kotoba日記                     小久保圭介

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鳴りやまない拍手

2010年06月12日 | 音楽
腐草為螢、
と書いて、
「くされたるくさほたるとなる」、
と読むし、
「ふそうほたるとなる」、
とも読むそうです。

今日は「腐草為螢」という演目の、
犬塚康博さんとすぎの暢さんのライブに、
行ってきました。
どうしてこんな演目になったのだろう、
とYahoo辞書で意味を調べてみると、
だいたい6月11日から6月16日までのことを、
いうのだそうです。
なるほどなあ、
と、
嘆息です。
かっこいいなあ、
って思うのですよ、僕は、こんなタイトルを。
今日、6月12日は、
腐草為螢の期間にあたるのです。

犬塚さんが1年4ヶ月ぶりのライブをやる、
ツイッター、ブログで、
その発表がなされて即、
腐草為螢、
の、
意味を調べた次第です。

そして、
やっと今日は、
来ました。

会場は、島風食堂という場所で、
まさしく食堂でした。
自転車で行き、
平尾さんと待ち合わせ、
労働を終え、
近くの喫茶店で休憩している、
川口さんとほどなく合流。

コンサートは素晴らしくて、
期待通りのものでした。
アンコールの時、
客席にいる野田牧場さんから、
お皿に盛られたトマトが無料で出され、
それを僕らは食べました。
甘くて冷えていて、
本当においしかったです。

狭い食堂は満員で、
僕は久しぶりにビールを飲みました。
とても暑い日で、
緊張をほぐすためにも、
と思ってのこと。
島風食堂は、たまに、
ライブをやっているようですけど、
こんなに満員になったのは予想外、
だったらしく、
カウンターの中で多忙を極める店主は、
「僕もびっくりしてますー」
と叫んでいました。
誰かが書いていましたけど、
お客さんの、
「すいません」コールに、
息つく間もなし、
の店主さんでした。

ライブの詳細を書くと、
原稿20枚ぐらいになるので、
書きません。

ただ、とても印象的だったのは、
拍手でした。
まず、スティールギターのすぎのさんが、
「今日は静かですね」、
と会場を見て、言いました。
犬塚さんの出番になり、
犬塚さんはオフマイクで、
「今日はどうもありがとうございます、おまたせしました」
というふうに、頭をさげました。
その謙虚な嘘のない振る舞いに、
僕だけじゃなく、
来ていた人の何人かは、
心地よい気分になったと思います。
演奏が始まると、
じっと、
というよりも、
耳を澄ませて、
みんな犬塚さんの歌を聴いていました。
一曲終わって、
拍手の小さいこと、
そして、短いこと。
それは大きな拍手や、
長い拍手を必要としない、
そんな雰囲気が、
島風食堂に満ちていました。
誰かが一曲一曲を、
「まるで標本箱を、一つずつ見ているようだ」
といったことをどこかで書いておられましたけど、
そんな感じです。
曲と曲の間での、
「この曲はこんなふうに」とか、
「そんな感じでできた歌です」、
といった、
歌の解説、説明は、
あたかも、
歌の中の部分であるかのように、
僕らに感じさせてしまうのは、
犬塚さんが博物館学の第一人者、
つまりは学者さんであることに、
関係しています。

天は人に二物を与えず、
とは嘘です。
中沢新一の著書の一部の誤りを指摘し、
それを書き直させるだけの、
情熱を持つ博物館学者の犬塚さん、
さらに、構造的な楽曲を作り、
シンガーソングライターとしての、
卓越さを合わせ持つ犬塚さんに、
まったくもって、
脱帽です。

最後の歌「ャvラ並木」が終わり、
アンコールがあると思っていましたけど、
誰もアンコールをしません。
そこで、アンコール用に用意された、
「幸せそうな人たち」を、
「もう一曲、用意してあるので、短い曲なので、やります」
と犬塚さんは言いました。
小さな笑いが会場にもれ、
本当に最後の曲、
「幸せそうな人たち」
が終わった、その時です。
拍手が、
鳴りました。

今書いていても、
僕は涙が出てきてしまうのですけど、
その拍手は、ライブが終わったことを告げる、
13曲全部に向けての、
一斉の拍手でした。
鳴りやむと思っていました、誰もが。
ところが、
誰かがずっと拍手をやめず、
すぐにみんなが同意して、
再び一斉の拍手が始まりました。
それはアンコールを意味する、
手拍子ではありません。
一度寄せた波が、
もう一度、さらに大きな波となって、
海岸に打ち寄せるように、
拍手の波は、言葉通り、
鳴りやまなかった。

犬塚康博さんは、
シンガーソングライターです。
そういうライブです。
でも、この拍手はまるで、
クラシックのコンサートのように、
終わってからの長い拍手、
または、映画のあとの、
スタンディングオベーションのそれです。
みんな立ち上がりはしませんでしたけど、
胸の中で、起立しているような感じです。
長い一斉の拍手の後に、
犬塚さんは、
一曲、歌詞をもってきていない歌を、
歌いました。
本当の、
アンコールとして。

コメント (2)
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