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【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

畑村洋太郎『直感でわかる数学』岩波書店、2004年

2007-04-27 16:18:29 | 自然科学/数学
畑村洋太郎『直感でわかる数学』岩波書店、2004年
 
 
 数学の本質をわしずかみで理解できる良書です。

 登場する単元は,
①三角関数
②行列
③指数・対数
④虚数・複素数
⑤微分・積分
⑥微分方程式
⑦確率

 個人的には,②,③,④が面白く読めました。

 数学は抽象の科学であり,思考節約の科学であり,約束事の世界であることがよくわかります。

  それゆえに,現実との関連,何が節約されたのか,何のためのどのような約束事なのかを理解することが大切で,問題を解くだけでは,数学の本質は分からないとのこと。合点!

 思考のテンプレート(紙型)を持つことが大事でそのためには自分で考える訓練が不可欠とのことでした。

森毅著『数学の歴史』(講談社学芸文庫),1988年

2007-04-20 00:36:46 | 自然科学/数学
森毅著『数学の歴史』(講談社学芸文庫),1988年。
 
  「なにゆえに、数学はギリシャに始まったといわれるのか」
  「なにゆえに、中世の数学史を語ることは、困難なのか」
  「いかなる時代が、新しい数学にふさわしかったのか」
  「いかなる数学が、あたらしい時代にふさわしかったのか」
  「なにを、資本主義は数学にもたらしたか」
  「いかに、数学は現代につきささっているか」

  これらの章の表題にみられるように、数学の歴史を人類の歴史のなかにくるんで叙述すことを狙った異色作です。

 全体的に概略的すぎるし(粗雑と言う意味ではなく、相当の知識がすでに読者にあるもの前提して執筆している)、読者に数学の細かな内容を問わないで展開しているのでよく分からない箇所がたくさんありました。

 たとえば、次のような記述があり、この調子で本全体が成り立っていると思ってもらえばよいです、
「複素関数論の一般論としての成立は重要な事件であったわけだが、それが一方では、ガウスの超幾何関数に始まってリーマンからリーやピカールやポアンカレにいたる微分方程式の研究を背景に持っていたこと、そしてさらに一方で、ガウスやアーベルやヤコビ以来、19世紀の数学をリードし続けた楕円関数の研究の基礎としてつくられてことを、忘れてはならない。これらの果実を得るために耕された土壌として、複素数の世界はあったのである」p.172)。

 
よく分かりにくいが、著者は「はじめに」で、このことを想定しているかのように、「一般的な世界史と一般的な数学との理解を前提としたいのだが、それは読者にとって苛酷な要求だろう」(p.6)と言っています。
 「この書から、なにかの結論をひき出されることをぼくは望まない。むしろ、読者にとっての嵐をひき出してほしい」のだそうです。

 17年で25刷で大変に売れているようです。

おしまい。

科学論

2007-02-27 10:47:18 | 自然科学/数学
佐々木力『科学論入門』岩波新書、1996年。
 
 「入門」書ということですが、背後に膨大な数学的知見の体系があり、それを前提として書かれているので、難しいところもたくさんあります。

 著者は「本書の課題は、ごく理性的な姿勢から、これまでに幾分つちかってきた科学史の知識を動員し、現代の焦眉の問題である科学技術に対する基本的態度を模索し、確立すること」(p.221)と述べています。

 古代ギリシャ時代の科学から現代の脳死、原子力発電所、環境問題まで科学と技術の歴史を駆け抜けるように書かれています。

 登場する人物は、アルキメデス、アリストテレス、ユークリッド、ニュートン、デカルト、ベンサム、ガリレオ、ヒルベルト、マルクス、シュンペーター、アインシュタイン等々。

 科学論の先学の研究もベースにしています。ニーダム、クーン、ヴィーコ、ハーバーマス、ツィルゼル、等々。

 学ぶことが多かったです。共感できる叙述がいくつかありました。①経済学への数学の適用が当初の思惑とは反対に、経済学の学問的内容を貧しいものにしてしまったとの指摘(p.7)、②マルクスがソ連解体後、葬り去られつつあるが、誠実な再検討に値する内容をもっているとの指摘(p.119)、③技術が社会的環境から自由でないとの指摘、随所にみられる科学の可謬性の指摘、④技術制度化の「インフォームド・コンセント」、⑤「環境社会主義」の提案などです。

 一読の価値があります。

数学の未解決問題

2007-02-06 17:06:27 | 自然科学/数学

 今日は数学の話です。吉永良正著『数学まだここがわからない-素数の理論から森理論まで』講談社新書、1990年。


 わが国の数学者でフィールズ賞受賞者は3人。小平邦彦(1954年)、広中平祐(1970年)、森重文(1990年)

 森京都大学教授の業績は「代数多様体の研究、とくに三次元極小モデルの存在証明」。数学の話というだけでも難しいのに、その数学の未解決問題をできるだけわかりやすく説明しているのだから、著者の努力に敬意を表します。

 といっても理解不可能なところは随所に。フェルマーの問題、リーマン予想、P=NP問題、これが現代数学が挑戦している未解決問題(p.151)とのことですが、このうちフェルマーの定理はこの本の出版後、1994年にA・ワイルズによって証明されました。

 その他の未解決問題は、例えば①奇数の完全数は存在しないのか? ②友愛数に奇数と偶数、奇数同士の組み合わせはあるのか? ③婚約数に偶数同士あるいは奇数同士は存在するのか? ④双子素数は無限に存在するのか?などなど。

 このアタリまでの話はついていけたが、「Ⅲ 難問・代数多様体の分類問題への挑戦」はお手上げでした。

でも数学の話は好きです。美学の世界です。