の下車駅に接近する。
さすがに少し疲れたのが、2人は寝入っていた。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく大宮、大宮です。11番線に到着致します。お出口は、左側です。この電車は宇都宮線、快速、宇都宮行きです。大宮まで各駅に停車して参りましたが、大宮から先は快速運転を行います。停車駅は……」〕
ホームのある駅のみに停車をしたというだけで、ホームの無い駅はバンバン飛ばして行ったのだが。
稲生:「ん……?あっ、マリアさん、もうすぐ着きますよ」
マリア:「Ah...」
稲生がふとマリアの足を見ると、短いスカートの先から伸びた白い足が目に付いた。
マリア:「もう着くのか。寝たら早いな……」
稲生:「そ、そうですね」
大宮駅11番線は、かつて埼京線開通前の川越線が発着していたホームである。
今は11番線しか無いが、実は隣には閉鎖された12番線もあって、それが川越線ホームだった。
驚いたことに、埼京線が開通して相互乗り入れを行う前は非電化路線だったという。
貨物線を走る湘南新宿ライン下り電車が、ダイヤ上無理無く発着できるのが旧・川越線ホームということで、川越線がいなくなったこのホームを使うことになった次第(赤羽方面から大宮駅に来る湘南新宿ラインは、8番線・9番線と繋がっていない。本線と繋がる為には、わざわざ川口駅付近のポイントを使わないとダメらしい。10番線はそもそもホームが無い為、欠番になっている)。
席を立ったマリア。
何気に少しスカートが捲れていたのに気づいたか、しれっと裾を直して立ち上がる。
これが稲生以外の男であったらそんなことせず、この電車が大宮駅で運転打ち切りになる程の惨事を起こしただろう。
〔「ご乗車ありがとうございました。大宮、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。宇都宮線、快速、宇都宮行きです。蓮田、久喜、古河、小山、自治医大、石橋、雀宮、終点宇都宮の順に止まります。停車駅にご注意ください」〕
ここで降りる乗客は多い。
しかし、乗車客も多い。
夕方ラッシュに10両編成は短いと思うが、車両が足りないのか。
時折、付属の5両編成を奪い合うようなダイヤが組まれているようにしか見えないところがある。
稲生:「さすがに疲れましたね」
マリア:「ビジネスクラス……グリーン車じゃなかったら、もっと疲れただろうね」
稲生:「確かに……」
湘南新宿ラインは新しい運転系統である為、他の路線と比較検討はなかなかできないが、旧国鉄時代製造の115系や211系と比べると座席が硬めであり、やはり普通車で1時間40分はキツいかもしれない(乗車時間が長めとなる常磐線のE531系は、座席が柔らかめである)。
〔11番線の宇都宮線、ドアが閉まります。ご注意ください〕
11番線は宇都宮線と高崎線が共同使用する上、車両も共通運用なので誤乗されやすく、その防止の為に発車放送に路線名が付く。
稲生:「パレスホテルはこの近くなので、間に合いそうですね」
マリア:「そうだな」
夕方ラッシュで混雑するコンコースを通り抜け、更には多くの市民でごった返す西口ペデストリアンデッキに出た。
マリア:「夕日が眩しい」
稲生:「体育会系なら、『夕日に向かってダッシュだ!』とか言うんでしょうけどね」
マリア:「何それ?」
稲生:「いや、何か昔のマンガでそういうのがあったんですけど……。ネットで見ました」
マリア:「ジャパニーズ・ジョークか?」
稲生:「多分……」
[同日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 パレスホテル大宮]
(稲生家の面々が集まる為、ここからは名前表記にする)
イリーナ:「やあやあ、よく来てくれたねぇ」
ホテルのロビーに到着すると、イリーナが目を細めて出迎えた。
勇太:「先生、お待たせしました」
マリア:「? 勇太の御両親は?」
イリーナ:「もうすぐ着くと思うよ」
勇太とマリアの到着から間髪置かず、正面エントランスにハイヤーが到着した。
父親の宗一郎が通勤に使っているハイヤーだ。
恐らく帰り際、母親の佳子をピックアップして来たのだろう。
宗一郎:「どうも、先生。お待たせ致しました」
佳子:「今日はありがとうございます」
イリーナ:「いいえ。さあ、どうぞこちらへ」
マリア:「師匠!?」
勇太:「え、先生?まさか……」
イリーナ:「今回はアタシが奢るよ」
勇太:「ええーっ!?」
宗一郎:「本来なら私達がおもてなしをしなければならないのに恐縮です」
イリーナ:「いいえ。もう既に皆さんからは、十分におもてなしを受けましたから。これは私からのお返しです」
マリア:「勇太、きっとこれは師匠が魔法の実験に失敗して、大地震を起こすということだぞ」
勇太:「マジですか!?」
イリーナ:「……なワケないでしょ。もっとも、マルファが東アジア魔道団への攻撃と称してインドネシアに……ゲフンゲフン」
勇太:「インドネシアに何をする気ですか?」
ホテル1階のフランス料理レストランに連れて行かれる稲生達。
マリア:「凄いキレイ」
勇太:「ここなら大師匠様も御招待できそうですね」
イリーナ:「そこまで気を使わなくてもいいのよ」
勇太:「ですが……」
イリーナ:「マルファにお説教しに行った後、立ち寄ったタイのバンコクの屋台でディナーしてたらしいから」
勇太:「庶民派!?」
マリア:(やはり大師匠様はアジア系の御方なのだろうか……)
イリーナ:「今回はあくまで、宿代代わりよ」
レストランに入り、応対してきたウェイターに案内されてテーブルに着く。
稲生:「ドレスコードとか無いんですかね?」
イリーナ:「それは大丈夫。さ、飲み物を頼みましょう」
ビールを注文した稲生以外は全員ワインだった。