[9月28日11:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
愛原:「いよいよ来週は、リサが中学校に編入する日だ」
高橋:「そうっスね。もっとも、台風で休校にならなきゃの話ですよ?」
愛原:「今週日曜のうちに去ってくれるから大丈夫だろう」
高橋:「……だといいんスけどね」
と、そこへ来訪者現る。
リサ:「こんにちはー」
リサであった。
愛原:「リサ、どうしたんだ?家で留守番……」
高野:「先生、私が呼んだの」
愛原:「高野君が?」
高野:「エージェントの善場さんがね、リサちゃんの中学校の制服姿を写真に撮って送ってくれって」
愛原:「えっ、今更?」
高野:「実際にリサちゃんが中学校に行く気があるかどうか確認したいみたいだよ」
愛原:「だから、今更かよ」
高野:「というわけでリサちゃん、向こうで着替えて来て」
リサ:「分かったー」
リサはキャリーバッグを応接室に持って行った。
確か制服姿だったら、既に彼女が喜び勇んで私に見せて来たはずだが……。
リサ:「お待たせー」
リサが私服から制服に着替えて来る。
モスグリーンのシングル3つボタンのブレザーに、スカートはグレー。
えんじ色のリボンが特徴である。
ニットのベストもあるが、これもグレー。
私立の学校らしく、ブレザーの胸ポケットの位置やベストの左胸の辺りにも校章のワッペンが付いている。
愛原:「おー、相変わらず似合うなー!」
尚、高校ではブレザーがダブルになるとのこと。
愛原:「今の中学生の制服も、セーラー服じゃないんだな」
高野:「まだそういう所もあるみたいだけど、東京中央学園は早くから中高共にブレザーらしいですよ。じゃあ、写真撮るから。そっちの白い壁の前に立って」
リサ:「はーい」
高野君がデジカメを手にリサの撮影をする。
1枚だけでなく、3枚ほど撮影するのだが……。
高橋:「おい、アネゴ」
高野:「何よ?」
高橋:「写真の角度がムショみたくなってねーか?」
高野:「気のせいだよ」
正面から見た写真、斜めからの写真、横向きの写真……。
愛原:「言われてみればそう思うってな感じだな。そう思う高橋、やっぱりキミは……」
高橋:「サーセン、ムショ帰りで」
愛原:「これをデータ化して、善場さんに送ればいいのか」
高野:「あ、まだですよ、先生」
愛原:「え?」
高橋:「次に着替えて来て」
リサ:「はーい」
愛原:「制服ってまだあるの?」
高野:「何言ってるんですか、先生」
リサが次に着替えて来たのは体操服。
冬用は上下ジャージに、夏用はTシャツに緑色のスパッツである。
愛原:「今はブルマじゃないのか……」
高野:「先生、今年おいくつですか?」
愛原:「悪かったな、アラフォーで!」
高橋:「先生。もし良かったら、俺がコスプレショップでブルマー買ってきて、こいつに穿かせますが?」
愛原:「いや、いいよ!これも時代の趨勢だ!」
高野:「ネットや何かじゃ、『ブルマよりもスパッツの方が体の線が浮き出やすいから却ってエロい』という意見もあるみたいですね。……はい、いいよ。次に着替えて来て」
リサ:「はーい」
愛原:「今度は何だ?」
リサが最後に着替えて来たのはスクール水着。
高野:「高校では水泳の授業は選択制だそうですが、中学生は体育で必須だそうです」
愛原:「言われてみれば、高校の時は水泳の授業受けなかった記憶があるなぁ」
如何に私立とはいえ、義務教育の過程として水泳は必須なのだろう。
愛原:「今も昔もスクール水着のデザインは変わらんな」
高野:「いえ、変わってますよ」
愛原:「え、そうなの?」
高野:「先生の頃はまだ肩紐がキャミソール型ではなく、タンクトップのような形じゃなかったでした?」
愛原:「あー、確かそんな感じだったな」
高野:「これでも従来型らしいですよ。今は下の部分がスパッツ型になっていたり、上下セパレーツタイプとかがありましたので」
愛原:「その中から選べたんだ。だったら、新型タイプの方が良かったんじゃない?」
高野:「リサちゃんも悩みましたからね。しょうがないから、私が中学生の時に来てたタイプを教えてあげると、『じゃ、これがいい』ってことで」
愛原:「なるほど。高橋の時はどうだった?」
高野:「少年院じゃ、プールに入ることは無かったんで」
愛原:「……あ、ゴメン」
とにかく、制服と体操服とスクール水着の写真を撮った。
愛原:「購入した時の領収書は送ったけど、ついでに画像も送れってことだったか」
高野:「そういうことですね。……あ、もう着替えていいよ」
リサ:「はい」
リサが着替えている間、高野君が今撮影した画像をデータに起こす。
高橋:「でも先生、ホントマジで大丈夫なんスかね?」
愛原:「リサの学校生活かい?」
高橋:「ええ。マジでケンカとかになったら、クリーチャー化するかもしれないですよ?」
愛原:「そうならないことを願うけどねぇ」
恐らく日本政府としては、BOWとしてはとても完成されたリサを処分するのは忍びないということだろう。
何のトラブルも無く大人になれたらエージェントとして雇い、もしもダメなら、BOWとして殺処分する大義名分ができるといったところか。
それを精査するのに、学校通いは正に打ってつけなのだろう。
政府としてはリサを大学まで行かせるつもりだろう。
それまでに何かトラブルがあるかどうかだ。
普通の学生としてのトラブルの範囲内なら、さすがに殺処分ということはないだろうが。
高野:「先生、取りあえず送る準備ができましたので確認してください」
愛原:「了解」
私は高野君のPCを覗き込んだ。
なるほど。さすがは元新聞記者ということもあって、善場氏へのメッセージも秀逸だ。
愛原:「よし、オッケー。このまま送って」
高野:「了解です」
高野君はデータをメールにして、善場氏に送信した。
その後、善場氏からはデータ送信に対する礼と、しばらくは学校生活に関して注視してほしいという依頼があった。
リサが中学校に編入するまで、あと3日。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
愛原:「いよいよ来週は、リサが中学校に編入する日だ」
高橋:「そうっスね。もっとも、台風で休校にならなきゃの話ですよ?」
愛原:「今週日曜のうちに去ってくれるから大丈夫だろう」
高橋:「……だといいんスけどね」
と、そこへ来訪者現る。
リサ:「こんにちはー」
リサであった。
愛原:「リサ、どうしたんだ?家で留守番……」
高野:「先生、私が呼んだの」
愛原:「高野君が?」
高野:「エージェントの善場さんがね、リサちゃんの中学校の制服姿を写真に撮って送ってくれって」
愛原:「えっ、今更?」
高野:「実際にリサちゃんが中学校に行く気があるかどうか確認したいみたいだよ」
愛原:「だから、今更かよ」
高野:「というわけでリサちゃん、向こうで着替えて来て」
リサ:「分かったー」
リサはキャリーバッグを応接室に持って行った。
確か制服姿だったら、既に彼女が喜び勇んで私に見せて来たはずだが……。
リサ:「お待たせー」
リサが私服から制服に着替えて来る。
モスグリーンのシングル3つボタンのブレザーに、スカートはグレー。
えんじ色のリボンが特徴である。
ニットのベストもあるが、これもグレー。
私立の学校らしく、ブレザーの胸ポケットの位置やベストの左胸の辺りにも校章のワッペンが付いている。
愛原:「おー、相変わらず似合うなー!」
尚、高校ではブレザーがダブルになるとのこと。
愛原:「今の中学生の制服も、セーラー服じゃないんだな」
高野:「まだそういう所もあるみたいだけど、東京中央学園は早くから中高共にブレザーらしいですよ。じゃあ、写真撮るから。そっちの白い壁の前に立って」
リサ:「はーい」
高野君がデジカメを手にリサの撮影をする。
1枚だけでなく、3枚ほど撮影するのだが……。
高橋:「おい、アネゴ」
高野:「何よ?」
高橋:「写真の角度がムショみたくなってねーか?」
高野:「気のせいだよ」
正面から見た写真、斜めからの写真、横向きの写真……。
愛原:「言われてみればそう思うってな感じだな。そう思う高橋、やっぱりキミは……」
高橋:「サーセン、ムショ帰りで」
愛原:「これをデータ化して、善場さんに送ればいいのか」
高野:「あ、まだですよ、先生」
愛原:「え?」
高橋:「次に着替えて来て」
リサ:「はーい」
愛原:「制服ってまだあるの?」
高野:「何言ってるんですか、先生」
リサが次に着替えて来たのは体操服。
冬用は上下ジャージに、夏用はTシャツに緑色のスパッツである。
愛原:「今はブルマじゃないのか……」
高野:「先生、今年おいくつですか?」
愛原:「悪かったな、アラフォーで!」
高橋:「先生。もし良かったら、俺がコスプレショップでブルマー買ってきて、こいつに穿かせますが?」
愛原:「いや、いいよ!これも時代の趨勢だ!」
高野:「ネットや何かじゃ、『ブルマよりもスパッツの方が体の線が浮き出やすいから却ってエロい』という意見もあるみたいですね。……はい、いいよ。次に着替えて来て」
リサ:「はーい」
愛原:「今度は何だ?」
リサが最後に着替えて来たのはスクール水着。
高野:「高校では水泳の授業は選択制だそうですが、中学生は体育で必須だそうです」
愛原:「言われてみれば、高校の時は水泳の授業受けなかった記憶があるなぁ」
如何に私立とはいえ、義務教育の過程として水泳は必須なのだろう。
愛原:「今も昔もスクール水着のデザインは変わらんな」
高野:「いえ、変わってますよ」
愛原:「え、そうなの?」
高野:「先生の頃はまだ肩紐がキャミソール型ではなく、タンクトップのような形じゃなかったでした?」
愛原:「あー、確かそんな感じだったな」
高野:「これでも従来型らしいですよ。今は下の部分がスパッツ型になっていたり、上下セパレーツタイプとかがありましたので」
愛原:「その中から選べたんだ。だったら、新型タイプの方が良かったんじゃない?」
高野:「リサちゃんも悩みましたからね。しょうがないから、私が中学生の時に来てたタイプを教えてあげると、『じゃ、これがいい』ってことで」
愛原:「なるほど。高橋の時はどうだった?」
高野:「少年院じゃ、プールに入ることは無かったんで」
愛原:「……あ、ゴメン」
とにかく、制服と体操服とスクール水着の写真を撮った。
愛原:「購入した時の領収書は送ったけど、ついでに画像も送れってことだったか」
高野:「そういうことですね。……あ、もう着替えていいよ」
リサ:「はい」
リサが着替えている間、高野君が今撮影した画像をデータに起こす。
高橋:「でも先生、ホントマジで大丈夫なんスかね?」
愛原:「リサの学校生活かい?」
高橋:「ええ。マジでケンカとかになったら、クリーチャー化するかもしれないですよ?」
愛原:「そうならないことを願うけどねぇ」
恐らく日本政府としては、BOWとしてはとても完成されたリサを処分するのは忍びないということだろう。
何のトラブルも無く大人になれたらエージェントとして雇い、もしもダメなら、BOWとして殺処分する大義名分ができるといったところか。
それを精査するのに、学校通いは正に打ってつけなのだろう。
政府としてはリサを大学まで行かせるつもりだろう。
それまでに何かトラブルがあるかどうかだ。
普通の学生としてのトラブルの範囲内なら、さすがに殺処分ということはないだろうが。
高野:「先生、取りあえず送る準備ができましたので確認してください」
愛原:「了解」
私は高野君のPCを覗き込んだ。
なるほど。さすがは元新聞記者ということもあって、善場氏へのメッセージも秀逸だ。
愛原:「よし、オッケー。このまま送って」
高野:「了解です」
高野君はデータをメールにして、善場氏に送信した。
その後、善場氏からはデータ送信に対する礼と、しばらくは学校生活に関して注視してほしいという依頼があった。
リサが中学校に編入するまで、あと3日。