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日高川町 美山の「藤布」技術を後世へ 保存会が復活に向け活動開始 〈2021年10月12日〉

2021年10月12日 08時30分00秒 | 記事


フジのつるを釜で炊き、繊維を取り出す作業を行った


 昭和50年代前半まで日高川町美山地区で活用されていたが、紡織技術を知る人が少なくなり消滅の危機にある全国でも稀少な「藤布」を継承しようと、町内有志が「紀州藤布保存会」を発足。10日に寒川地内の寒川邸で、あく抜きと呼ばれるフジのつるから繊維だけを取り出す作業が行われ、復活に向けての第一歩を歩み出した。

 保存会長の寒川歳子さんは、亡夫・寒川伸彦さんととも生前に美山に伝わる藤布を調査。昭和50年代に発行された近畿民具学会年報に伸彦さんが藤布を寄稿した。そんな藤布の存在を知り「このままでは藤布の文化がなくなってしまう」と危ぐした同町三百瀬の友渕定代さんが、歳子さんらとともに保存会を発足させて活動を始めた。
 藤布は、フジのつるの皮から採取した繊維で糸織りして作られ、茶がゆを炊くときに使用する茶巾や蒸籠(せいろ)の敷布、山作業の上着、特産のシイタケを入れる袋など昭和50年代前半まで日常生活の様々な場面で生かされてきた。この日は、寒川地内などで採取したフジのつるを使い、歳子さんの記憶をたどりながら初段階の「あく抜き」で皮をむいたつるを釜で炊いて繊維を取り出す作業を4時間かけて行った。今後は繊維をつないで糸状のものに仕上げ、布を織ってまずは茶袋のような小さなものを作りたいという。
 参加者の中には藤布を織った経験のある人の情報を寄せる地元の女性らもいた。寒川歳子さんは「このままでは消滅してしまったはずの藤布の技術が、友渕さんの声かけでこうして次の世代に受け継ぐ活動ができて喜びがあります」、友渕さんも「美山のふじまつりなどでも藤布のことを広報し、地元の人から情報を聴いて復活への活動を続けたい」と話した。インスタグラムでも「紀州藤布保存会」を検索すれば活動を確認できる。


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