黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『モーニングサービス』三田完(新潮社)

2012-03-05 | 読了本(小説、エッセイ等)
医大進学の為、新潟から上京してきたヒカルは、新たな決意を胸に秘めていた。
浅草観音裏にたたずむ、カサブランカという小さな喫茶店。
店から漂うトーストのバターの香りに惹かれて立ち寄ったヒカル。そこは、マスター・士郎とその妻・富子。そして常連たち…藝歴四十五年の大姐さん・澄江、<おはつ>というすき焼き屋の店主・文造がいて……“モーニングサービス”、
菜種梅雨。澄江が、菊江という振袖さん(半玉)を店に連れてきた。秋田出身だという。
近所の江華飯店で働くベトナム人・ズオンがナポリタンを食べにきた。
数日後、隅田公園のベンチで仲良く話す、菊江とズオンを見かけた富子は、二人の仲が澄江にばれるのではないかと心配する。
その頃、女性らしさを身につける為、ヒカルは澄江から踊りを習っていて……“南風吹く”、
夏。三社祭りの頃。
人間国宝の市澤鶴右衛門(花菱屋)が、芝多での座敷で、菊江が組踊りに参加している<はな組>を呼んでくれたという。その座敷ですき焼きを供していた文造は、彼から声をかけられる。
文造はかつて、市澤鶴三という藝名の大部屋役者だったのだが、澄江も絡んだある理由により破門にされていた……“祭のあと”、
六月。新潟で開業医をしているヒカルの父・前田がヒカルとともに店にやってきた。
地元ではいじめられてきたヒカル。父はヒカルに理解があるが、母はいろいろ複雑らしい。
翌日、落合光男が亡くなったとの知らせを受けた富子は、息子の太郎とともにその遺体に会いに赤羽署に行く。
彼はSKD時代の富子の恋人で、ある日突然姿を消していた……“父親たち”、
澄江は、江戸浄瑠璃の古い流派のひとつ・鈴八節の家元・鈴八千代登世でもある。
そんな彼女が、人間国宝として選ばれ、店にコーヒーを飲みにこれないほど多忙に。
そんな中、気の置けない仲間たちだけで、カサブランカで澄江を祝うことになり、彼女の希望で、たまたま受賞連絡があった折に居合わせた、トロゲンさんこと吉原のソープ嬢・小野万里恵も呼ぶことに。
一方、ヒカルは大学での解剖実習に四苦八苦していた……“こんなもんぢやい”、
十二月。菊江の前に、高校時代の教師が現われ、菊江の離れて暮らす幼い息子・淳一の写真を見せる。
菊江は、彼とともに姿を消し……“冬三日月”の6編収録。

コーヒーの美味しい、浅草の喫茶店に集う人々の悲喜交々。
お店の人も常連客も、過去にいろいろなことを乗り越えてきた人たちで、それだけにどんな人でも受け入れてくれそうな懐の深さを感じますね。目立たないけれど、士郎さんが素敵すぎ♪

<12/3/4,5>