黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『夜の写本師』乾石智子(東京創元社)

2011-06-06 | 読了本(小説、エッセイ等)
右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠を持って生まれてきたという、カリュドウ。
本当の親は知らないが、産婆もつとめる女魔道師のエイリャに育てられた彼は、都エズキウムの近郊の豊かな土地である、キーナ村で暮らしていた。本好きな少年に育った彼は、身の回りにある本を読みあさり、知識を蓄えていた。
エイリャ曰く、いつかカリュドウ自身の手でひらく本のなかに、彼の求める答えがあるという。それは『月の書』という書物であり、時がきて、彼の新月の力が満ちたときにあらわれるという。
やがて、<収穫めぐり>と称して、魔道師の才能を持つ国中の子供たちの芽を摘む、エズキウムの大魔道師アンジストの手に
かかり、エイリャと、その後継とされた村の少女・フィンを殺される。エイリャの今際の際の言葉に従い、パドゥキアに向かったカリュドウ。
アンジストへの復讐を誓ったカリュドウは、エイリャを知るガルエクの元に弟子入りし、魔道師となるべく修行を始めるも、仲間の少女・セフィヤを自分の慢心から失うことに。
破門を言い渡され、魔道師の道を絶たれたカリュドウは、兄弟子だったラームから、セフィアの死の原因ともなった魔道師を介在せずに魔法を発動させる、不思議な力について聞かされる。
その力について知るという、ラームのおじだという写本工房の親方・イスルイールの元で写本の技術を学ぶこととなったカリュドウ。イスルイール曰く、その力を持つ者は、“夜の写本師”と呼ばれる存在だという。
やがて、カリュドウは『月の書』を読み、月の巫女、闇の魔女、海の娘…三人の魔女の運命とアンジストとの関わり、そして自らの宿命を知ることに……

『ゲド戦記』等の系譜に連なるような、正統派ファンタジー。
印刷技術のない時代、本を手書きで写していくのが、写本師の仕事ですが、『本』あるいは文字が、実質的に力を持つという設定が良いですね(写本の仕事の描写の、マニアックさが素敵)。
ただカタカナ名前が覚えにくいので、最初に登場人物表とか欲しいかも…(笑)。

<11/6/5,6>