kotoba日記                     小久保圭介

言葉 音 歌 空 青 道 草 木 花 陽 地 息 天 歩 石 海 風 波 魚 緑 明 声 鳥 光 心 思

機織る祈り

2019年01月02日 | 生活詩
わたしはあなたと歩いていた
寒い午後の道

あなたはあまり話さず
わたしもあまり話さなかった
それでもささやかな運命の道を歩いていることを
わたしたちは知っていた

祈ることはただ祈ること
縁が細くなったり太くなったりを繰り返し
わたしたちの思いは行ったり来たりしていた
そうこうして何十年
こうして一緒に歩く一瞬一瞬が
灯のゆらめきのようになって
青空の下を移動していた


残り火は白く赤く燃え
手をかざして暖をとった
わたしたちは何も話さなかった
話す必要がどこを探してもなかったから

オルガンがあったので
わたしたちは弾いた
わたしは左で和音
あなたは右でメロディーを
合奏はうまくいった
聞いていた何人かが拍手をした

敷地にはャvラの木がある
家屋の広いベランダには
子供たちが横になっていた
あの日も寒い日だった
薄いガラスは磨かれていて
太陽の光が子供たちの体を温かくしていた
ストーブも燃え
静かなベランダで
わたしは歌った

子供たちは瞬きの回数や
ほんの少しの動きで
感情を伝えた
わたしは手を抜かず
真剣に歌わなければ
伝わらない
その一心でギターを弾いて
歌った

空は今日のように
青く
陽がさしていた

わたしたちが共にした時間は
断続的で短いものだけれど
密度の濃い一瞬一瞬の積み重ねは
いずれ心になって
胸で響く

祈ることはただ祈ること
織物は丁寧に紡がれ
糸車が回る
あなたは言った
「春の織物の出し物がうまくいってほしい」
あなたの願いは届くだろう
機織りの音が聞こえてきて
わたしたちは帰ってゆく
来た道ではなく
縁に導かれた
知らぬ道

音楽が空で鳴り
わたしたちはそれを聞く
歩きながら
聞いている
あなたは何も話さず
わたしは何も話さない
過去も現在も未来も
機織りで紡がれてゆく
その織物を着るのは
知らぬ人

糸車は回り
機織りの音が響き
わたしたちが帰ってゆく
この短い帰路も
織物の中に紡がれてゆくことは
わたしたち
知らされないまま
ただ
歩いてゆく






コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« なんでもない人達 | トップ | お餅 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿