"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

「今何時でぃ」

2010年08月04日 16時34分41秒 | 季節のおはなし

 旧六月二十四日。盛夏の極み、陸奥は祭の盛りであります。大変夏らしい夏を味わっている今年ですが、三日後の8月7日土曜日は二十四節気の立秋となります。ここ二日間の空の青さ、雲の感じは、どことなく初秋を思わせるようでもありますね。時折ふと吹く風に心地良さを感じることもあります。それでも暑い、夏でなくでもまだまだ暑い、酷な残暑の日々となりそうです。

 夏の風情として大好きなのが蝉の鳴き声です。ふと通りがかった都会の公園。メタセイコイアの若木が植えられ、強い陽射しを心地良く和らげてくれています。0805semi 地面には2センチほどの無数の穴。気の枝を見ればこれまた無数の蝉の抜け殻がしがみついています。ミンミンゼミでしょうか。計ったように空が白み始める少し前、天敵がまだ寝静まっている頃に穴から這い出し、木を登り飛び立ちやすい枝先を目指します。一生の内最も危険に晒される数時間。抜け殻はその難関を見事クリアした証なのでしょう。驚くべき本能、体内時計です。
 人間も本来は野生の動物ですから、研ぎすまされた体内時計を持っていたはずです。それがいつのころからか・・・。文明と引き換えに体内時計の感覚はだいぶ失ってしまったのかも知れません。
 さて、私事ではありますが、先月に歳が五十の大台に乗りました。節目の歳には何かを変えなくては、とこれまで三十でコミック雑誌を、四十で煙草を止めてきました。そして五十にな、お酒を止めてはいろいろつまらなくなりそうなので、腕時計をするのを止めることにしたのです。この世の中時計はどこにでもあるし、いざとなれば携帯電話があるのですが、ここはひとつ体内時計を信じて暮らしてみようか、という簡単な思いつきからです。

 そんなことを知ってか知らぬか、心優しい友人が五十の記念にと、懐中時計をプレゼントしてくれました。それが【江戸之刻】という時計です。0805tokei これがじつに優れたもので、日の出と日の入りを基準にした「不定時法」と現在の時間「定時法」を合体させているのです。
 不定時法は昼間と夜の長さをそれぞれ六等分していたため、夏と冬では一時の長さが大きく違って来るのです。つまり、明け六つが日の出で、昼に向けて五つ、四つ、正午が昼九つ。午後は八つ、七つ、日の入りが暮れ六つ。夜になると四つ、五つ、午前0時が夜九つで、八つ、七つでまた明け六つになります。そしてこの十二の時に十二支を当てはめて、夜九つが子・明け六つが卯・暮れ六つが酉・昼九つは午と呼んでいました。
0805edonotoki  では、この時計。不定時をどう表記しているのかというと、ひと月ごとに文字盤を取り替えてゆくのです。厳密に言えば日の出日の入り時刻は日々移ろうわけですから毎日文字盤を取り替えるのが正確なのですが、それでは現実的ではないので【江戸之刻】には12枚の文字盤が付いていて、時節ごとに変えてゆくのです。定時法の時計としては短針が一日で一周する二十四時間計となっています。これさえあれば、鬼平犯科帳も、古典落語もいっそう楽しくなるでしょう。夜鳴きそばで一文ごまかしたければ、四つ(22時頃)ではなく夜九つ(深夜0時頃)でなくては。

【江戸之刻】は有限会社CAST-PLANNINGで製造・販売しています。
詳しくはこちらのホームページをぜひご覧ください。


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