黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『短劇』坂木司(光文社)

2008-12-28 | 読了本(小説、エッセイ等)
ラッシュの地下鉄に乗り込んだ“私”。ぎっちりと詰め込まれた車内で、ぎすぎすした気分になるが、そこでひとりの青年に癒されて……『カフェラテのない日』、
“私”は、会社の給湯室にある、ありふれたステンレス製の流し台。アルバイトのA子の女上司は、苛立つことがあるとアルバイトの女の子に当たり散らし、意中の男性の前では猫をかぶる嫌な性格。苛められたA子の仇をとるべく、私は……『目撃者』、
結婚間近の女友達に密かな思いを寄せる僕。しかし彼女の結婚相手は……『雨やどり』、
先に女の子が乗っていたエレベーターに乗り込んだ“俺たち”。ところがエレベーターが地震で停まってしまい、閉じこめられて……『幸福な密室』、
ストレス発散に、愚痴を言い合う為の掲示板を見るのを楽しみにしている、“私”。そこでランキングの常連に入る投稿者は“MM”。その内容は、まるで私を指しているようで……『MM』、
堅実すぎる私。その迷い道のない人生を嫌い、家を出た娘。孫が生まれたと妻から知らされ、娘の元を訪れることにした私は、わざと道を迷うことにしたのだが……『迷子』、
場所は、とあるフレンチレストラン。ほどほどの人生で手を打った夫婦。年下の同僚にバースデイを祝われる女性。店のパティシエの父と彼につきあった家出少女。それぞれの思惑をはらみつつ、蝋燭の火は吹き消される……『ケーキ登場』、
ステカン(使い捨て看板)を取り付けるのが“俺”の仕事。一週間前に見かけた、あるステカンは一見素人の手による仕事に見えたが、結ぶことを楽しんでいるようなその仕事ぶりに、その存在が気になり始める……『ほどけないにもほどがある』、
中年男が三人。“最後のドライブ”に出発した。蕎麦に女…、人生の最後を楽しむ彼らだったが……『最後』、
過去二度、自分の人生に実害をもたらす人物には容赦なく鉄槌を下してきた“私”。そんな中、コネで入社したあの女が、私の人生に三度目の実害を与えようとしていた……『しつこい油』、
どの大陸からも遠く離れた島に、生き残った兵士がふたり・AとB。彼らが選んだ選択とは……『最後の別れ』、
二人の老人が椅子に腰掛けて会話をしている。彼らが怖いものは……『恐いのは』、
人間そっくりなロボットが出回るようになって十年ほど。三人の男たちはロボットを使った自分の隙なプレイについて語り合う。ひとりは、雨の中に待たせておくこと、もうひとりはわざとできないことをいい、あやまらせること、そして……『変わった趣味』、
ひたすら穴を掘っていた“俺”。地表からはさまざまな虫や石、玩具などが出てきた。やがて女と知り合い、子供が産まれても、穴を掘り続け……『穴を掘る』、
流行とテクノロジー、双方の最先端をゆくネイル・カレイドスコープ。しかしそれは高価で手が出せない“あたし”。ある日、同僚が見つけた、格安のカレイドスコープもどきを教えてもらい…『最先端』、
工場で働く男の仕事は、落ちてくる肉を拾うこと……『肉を拾う』、
街を歩いていて、ふと暴力的な衝動が芽生えることがある。そんな俺は、携帯サイトで女性を監禁するメンバー募集を見つけ参加するが……『ゴミ掃除』、
離婚して住む場所も失った“私”は、ちりちりパーマの中年女性に声をかけられ、物件を紹介された。入居条件は、大家さん夫婦に週一回夕食をつくること……『物件案内』、
友人の留守中、インコの世話を頼まれた大学生の“僕”。ふとした拍子に、壁に貼られたポスターの後ろに穴が開いてあるのを見つけるが……『壁』、
インターネット懸賞で、映画の試写会が当たった。仕事を辞め、妻に逃げられたばかりの“私”は、重い足取りでその会場に向かうが……『試写会』、
出先で駆け込んだビルのトイレで、不思議な正方形を見つけた“私”。その向こうには、通路があって……『ビル業務』、
営業帰りの地下鉄の駅で、自分そっくりの格好をした男を見かけた“俺”。電車が事故で止まった為、歩いて帰ることにした俺は、競うように歩く中でシンパシーすら感じるようになるが……『並列歩行』、
仲の良かった町工場の社長が自殺し、夢も希望も失い中で、40歳の誕生日を迎えた“俺”は、樹海へと足を向けるが……『カミサマ』、
とある地方のとある村に、他言無用の秘祭があるという。それは、17歳の男女を中心にした、通過儀礼的な祭りらしい。それを取材できることになった“私”。村人曰く、親しい者すらも信じられなくなるほどの恐怖を感じるらしく……『秘祭』、
昔々あるところに、眠り姫がいた。眠り続ける彼女の元へ行こうと心に決めた冒険者が見た光景とは……『眠り姫』、
夜。友達の家からの帰り道。石を蹴りながら歩いていた“私”は、「いてっ」という声を聞く。その後、落ちた石を拾おうとした私の手は、ぐにゃりと柔らかいものに触れた……『いて』の26編収録。

掌編集。
これまでの坂木さんの作風とは違った、ブラックな感じもあり、楽しめました。
個人的には、『ケーキ登場』『秘祭』あたりが面白かったです。

<08/12/28>