kotoba日記                     小久保圭介

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「悪」と戦う

2010年06月10日 | 文学
高橋源一郎著「悪と戦う」を読みました。
すぐに読めてしまうのは、
字が大きくて、
行間がたくさんあって、
絵本みたいな、童話みたいな感じで、
仕上がっているからだと思います。
傑作、というものは、
もう一度読みたい、
と思わせるような本で、
この本がそうです。
ツイッターで、この本の、
メイキングを、高橋源一郎はやっていて、
それは本当に凄かったです。
「ここで書く文学のことは、出版物と同じレベル、それ以上のことをやります」
と宣言した通り、
内容は単行本化されても、
おかしくない、
とても中身の濃いものでした。
僕には、半分も判らなかったのですけれど、
あのメイキングで、「悪と戦う」を、
読みたいと思ったのは、
僕もそうでした。
そして、
読んでみて、
メイキングで少し触れられていた、
「さようならギャングたち」を思い浮かべて、
と、
その通り、
本当に素敵な新刊です。
「13日間で「名文」を書けるようになる方法」、
という高橋の著書の中で、
音楽家の高橋悠冶の文体、
「、」も「。」もない文章なのに、
それで意味が判る、
ということが紹介されていて、
僕もそれを、
ツイッターでやってみたところ、
とても新鮮でした。
すると、
高橋源一郎も、
この本の中で、
「、」も「。」もない、
文体を、ある章でやっていました。
これを発明した高橋悠冶が一番偉いのですけれど、
それを発見し、紹介した高橋源一郎も偉いです。
そして、それを小説に導入して、
何の違和感なく、一冊の本の中で、
文体がどんどん変わっていく、
そのスリリングさ。

大江健三郎が、
テレビで、
文体は、
「歩く速度に合わせると良い」、
「生活である」、
みたいなことを言っていました。
だから、
高橋源一郎のように、
一冊の本の中で、
ころころ文体が変わるのは、
生活のスピードが、
一日のうちで変化するのかもしれない、
と思いました。

権威から、逃れ、
またそれを忘れる作家、
高橋源一郎。
それはまるで、
子供が言葉というおもちゃで、
遊んでいるようです。
すぐに飽きて、
他に興味を持ち、
忘れる、
こと。
「悪と戦う」、
2時間で読める小説でした。
だから、たぶんまた読みます。
コメント
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