黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ある一日』いしいしんじ(新潮社)

2012-03-25 | 読了本(小説、エッセイ等)
京都、鴨川にほどちかい古い町屋に暮らす四十代の夫婦・慎二と園子は、十月のある一日を迎えた。
その日は、園子の検診日であり、出産予定日でもあることから、ふたりは産院に出かける。
診てもらった後、まだしばらくかかりそうだと云われ、あちこち寄りつつ、はもを食べ、まつたけを食べた後、破水した園子はふたたび産院へと向かう。
なかなか産まれずに痛みに苦しむ園子に付き添う中で、慎二の思いは産院と西マリアナ海嶺、地球の裏側のチリの坑道まで行きつ戻りつ、彷徨する。そして「いきもの」は……

京都に暮らす四十代の夫婦(いしいさん御夫婦?)に、待望の赤ちゃんが生まれる当日を描いたお話。
出産というこれ以上にないほど現実的な場に立ち会いながらも、はもやうなぎを始めとするさまざまな生物たちに思いは飛んで、どこか幻想的な雰囲気。
最後に記された、園子が書いたバースプラン(どんなお産がしたいと考えているか、という産院に提出した要望書)に込められた思いが、いろいろ切なくて、うっかり泣きそうでした;

<12/3/25>