高野季理子は、中学生の時に見た夢で出会った男の香りを追い求めたまま、35歳を迎えていた。
そんなある日、昔の同僚で、現在はフリーランスでドキュメンタリーの監督をしている吉江礼司がインドネシアに旅立つことになり、その壮行会の為に仲間と集まったのだが……石田衣良『夢の香り』、
父の通夜で、幼い頃、わずかな期間、自分の面倒を見てもらった女性・初子の姿を見かけた喜実。ずっと彼女は父の恋人だと思いこんでいたのだが……角田光代『父とガムと彼女』、
大阪万博の頃。ある日、近所の市場で、不思議な少年が乾物屋の店番をしているのに出会った俺。しかも彼はその後、文房具屋にも現れて……朱川湊人『いちば童子』、
職場の後輩の結婚式の二次会でたまたま出会った、宮大工の男・鏑木健一とつき合い始めた木村信子。ところが、彼は突然青森に仕事に行ったまま連絡が取れなくなり……阿川佐和子『アンタさん』、
担当する作家Aとの打ち合わせの為に仙台にやってきた“私”。彼と別れた後、ひとり町を歩いていた私は、30年前に足繁く通っていたロック喫茶が今もそのまま在るのを目の当たりにする……熊谷達也『ロックとブルースに還る夜』、
3年前、夫・ヨシオを不慮の事故で亡くしたサツキは、一本の古いビデオテープを見つけた事をきっかけに、叔母の住む町へとやってきた……小池真理子『スワン・レイク』、
3歳年上の彼女とつき合っていた19歳の僕。彼女と知り合い、マンデリンの味を知った僕だったが……重松清『コーヒーもう一杯』、
28年ぶりに同窓会でかつての親友・真樹子と再会した品子。かつて、さまざまなものの匂いについて語り合った2人だったが……高樹のぶ子『何も起きなかった』の8編収録。
タイトル通り“香りと思い出”をテーマにしたアンソロジー。某コーヒーメーカーのPR用に書かれた作品のようです。
『何も~』はメール形式になっているのが、効果的ですね。
<08/12/25>