報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「湘南色をしたE217系はどこに行ったのだろう?」

2018-10-03 19:13:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月30日16:03.天候:晴 神奈川県逗子市 JR逗子駅→湘南新宿ライン4536Y電車4号車]

 乗り鉄の旅のルートとして神奈川県逗子市を通過する稲生とマリア。
 逗子という変わった市名であるが、ある信仰者ならこの名前にピンと来るものがあるだろう。
 延命寺の地蔵尊を安置する『厨子』があったことから、この名前になったという説もある。

〔この電車は横須賀線、湘南新宿ライン、宇都宮線直通、快速、宇都宮行きです。……〕

 稲生がホームのとある場所に立ち寄ったのは、手持ちのSuicaにグリーン券情報を入力する為。
 しかし、基本的にキップで乗っているマリアにはそれができない。
 どうするのかというと……。

 稲生:「すいません。大宮まで1枚ください」

 始発駅の場合、発車前でもグリーンアテンダント(以下、GA)が回って来ることがある。
 ここでもそうだったので、稲生はそのGAを呼び止めた。

 GA:「かしこまりました。車内でお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますが、よろしいでしょうか?」
 稲生:「結構です」

 車内精算の方が割高となるシステム。
 多分、関西では受け入れられないシステムであろう。
 あ、だから向こうはグリーン車が無いのか。

 マリア:「いいの?本当に?」
 稲生:「乗り鉄最後の電車ですから」
 マリア:「ありがとう」

 稲生がグリーン料金を払うと、GAの持つ端末から、ベーッとレシートのような紙が出て来る。
 それをビッと千切って渡してきた。

 GA:「ありがとうございます」
 稲生:「どうも」

〔「お待たせ致しました。湘南新宿ライン、宇都宮線直通の快速、宇都宮行き、まもなく発車致します」〕

 発車の時間になって、ホームから微かに発車メロディが聞こえて来た。

〔3番線の、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 横須賀線や総武快速線のみを走る電車と違い、湘南電車のオレンジ色と緑色のライン(湘南色)を身に纏った電車が発車した。
 副線のホームからの出発なので、本線に出る為にポイントを渡らないといけない。
 その度に電車が大きく揺れる。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は横須賀線、湘南新宿ライン、宇都宮線直通、快速、宇都宮行きです。停車駅は大宮までの各駅と、蓮田、久喜、古河、小山、小山から先の各駅です。グリーン車は、4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、鎌倉です〕

 マリア:「この電車だと大宮には何時に着くって?」
 稲生:「17時41分ですね」
 マリア:「結構遠いな」
 稲生:「そうなんですよね。横須賀線と湘南新宿ラインで、一駅ごとの距離もそれなりにあるので、尚更そう感じます」

 因みに10両編成という短い編成なので、恐らくこれから混んでくることだろう。

 稲生:「ダイヤ通りに走ってくれれば、待ち合わせには間に合いますよ」
 マリア:「まあ、そうだな」

 この後、電車は逗子市を抜けて鎌倉市へと入る。
 鎌倉駅から江ノ電に乗り換えると、日蓮大聖人所縁の地がいくつかあるのだが、今回は割愛となる。
 鎌倉駅の次、北鎌倉駅は臨済宗円覚寺の境内にある。
 横須賀線が軍事路線として開通するに辺り、強引な用地買収によって行われたものだ。
 国家神道が第一であった為、仏教は蔑ろということもあったのかもしれない。
 さしもの顕正会員でさえも、電車が境内を通るだけで謗法とは言わないはずだが。

 マリア:「この辺りに、勇太の宗派のお寺は?」
 稲生:「ありますよ。護国寺さんです」

 東京メトロ有楽町線に同じ名前の駅があるが、宗派が違うので注意。

 稲生:「ああ。そういえば今回はまだ正証寺に参詣してなかったなぁ……」
 マリア:「明日行けばいいじゃない」
 稲生:「そうですね」

[同日17:08.天候:晴 東京都新宿区 JR新宿駅]

〔まもなく新宿、新宿。お出口は、右側です。山手線、中央快速線、中央・総武線、小田急線、京王線、地下鉄丸ノ内線、都営地下鉄新宿線と都営地活大江戸線はお乗り換えです〕

 湘南新宿ラインとして中間に当たる新宿駅に差し掛かる。
 この辺りまで来ると、車内もだいぶ混んで来たようだ。
 グリーン車の座席横に立つ者は今のところ見受けられないが、それでも見渡す限り満席状態であることに違いは無さそうだ。

 マリア:「帰りはこの駅を通るんだって?」
 稲生:「バスタ新宿からバスに乗りますからね。一応、そのつもりです」

 駅に電車が到着すると、ぞろぞろと乗客が吐き出された。
 しかし、ホームには長蛇の列ができており、平日の夕方ラッシュであることを物語っている。

 マリア:「そうだ。師匠に中間報告をしないと」
 稲生:「この辺はマメですね」

 マリアは再びローブから水晶球を取り出した。

 マリア:「師匠、師匠。マリアンナです。応答願います」
 イリーナ:「
 稲生:「寝てる!?」
 マリア:「……このクソBB……」
 稲生:「ストーップ!どこで聞かれているか分かりませんよ!?」
 マリア:「フガッ!?」

 稲生は慌ててマリアの口を塞いだ。

 稲生:「言葉には注意しませんと!」
 マリア:「中間報告しろって言っといて、この体たらくだぞ?」
 稲生:「ま、そうなんですけど、着信履歴は残るでしょうし……」
 マリア:「携帯電話じゃないって」

 そうこうしているうちに、電車は走り出した。

 マリア:「本当にディナーはレストランなのかな?」
 稲生:「一応、家にも確認しましたけど、そうみたいですよ」

 稲生は手持ちのスマホを出した。
 ぶっちゃけ、稲生に水晶球は必要無いであろう。
 占いをしようとすると、筮竹をそれらしく使うタイプかもしれない。
 新宿駅を発車すると、再び夕日が車内に差し込んで来た。
 グリーン車にはブラインドが付いているので、それを下ろして寝入る体勢を取る乗客もいる。

 稲生:「いつものホテルのレストランのようですので、間違いないと思います」
 マリア:「勇太の御両親に師匠が迷惑掛けてないといいけど……」
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“大魔道師の弟子” 「横須賀線の通称はスカ線であるが、正式は電略は『スカセ』である」

2018-10-03 10:18:11 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月30日15:25.天候:晴 神奈川県横須賀市 JR久里浜駅→JR横須賀線先頭車]

 京急久里浜駅に到着した路線バス。
 乗客の殆どが京急久里浜駅に向かう中、人けも疎らな道を進む魔道師が2人。
 そして、静かな駅構内のJR久里浜駅に入った。
 もっとも、あくまで京急側と比べれば静かというだけで、そこまで寂しいわけでもない。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、15時25分発、快速、上総一ノ宮行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕

 閑散としたホームには似つかわしくない長さの11両基本編成の電車に乗り込む。
 前3両にはボックスシートが付いていて、そこに向かい合わせに座った。

〔「お待たせ致しました。信号が変わりましたので、発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 ホームの端のせいか、発車メロディは微かに聞こえるくらい。

〔1番線の、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 信号の開通が遅かったせいか、慌ただしく発車する。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は横須賀線、総武快速線、外房線直通、快速、上総一ノ宮行きです。錦糸町までは各駅に停車致します。【中略】次は、衣笠です〕

 電車は傾いた日差しを受けて進路を北に進める。
 尚、横須賀線で運用されているE217系電車はグリーン車以外、ブラインドが無い。
 一応、UVカットガラスにはなっているが、マリアの金髪をくすんだ色に染め上げるシートが張ってあるだけで、眩しさはそんなに変わらないような感じだ。
 これは後継のE231系やE233系では、少し解消されている。

 マリア:「ん?」

 マリアはローブの中から水晶球を取り出した。
 その水晶球が光っている。

 マリア:「何ですか、師匠?」
 イリーナ:「ゴメンねぇ、デートの最中に。勇太君の御両親がね、夕食は外で食べないかって」
 稲生:「先生、家にいたんだ……」
 マリア:「早く帰ってこいってことですか」
 イリーナ:「まあ、そういうことね」
 マリア:「勇太に聞いてみます。それじゃ」

 マリアはさっさと通信を切ってしまった。

 マリア:「……だってさ」
 稲生:「そうですか。鎌倉で降りて江ノ電にでも乗り換えようかと思ったんですが、結構時間がおしてるんですね。しょうがないから、途中で湘南新宿ラインに乗り換えて帰りますか」
 マリア:「悪いね」
 稲生:「いえいえ。ちょっと待ってください。今、検索の方を……」

 稲生はスマホを取り出した。

[同日15:38.天候:晴 神奈川県横須賀市 JR田浦駅]

 京急本線が開けた場所を走行するに対し、JR横須賀線は山の中を突き進む。
 その為、トンネルを断続的に通過する区間もある。
 横須賀線はかつて軍事路線として建設された経緯もあることから、それで山の中を隠れるように……というわけではないだろうが。

〔「まもなく田浦、田浦です。お出口は、右側です。田浦駅はホームが短い為、先頭車両11号車と10号車の1番前のドアは開きません。11号車にご乗車のお客様で、田浦駅でお降りになる方は10号車からお降りください」〕

 稲生達は先頭車に乗っている。
 だからホームを通過して、トンネルの中に突っ込んで止まる所がよく分かった。

 
(JR田浦駅に停車中の電車。先頭車がトンネルに突っ込んで停車している。10号車の前側のドアを開けても大丈夫そうな気がするが、さすがにギリギリ過ぎてアウトか)

 マリア:「何これ?」
 稲生:「横須賀線が建設された当時、まさかこんな長い編成の電車が走るとは思わなかったでしょうねぇ……」
 マリア:「トンネルを切り崩してホームを伸ばせばいいんじゃないか?」
 稲生:「飯田線の大嵐(おおぞれ)駅とか、そんな感じですね。多分、そんな予算出ないんでしょうね」

 この辺りは京急線の方がメジャーであり、横須賀線の方は閑散としている。
 それだけに、あまりJRも積極的ではないのかもしれない。
 小さな駅なので、すぐに発車して行く。

〔次は、東逗子です〕
〔The next station is Higashi-Zushi.〕

 マリア:「……で、どうやって乗り換えるか分かった?」
 稲生:「あ、はい。逗子駅で、そこ始発の湘南新宿ラインに乗り換えられます」
 マリア:「それで大宮駅まで戻れるのか」
 稲生:「はい。あとは乗り換え無しです」
 マリア:「分かった」

[同日15:46.天候:晴 神奈川県逗子市 JR逗子駅]

〔まもなく逗子、逗子。お出口は、左側です〕
〔The next station is Zushi.The doors on the left side will open.〕
〔「まもなく、逗子です。逗子からのお乗り換えをご案内致します。今度の湘南新宿ライン、宇都宮線直通の快速、宇都宮行きは3番線から16時3分の発車です。逗子駅で、後ろに増結車両4両を連結致します。5分ほど停車致します。発車までしばらくお待ちください」〕

 稲生:「ここで乗り換えます」
 マリア:「分かった」

 電車がホームに入線した。
 因みに逗子駅は英語表記を見てもらえれば分かるが『ずし』と読み、全国のJR駅をアルファベット順に並べると1番最後に来る駅である(1番最初は北海道の網走駅)。

〔ずし〜、逗子〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 ここで電車を降りる稲生達。
 乗り換えするのに階段を昇り降りしなくてはならないが……。

 稲生:「その前に……」

 稲生はホーム上のどこかに立ち寄った。

 稲生:「お待たせしました。行きましょう」
 マリア:「?」

 一体、稲生は何をしに行ったのだろう。
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