黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』山本兼一(文藝春秋)

2008-08-04 | 読了本(小説、エッセイ等)
時は幕末。京で名代の茶道具商からふね屋善右衛門の愛娘・ゆずと恋仲だった二番番頭の真之介。しかしゆずには茶道の若宗匠との縁談が持ち上がっていた。真之介は善右衛門にゆずを嫁にしたいと頼むが、その対応はけんもほろろ。四間間口の店と、千両の結納金を持ってきたら嫁にやってもいい、という無理難題を出され、苦労してそれを用意したのに、善右衛門は知らぬふり。しかたなく千両を置いてかけおちした2人は、道具屋“とびきり屋”を始めた。ところがすぐにやってくると思っていたからふね屋からの追手が来ない。様子を見に行き、話を聞くとくと、壬生浪の芹沢鴨らが店に押し掛け、その千両を持っていってしまったのだという。ゆずはその金を取り返すべく、芹澤と桜湯の当てもの勝負をすることに……『千両花嫁』、
祇園新橋で芸妓をしており、高杉晋作といい仲だった小梨花。今では室町の千倉に嫁いでいたのだが、ゆずが町で見かけた彼女の様子がおかしい。どうやら嫁入り道具が家風に合わないと姑にいびられ、家を追い出されそうなのだという。その道具を用意したのがからふね屋だったことから、ゆずは父の元に談判に行く……『金蒔絵の蝶』、
とびきり屋の者たちは、いずれも“皿ねぶり”(ひとつところに落ち着かない人間)な癖のある者たちばかり。ある日、四条にある道具屋・桝屋に買取の代金三十両を持たせて使いにやった手代の鶴亀が、黒塗りの鎧櫃をひとつ持って帰ってきた。中に入っていたのは、ぼろぼろの大鎧。話を聞くと、土佐藩山内家の屋敷で坂本という侍から買ったものらしい。ところがその櫃の中から天正大判が現れ、大騒ぎ。真之介が土佐藩邸に金を返しにいくと、坂本から下宿させて欲しいと頼まれて……『皿ねぶり』、
かつて松永弾正が使っていたとされる伝説の釜・平蜘蛛の釜。その破片だという鉄くずの入った箱を坂本に渡して欲しいと高杉から頼まれたゆず。重要なのはその箱の方らしい。ところが誤ってそれを真之介が、近藤勇に売ってしまった。おまけに近藤はそれをゆずのかつての許嫁である若宗匠に売ってしまい……『平蜘蛛の釜』、
いつも世話になっている道具屋の湯浅喜右衛門から虎徹を十三振り手に入れた、真之介たち。しかしその中に、本物は一振りしかないという。刀には素人であるゆずはその真贋を見極めたというのだが、真之介は当てられなかった。店で、その話をしていると、近藤が現れた。かねてより虎徹を所望していた彼は、その中から自分が本物だと思う刀を持って行ったのだが、それは偽物。しかも折れてしまったことからそれが発覚してしまい……『今宵の虎徹』、
坂本を訪ねて武市という侍がやってきた。そのついでに開国反対論者である彼は、味方にしたい公家・姉小路公知への贈り物を真之介に相談、“この国がいとおしくなるような品”を、と所望される。一方、ゆずも坂本から、同じ姉小路が軍艦に乗ってもらえるような品を探して欲しいといわれていて……『猿ケ辻の鬼』、
市で見かけた古裂が、自分の守り袋と同じ辻が花であるのを見かけた真之介。自分を捨てた両親の手がかりになるものと、その出所を探る彼がたどり着いたのは、ゆずの兄・長太郎だった。そんな中、長太郎と若宗匠、表具師の藤村幸吉が壬生浪たちに捕らえられてしまう。彼らを助けに向かった真之介は……『目利き一万両』の7編収録の連作短編集。

新撰組や龍馬たちを相手にしつつ、道具屋として、夫婦として成長していく2人の姿が微笑ましいです。

<08/8/4>