大手印刷会社である大塔印刷がパトロンをしている、老齢の女流書家・坂部幽嶺が、住んでいた京都の宇治の山房から姿を消した。
その行方を気にしながらも警察に知らせることを拒む社長・巌は、不肖の息子・三郎に捜索するように言い渡す。早速、宇治に飛んだ彼は、東大を卒業しながらも、その能力を生かせず“史上最速の窓際族”と称されている社史編纂室の柴健彦と共に、彼女の行方の手掛かりを探すことに。
幽嶺には、昭和四十四年の日米共同声明の折に開催された、書道の催しで「原爆を忘れるな」と叫ぶ奇行により、問題を起こしていた過去があった。
一方、巌の愛人でもある社長秘書の品本南知子は、東京都荒川区にある尾久工場で、無版印刷課の社員が三人連続して白血病死するという怪事件について調べることに。
ひょんなことから行動を共にすることになった三人は、ある書の存在に辿りつく……
天真爛漫な社長のぼんぼんと、若くして窓際族な青年と、社長の愛人兼秘書が、失踪した書家の行方と頻発する病死の謎について調べるミステリ。
一見無能と思われた三郎が、だんだん器の大きさを発揮していく…というあたりが見所。
微妙に、イマドキな話題に関連する真相なのは、偶然…でしょうね;
<11/6/1,2>