黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ディーセント・ワーク・ガーディアン』沢村凛(双葉社)

2012-03-08 | 読了本(小説、エッセイ等)
県第二の都市で、県庁所在地でもある黒鹿市。
解体中の工事現場の足場から落下した、相沢工務店の作業員・犬塚志朗。社長・相沢卓と二人の従業員、牛山吉雄と折橋光彦が同じ現場にいたが、たまたま別の事柄に集中していたという。そんな彼らの証言に、不審なものを感じた、黒鹿労働基準監督署第2方面主任監督官の三村全は、周辺への調査を開始する……“第1章 転落の背景”、
自分の夫・児島修がサービス残業のしすぎて過労死すると、妻・みすずが署に電話してきた。
その会社は黒鹿プリンティング・サービス。先頃調査した折には問題のない会社だった。
気になり調べてみると、仕事終わりにアパートへと入って行った。浮気を疑うが、友人である黒鹿南警察署刑事課警部補・清田圭悟は、その部屋は警備課のネタであるといい……“第2章 妻からの電話”、
コンビニ強盗が、近くの製菓会社・ベニズン製菓の工場で働いている人間だという清田。襲われた店長が覚えていたのが、そこで働いている人間特有の甘いにおいだったという。襲われたコンビニに、数ヶ月前まで働いていたという男・寅田星希が怪しいと睨んでいるが、ベニズンではIDカードで出入りを管理しており、鉄壁のアリバイが。
そのアリバイが崩せないものか、臨見監督として入り込み調査してきて欲しいと頼まれた三村だったが……“第3章 友の頼み事”、
惣菜屋<味芳>のパート女性が、低賃金で働らかされているとの匿名電話の電話が。
三村は、比較的容易な案件だと考え、部下・加茂俊生にその仕事を任せるが、何故かその調査が遅々として進んでいない様子。
そんな中、以前仕事がらみで関わったことのある若き実業家・砂子虹大が、テレビでインタビューされているのを観た三村。砂子の最初の会社は三村が関わったことにより潰れたが、今では新たな会社を立ち上げ成功していた……“第4章 部下の迷い”、
スターグ工機で働く男・元川欣也が、作動中のロボットの下で死んでいたという。
マニプレータで胸を強打していたものの紐で首を絞められており、他殺と疑う余地はないが、人が立ち入れないように防護柵をめぐらしてあり、確実だった安全装置は作動せず。ロボットは何故とまらなかったのか。
検証現場に立ち会うことになった三村は、ある答えを導き出すが……“第5章 フェールセーフの穴”、
仕事の関係で、中学生の息子・繁樹と一緒に東京で暮らす妻・由香里から、突然、他の男の子供を妊娠したので別れて欲しいと切り出された三村。ショックを受ける彼に、さらに追い討ちをかけるような罠が待ち受けていた。
いまだかつて適用された者のいない法律を用いて、彼の罷免が分限審議会にかけられることになったという。厚生労働大臣からの圧力であるらしい。事なかれ主義の署長は、その前に辞表を出せと迫る。
心当たりは、砂子のことくらい……会社が潰れた逆恨みで、以前彼に復讐すると宣言していたのだった。次第に追い詰められてゆく三村。周辺の人々も何とかしようと奔走するが……“第6章 明日への光景”を収録。

労働基準監督署の監督官が主人公のお話。お仕事小説でもありミステリでもあり。
働くという事柄と密接に結びついているので身近でありながらも、あまりよくわかっていなかった役所だけに、とても興味深かったです。
いつもながら、一見地味とも思える題材を取り上げるのがうまいですね~。
……それにしても、奥さんとの話に決着のつかないままなんですが、どうなるのでしょう;

<12/3/7,8>