とのさま不経済新聞 by 雲葉

「よるのとのさま」から改題(2013年2月1日)

ありし日の東急バス「元石川線」

2012年07月09日 | 横浜市青葉区
  はまれぽさんにキニナル投稿していて思い出したのが表題のバス路線です。ウイキペディアの「東急バス虹が丘営業所」の項目の中に概要が記されていますが、平日に片道1回だけ、それだけなら特に珍しくもありません。

  ところがこの系統のすごいところは、バス路線掲載の都市地図や住宅地図にもバス停が記されてなく、江田駅の乗り場案内にも表示がなく、東急バス発行の路線案内にも載っていないという、まさに“幻の路線”だったのです。(晩年は記載されました)

  ある日そんなキニナル路線に乗ってみることにしました。乗車日は1994年7月21日です。ちなみに廃止されたのは2003年9月15日付けとのことです。

  朝9時半過ぎに江田駅の2番乗り場に立ち、9時51分の発車を待ちます。その前に48分発の市バス33系統中山駅行きがあるので少し離れて立っていると、先に目的の東急バスがやってきてしまいました。

  時刻表の表示方法も一般的な時間別一覧形式ではなく「発車時刻 9:51 休日運休」と単純明快。系統番号はありません。これは全停留所共通の表現です。

  乗客は拙者ひとりで、運賃箱に回数券(まだバス共通カードは導入されてなかった)を入れようとすると年配の運転手が「どこまで行くの?」と尋ねてくる。

  拙者が「たまプラーザまでですが」と答えると「ぐる~っと回っていくんだけどね」

  こういうマニアックな客すら珍しいのかもしれません。

  バスは国道246号線を一路北上し、発車直後から運転手の昔話が始まります。20年前は車も少なかったとか、246号の新道ができたときは信号がなかったから高速道路かと思ったとか。

  興味深かったのは田園都市線開業前のことで、渋谷から長津田までバスが走っていたらしい。当時は折返し場が二子玉川と宮崎台にあって、渋谷を出て宮崎台で乗客がいなくなると、その先乗る人はいないからと走るのをやめてしまったり(折返しはどうしたんだろう?)、峠の食堂(後述)にバスを止めて食事をしていたとか、乗客にそんな話をしていいのだろうか。(笑)

  関根橋を過ぎ、新石川交差点で他系統はあざみ野方向へ左折し、石川からこの系統のみの独走区間になる。坂を上りきった石川坂上バス停の向かいに例の「峠食堂」がありました。現在はローソンになっています。長津田行きの頃は道路拡幅前で、かなり広い駐車場があったらしい。後日に峠食堂で食事する機会があったのですが普通のドライブインという雰囲気でした。値段は当時としてはやや高めでしたかね。


  石川坂上バス停があった場所

  その石川坂上で6人もの大量乗車! 終点まで自分ひとりかと思っていたので驚きであります。この路線にも固定客がいるものですね。ここから川崎市内に入るので運賃も川崎のが適用されます(当時は180円)。しかしすぐの鷺沼駅入口で5人が降りてしまいました。


  鷺沼駅入口バス停があった場所

  そういえば発車からずっと案内テープが流れていない。聞いてみると、いつも先ほどの区間しか利用がなく、うるさく感じる人もいるというので流さなくても不都合はないらしい。残った一人も今日は特別な用事でたまプラーザまで行くだけで、普段は鷺沼で降りるとのことだった。

  鷺沼小学校、鷺沼公園前、大坪の各バス停を過ぎてたまプラーザには10時10分着。これらのバス停はこの系統が廃止されたと同時に消滅したのですが、何年もたたないうちに鷺21系統という深夜バスのために復活したのです(手続き上は「休止」だったのかもしれません)。1日1回しか来ないという点は同じですが。

  僅か20分のショートトリップでしたが興味深い時間でした。バスが廃止になったことで徒歩やら他の手段に切り替えざるをえなくなった人も少なからずいたわけです。こういう一見意味不明の路線も、最近は効率化でめっきり減った感もあります。

  そういえば横浜市バス27系統のバス停名変更で影響を受けた人はいたのでしょうか。いつも安善町で降りていたのが、80メートル先の“新”安善町まで乗り過ごしてしまったという人がいるのかどうか…。


※この文はかつて所属していたサークルの機関誌に投稿したものを加筆修正したものです。

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