報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「沈没船を捜索せよ」 2

2018-10-31 19:23:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月5日10:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 高橋:「金庫があっただろ。部屋ん中に」
 高野:「セーフティボックスね。でも結局、使わなかったじゃない」
 愛原:「うーん……あったかなぁ……」
 高橋:「先生、記憶が?」
 愛原:「いや……ダメだな」

 私達のやり取りを見て善場氏が大きく頷いた。

 善場:「そうなんですよ。あのセーフティボックスがミソなんです」
 高野:「えっ?」
 善場:「あの中には、ある物が隠されていたんですよ。それを愛原さん達が発見し、回収したものだとテロ組織は見たようですね」
 高野:「結局使わなかったから、あの金庫は開けませんでしたよ?」
 善場:「それが誤算だったんです。テロ組織にとっても、私達にとっても」
 高橋:「海の藻屑になっちまったからな。そう簡単に見つかるもんか?」
 善場:「それをやってみたいと思うんですよ。とにかく、御協力感謝します」
 愛原:「ある物って何ですか?」
 善場:「鍵です」
 愛原:「鍵!?」
 高野:「私達にそれを渡そうとした『リサ・トレヴァー』は、私達に何を望んでいたのかしら?」
 善場:「それはまだ調査中です」
 愛原:「あの、善場さん。もしかして、私達もその沈没船探索について来いというんじゃ?」
 善場:「それはこちらにお任せください。ただ、その後の探索結果によっては更なるご協力を要請するかもしれません」
 愛原:「更なる協力?」
 高橋:「先生をコキ使おうとはいい度胸だな?」
 善場:「もちろん、報酬はお支払い致します」

 善場は席を立った。
 入口まで見送る私達。
 事務所の外の共用廊下には、善場氏の部下と思しき黒服が警備に当たっていた。
 すぐにエレベーターが呼び出され、それで下りて行った。
 再び事務所に戻り、そこから通りに面した窓から下を見ると、シルバーのミニバンに乗り込む善場氏らの姿があった。
 多分あの車の窓ガラスは防弾仕様になっているのだろう。

 愛原:「くそっ、何だか俺だけが除け者だな」
 高野:「先生は記憶を無くされているのだから、仕方ありませんよ」

 高野君は応接室の片付けを始めた。

 愛原:「それにしても、リサって2人以上いたんだな?」
 高橋:「2番だか4番だか呼ばれてましたからね。何だかんだ言って量産されたのかもしれないですね」
 愛原:「マジか。マグナムも効かないBOWがウジャウジャと……」
 高橋:「大丈夫ですよ。俺がボコボコにボコしてみせます!」

 いや、だからボコボコにボコしてもすぐに何度でも復活してくるから厄介なBOWだなと言っているのだが……。
 私が聞いたアメリカのオリジナル版は動きが遅いそうだが、私が世話している日本人版のリサは運動神経も抜群だという。

 高橋:「それにしてもあの女、俺達を上手いこと利用する気満々ですよ」
 愛原:「善場さん達は、うちの事務所のクライアントさんのようなものだからしょうがない」

 実際、報酬はもらっているわけだし。
 そのうち、また命懸けの依頼でも来るのだろうな。
 私立探偵は民間人だから、お役所の民間委託というロクでもない……ゲフンゲフン。

[同日15:00.天候:晴 東京墨田区某所 学校法人『東京中央学園』墨田中学校]

 全ての授業が終わり、リサは同じ班のクラスメートと共に教室の掃除をやっていた。

 斉藤:「……それで、ゴミを集め終わったら、これをゴミ集積場に持って行くの」
 リサ:「ふんふん」

 斉藤絵恋はリサに付きっ切りで、教室掃除の仕方を教えていた。
 リサはBOWに改造される前の記憶がほとんど無い。
 その為、小学校の時の記憶が無いのである。
 因みに知識や知能は研究所にいた時に、一通り付けられたらしい。
 BOW改造のせいなのか、或いは元々そうだったのか、知能指数はずば抜けて高く、一度見聞きしたものを全て簡単に覚えてしまえる特長があった。

 斉藤:「今日は週末だからゴミが溜まってて、1番重いから気をつけてね」
 リサ:「うん、分かった」

 そのやり取りを見ていた他のクラスメート達は……。

 男子生徒A:(きっと、『アンタは新入りなんだからゴミ運びは全部あなたがやるのよ!』とか言うな、きっと)
 男子生徒B:(教えるだけ教えて、『あとは全部やっといて』とか言うパティーン……)
 女子生徒A:(絶対後で愛原さんに押し付けて帰るつもりね)
 女子生徒B:(愛原さん、また泣いちゃうよ。そしたら、さすがに今度は斉藤さんにガツンと言ってやろう)

 などと、けして斉藤に良いイメージを持っていなかった。

 斉藤:「それじゃ……」

 斉藤の説明が終わり、教室内にいたクラスメート達が身構えた。

 斉藤:「一緒に行きましょう。今度はゴミ集積場の場所を教えてあげる」
 リサ:「うん」

 ザワッ……!

 斉藤:「ん?なに?……あ、そうそう。1つは私が持つね」
 リサ:「うん」

 ザワザワ!ザワザワ!

 斉藤:「な、なに?急に騒がしくなったわねぇ……」
 リサ:「知らない。全然知らない」

 斉藤とリサはゴミ袋を手に、教室を出て行った。

 男子生徒A:「お、おい!今の見たか!?」
 男子生徒B:「見た見た!新たな『学校の怪談』の始まりだぜ!?」
 女子生徒A:「うそ……あの斉藤さんが?」
 女子生徒B:「真面目にゴミ袋を持って行ってる!?」
 男子生徒C:「明日、雪降るんじゃね?」
 女子生徒C:「そ、そういえばまた台風が発生したなんて予報があったような気が……」
 男子生徒D:「その台風、東京に直撃たぜ、きっと」

 クラスメート達の噂をよそに、リサにベッタリくっつくようにして廊下を歩く斉藤。

 斉藤:「リサさん、この私が一緒に行ってあげてるんだから感謝しなさいよ」
 リサ:「うん、ありがとう、サイトー。優しい」
 斉藤:(も、萌ぇぇぇぇぇぇっ!)

 と、一瞬悶絶しかかる斉藤。

 斉藤:「あ、ここよ、ここ」
 リサ:「焼却炉?」
 斉藤:「昔はね。だけど、環境問題がどうとかで、だいぶ昔に使われなくなったらしいの。今は単なるゴミ集積場よ」
 リサ:「ふーん……」

 リサはジッと焼却炉の方を見つめていた。

 斉藤:「どうかしたの?そんなに珍しい?リサさんの中学……あ、いや、霧生市のバイオハザードで大怪我をして、ずっと入院してたんだよね。ゴメンね」

 リサは霧生市のバイオハザードに巻き込まれ、大怪我したのとウィルスの治療の為に長期間入院していたという説明がこの学校ではされている。

 リサ:(何かいる?気のせい?)
 斉藤:「さ、早いとこ教室に戻ろう。ここ、あんまり気持ちのいい所じゃないし」
 リサ:「うん」

 リサ達はゴミ袋を集積場の前に置くと、その足で教室に戻った。
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“私立探偵 愛原学” 「沈没船を捜索せよ」

2018-10-31 10:17:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日06:02.天候:曇 太平洋上 豪華客船“顕正”号船内]

〔自爆装置、第2フェーズに入りました。あと5分で自爆します。船内の皆様は、直ちに船外へ避難してください。繰り返します。……〕

 高野:「マサ、早くこっちへ!」
 高橋:「分かってるって!こっちは先生を担いでるんだからよォ!」

 あっちこっちで小爆発を起こす豪華客船“顕正”号。
 生き残っている乗客は、既に愛原学探偵事務所の面々だけとなってしまった。
 そして今、正体を知らぬ黒幕が高笑いをしながら船の自爆装置を作動させ、生き残った愛原達をも海の藻屑にせんとしていた。
 サイドデッキを通ってヘリポートのある船橋甲板へ向かう3人。
 愛原を頭を打って意識を無くしており、高橋が愛原を担いでいた。
 船は船尾を下にしてどんどん沈んで行く。
 船橋甲板へ向かうには、急坂と化したデッキを通らなくてはならなかった。
 小爆発と共に船の設備や荷物が愛原達目掛けて飛んで来る。
 この時点で既にゾンビ達はいなくなっていた。
 高橋達が粗方倒したからなのか、或いはこの小爆発に巻き込まれて死んだのかもしれない。
 そう言えば船底から上がって来る最中にも、それと思われるゾンビ達の死体が転がっていた。
 それでも生き残った者達は、這いずってでも愛原達に襲い掛かろうとしていたが。

 高野:「ヘリが!」

 デッキの横をBSAAのヘリが掠め通って行く。
 どうやら先にヘリポートで待っているということらしい。

 高橋:「船の傾き、パねぇ!」
 高野:「急ぐのよ!」

 だが、船橋甲板に出る出入口の前には……。

 サスペンデッド:「逃ィがさなぁぁぁぁぁぁい!」
 高橋:「うおっ、逆さ女!?」
 高野:「大山寺にいたヤツと同じだね!」

 リッカーの上位種である。
 リッカーが既に生前どんな人間か(男か女か)が分からないくらい化け物と化しているのに対し、サスペンデットはまだ辛うじて人間の原型を保っているせいか、それが分かる。
 どうもサスペンデッドは、女がなるものらしい。

 高野:「てか、“学校であった怖い話”じゃないんだから!」
 高橋:「うっせ!このクソ女、ジャマするならぶっ殺す!」

 高橋は愛原を担いだままハンドガンを向けた。
 しかし、デッキの横にある船室の窓ガラスをブチ破って、リッカーも数匹飛び出してきた。

 高野:「どうやらここがラスボス戦らしいよ?」
 高橋:「へっ、ゲームなら船橋甲板辺りになるのによォ!」
 サスペンデッド:「殺すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
 高野:「せっかちは嫌われるよ!」
 高橋:「しつこいヤツもな!」

 高野はショットガンを構え、高橋はハンドガンを構えた。

[10月5日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は日本政府エージェントの善場さん達がやってきた。
 リサの様子を見に来たのかと思ったが、この時間帯、リサは学校に行っている。
 どうやら、リサではなく私達に用事があるようだ。
 実際そうで、高野君や高橋君から豪華客船“顕正”号であったことを教えて欲しいということだった。
 これは私も詳しくは聞いていなかった。
 いや、1度だけは聞いたか。
 それでも私の失った記憶が戻ることはなかった。
 まるで高野君達が巧妙な作り話をしている。
 そんな感じに聞こえただけだった。

 高野:「……こうして私達は辛うじてサスペンデッドやリッカー達を倒し、ヘリコプターに乗って辛うじて脱出したんです。その直後、船は大爆発を起こして海の底へ沈んで行きました」
 善場:「なるほど。そういうことでしたか」

 善場氏は大きく頷いた。

 愛原:「大丈夫ですか?私はこの2人の話を聞くのは2度目ですが、やっぱり思い出せないんです」
 善場:「思い出せないのは当然でしょう。あなたは後半、意識を失っておられたのですから」
 愛原:「いや、バイオハザードが起こる前の記憶とか、それすらも無いんですよ」
 善場:「私が高橋さんと高野さんから話を伺いたかったのは、ある物の存在について知りたかったのです」
 愛原:「ある物?」
 善場:「愛原さん、あの船に乗り込む前、カードキーのようなものを送り付けられたそうですね?あの船で使う物だということで……」
 愛原:「あ、はい。そうです。リサが送ってきたらしいんですが、当のリサは知らないらしいんですよ」
 善場:「恐らく、今学校に行ってる『リサ・トレヴァー』ではないでしょうね」
 愛原:「確かに仙台の廃校地下の研究所には、もう1人いましたね」

 私達はさっさと脱出してしまったが、最終形態にまで変化した『もう1人のリサ・トレヴァー』は最終的にBSAAに倒された。

 善場:「私達が欲しいのは、そのカードキーなんですよ」
 愛原:「はあ!……って、どこにあるんだ?」
 高野:「ああ、それなら金庫にしまってありますよ」
 愛原:「あるんかい!BSAAに渡さなかったの?」
 高野:「別に、善場さんみたいに『くれ』とは言われませんでしたから」

 そういうものか。
 高野君は一旦席を外して応接室から退出すると、すぐに戻ってきた。

 高野:「これですね」

 高野君は茶封筒に入ったカードキーを持って来た。

 善場:「拝見します」

 善場氏は茶封筒の中に入っている黄色いカードを取り出した。
 ああ、うん。あれは覚えてる。
 やはり私は船に乗ってからの記憶が無いようだ。

 愛原:「しかし善場さん、もう既に海の藻屑と化した船で使われていたカードキーなんて、使い道あるんですか?」
 善場:「それがあるんですよ」
 愛原:「ええっ?」
 善場:「確かに船そのものは海の底に沈んでしまいましたが、存在自体が無くなったわけではありません」
 愛原:「はあ……」
 善場:「私達はこれから、BSAAと合同であの船の探索をしようというのですよ」
 愛原:「ええっ!?」
 高橋:「沈没船を探索するのか!」
 善場:「はい。事前の調査ですと、あんな状態になってもまだ船内の一部の電力は生き残っているそうです」
 愛原:「マジですか!?」
 善場:「ということは、こういうカードキーで開くドアとか、仕掛けとかある可能性もあるわけですよ」
 愛原:「うーむ……」
 善場:「あとは高野さん、あの当時宿泊していた部屋について教えてください」
 高野:「部屋ですか?えーと……」

 豪華客船に相応しく、全室がスイートルームである。
 客室内は更に2部屋に分かれていたので、高野君の部屋と私と高橋君の部屋で分けるといった部屋割りをしたそうだ。

 高野:「確かにそのカードキーで、部屋のドアのロックを解除していましたね」
 善場:「それだけですか?他に室内でこのカードキーを使う場面とかありませんでしたか?」
 高野:「んーと……」
 高橋:「ああ、アネゴ。あれだよ、あれ」
 高野:「え?」

 高橋は何か思い出したようだ。
 本来、電気錠となっている部屋のドアロックを解除する為のカードキー。
 室内には他に使い道があったらしい。
 それは何だったと思う?

 1:バスルームのドア
 2:セーフティボックス
 3:テレビの有料チャンネル
 4:見当もつかない
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