黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『聴き屋の芸術学部祭』市井豊(東京創元社)

2012-03-14 | 読了本(小説、エッセイ等)
T大学芸術学部では、年に一度の芸術学部祭の最終日。
変わり者ばかりだと評判の第三文芸部サークル<ザ・フール>に所属する柏木は、生まれついての聴き屋体質。普段も聴き屋の彼だが、学部祭でも単独で看板をあげている。
そんな中、先頃文学新人賞を獲って作家デビューした友人・川瀬公彦とともに学部内を徘徊していると、美術棟で突然スプリンクラーが作動。それを止めるべく、あちこちを確認して回っていたふたりは、空き教室で焼死体を発見してしまう。写真学科四年生の安西芙美菜。その部屋に自分が撮影した写真を展示する突発企画の準備をしていたのだという……“第一話 聴き屋の芸術学部祭”、
突然、柏木のところにやってきた、演劇学科三年の美人・月子。
彼女が中心となっている学生劇団<ザ・ムーン>の次回公演の脚本担当が、彼女たちの仕掛けた悪戯により激怒。終章部を抜き取って逃げたという。
月子に強引に頼まれ、その物語<からくりツィスカの余命>を彼女とともに読み合わせつつ、その結末を推理することになった柏木。
森の奥に暮らす、魔女のおばあさんと一緒に暮らす人形たち。人形たちに命を吹き込むことのできる魔女が病気になったことから、もうひとり同様の力を持つ存在・姫巫女に会うべく森を出たツィスカ。
かつて、攻め込んできた隣国の兵を人形たちを操り、撃退したという姫巫女は、普段は塔に籠もっており、彼女のための祭の時のみ皆の前に姿を現すという……“第二話 からくりツィスカの余命”、
模型部に所属する二年生の牧野が、突然柏木の元にやってきた。
同じ模型部の紅一点、一年生の宇宙マニアの女子・成田が作っていた大作…NASAのジョンソン宇宙センターの模型が何者かに壊されたのだという。
四時間目の授業の後部室を訪れ、その惨状を目撃した牧野は、他の部員たちから犯人だと疑われており、逃亡中。その濡れ衣をはらして欲しいのだというが……“第三話 濡れ衣トワイライト”、
芸術学部祭で得た収益で旅行に出かけることになった、<ザ・フール>の一行。行き先はその話し合いをしていた喫茶店のマスターの知人が営む、箱根の旅館。
深夜に露天風呂に入ろうと外に出た柏木と川瀬は、そこで旅館に泥棒に入ろうとしている二人組…テツとヤスに遭遇。彼らを追ううちに、他殺体を発見する。警察に通報しようとする柏木たちだったが、後ろ暗いところのある泥棒たちに止められ、この殺人に、自分たちが関わっていないことを証明するようにと頼まれて……“第四話 泥棒たちの挽歌”を収録。

主にT大芸術学部を舞台にした学園ミステリ(四話目のみ旅行中)。ミステリマニアの美青年作家・川瀬や、超ネガティブ思考な先輩など個性的で自己主張の強い学生たちの中で、聴き屋をしている柏木くんが遭遇した事件の数々を描いています。
コミカルながらもミステリ的にもしっかりしていて、秀逸。続編にも期待♪

<12/3/13,14>