2010年8月。大学を卒業したものの、なかなか仕事が決まらず、就職活動中の五浦大輔。
そんなある日、母に頼まれ、昨年亡くなった祖母・絹子の遺品である蔵書の処分を頼まれる。その中の『漱石全集』の一冊、第八巻<それから>に、“夏目漱石 田中嘉男様へ”と書かれており、価値があるものではないかという。
子供の頃、祖母の本を触ってこっぴどく怒られたトラウマから読めずにいる大輔。元々古書として買われたものらしい、その本を売っていた店は、北鎌倉の<ビブリア古書堂>……学生時代、たまたま通りかかって見た女性が気になっていた店だった。
そこへ行き鑑定を依頼するも、鑑定ができる店主はあいにく大船総合病院に怪我で入院中だという。彼の家に近いことから、直接訪ねるようにと留守番の娘にいわれ出かけると、そこには件の女性・篠川栞子がいた。
彼女曰く、サインはあきらかな偽物。しかも彼女の店で買われた後に書かれたものだという。“田中嘉雄”とは誰なのか……第一話「夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)」、
ビブリア古書堂で店番として働き始めた大輔。
そんな中、常連のせどり屋の志田が店にやってきた。栞子に頼みがあるという。
同業者と在庫交換をしようと、待ち合わせをしていたが、突然の腹痛で山門のトイレに急いでいた志田。止めていた自転車に倒れ、その場にいた女子高生が自分が落とした荷物とともに、彼の持ち物である小山清の文庫『落穂拾ひ・聖アンデルセン』を持ち去ったというのだ。
そこから一番近い古本屋は、この店である為、もしここに売りにきたら教えて欲しいというのだが……第二話「小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)」、
9月。クジミンの『論理学入門』の文庫を売りにきた男がいたが、その後、それを止めに、賑やかな女が現われた。男は坂口昌志といい、女はその妻のしのぶ。彼女の出逢いのきっかけともなった、大切にしていたらしいその本を何故彼は売りにきたのか?
文庫に貼られた紙ラベル…<私本閲読許可証>から、彼がかつて事件を起こし、服役していたことが知れる……第三話「ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)」、
栞子が入院するほどの怪我を負ったのは、何者かに突き落とされた為だと聞かされた大輔。
その犯人は、栞子が父から受け継いだ、太宰の『晩年』のレア本を執拗に狙っている、大庭葉蔵と名乗る男であるらしい。
その本の複製を店頭に出して、その犯人をおびき出すことに……第四話「太宰治『晩年』(砂子屋書房)」を収録。
接客業にまるで向かない内気な性格ながら、本のことになるとめっちゃ熱く語る(そして鋭い洞察力を発揮する)栞子さんと、彼女の店で働くことになった本が苦手な青年・大輔が関わることになった、おかしな客たちを描いた連作短編。
栞子さんは、ちょっと遠子先輩@“文学少女”っぽいかな?(さすがに食べませんが/笑)。
マニアックな本トークは楽しいですが、ふたりの展開も気になりますね~。
<12/3/3>