kotoba日記                     小久保圭介

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『荒野』加筆

2017年04月30日 | 生活
4月28日から
詩神としか思えない
言葉の降り注ぎに
メモを取るが必死

初稿は3月30日

加筆
『荒野まで来てしまったよ』





荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
彼は黒いフェルト帽を被って
小さな女の子の手を引いて
ビルの中に消えていった

もう彼はバス停に戻ってこない
あの家に帰ってしまった
ケンタッキーも
もうない
あんなふうに
笑うことはない


荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
僕ら
歩いているうちに


荒野はずっと続き
どれだけこの先
歩いても
荒野は終わらない


彼の苗字が変わってから
僕は十年
時をやり過ごすだけだったよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
あとは干からびて
枯れるだけ

彼は若作りするけど
本当はしわだらけなのさ
僕は禿げあがって
眉毛は白髪なのさ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
白い服の女の子
彼は子供を持って
荒野へ来てしまったんだよ



荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
宮澤賢治の作った家に
みんな集まってきたよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
小柄な男がリュックを背負って
南へ向かったよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
白い壁は唐ウれて
がれきになって草が生えていたよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
黄色い砂埃が舞って
君の皮膚をざらざらにしたよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
赤い車は燃やされた後
真っ黒になったままさ
ロバが唐
馬が唐
花が吹き飛ばされたよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
鳥は幻を見ようとして
空高く飛んでいったよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
転がる石のように歩いたら
崖の下に沈んだよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
太陽の光の中を
砂塵が舞い
君の目をつぶすよ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
生まれた時から全盲だった人が
カッと目を見開いたよ
その目に映る
この世のすべて
この世のすべて


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
呪文もマントラも通じない
言葉はもうどこにもないんだ


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
雲が地面まで降りてきて
僕らをうるおしたよ

このコップに蜜をいっぱいくれ
一生分の蜜を


荒野へ来てしまったよ
荒野へ来てしまったよ
もうどこにも国旗はない
ギラつく目が通り過ぎるだけ
カラスがシルクトゥリーの看板にとまって
馬鹿にする相手を探していたよ

君はもう声に出さない
目でものを言わない


荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
太陽まで手を伸ばして
君の願いを全部ここで叶えてあげたい

この世のすべて
海より青く
青く青く塗りつぶせ


荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
手を合わせても祈りは通じない
だってここは荒野なんだから

君の時計はいつまでたっても
3時5分を指したままさ


荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
滝を流れ落ちてくる
ヒットラーたち
次々と滝壺に沈み
獰猛な雷魚たちに
内臓を食い破られたのさ



荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
ここは「タラ」だってビビアンリーが言って
ミレーが種を蒔きはじめたよ


荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
暗証番号を首からかけた
しあわせな鳩たちは
クック、クックと鳴くだけさ



荒野まで来てしまったよ
荒野まで来てしまったよ
どす黒いこと
たくさんしてきたね
どす黒い思い
たくさんしてきたね

荒野の風に吹かれて
僕ら
荒野へ来てしまったんだよ





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