黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『妃は船を沈める』有栖川有栖(光文社)

2008-08-20 | 読了本(小説、エッセイ等)
大阪港の第4突堤から車が転落し、そこに乗っていた男・盆野和憲が遺体で発見された。彼は、催眠ダイエットを売り物にした美容サロンを経営している盆野古都美の夫で、多額の借金を抱えていた。目撃者の証言では、岸壁には人影らしきものはなく自殺か事故のようにも思われたが、何故か彼は睡眠薬を飲んでおり、さらに1億円の保険金がかけられていたことから、その受取人である妻に疑いの目が向けられる。さらに彼は、古都美の友人である三松妃沙子に多額の借金をしており、その養子である潤一とは死の直前に電話で話していたらしい。
投資で財をなした妃沙子は、恵まれない境遇の青年たちの世話をしており、彼らからは“妃”と呼ばれていて、潤一も元々そんな取り巻きの中のひとり。そんな彼女はジェイコブズの短編『猿の手』さながらに、願いが叶う猿の手のミイラを持っているという。
この事件の捜査に関わることになった火村とアリスだったが……第一部 猿の左手、
ひとりで出かけたアリスは、9カ月ほど前の事件後に朝井小夜子や火村と飲んだ店に立ち寄る。その折に、ソフィアとゲオルグ、ミハエルとそれぞれに外国名を名付けた、変わった女主人。彼女は先月、火村も来たと告げる。前回同様、物悲しいファドが流れ……幕間、
そして2年後、震度6弱の地震に関西が襲われたその日。震源に近いところに住む設楽明成の家に連絡がつかないことを気にした青年・日下部亮太が様子を見に行くと、ガラスが割れており、男が倒れていた。男は加藤廉。拳銃で胸を撃たれて死亡。そして設楽夫婦は睡眠薬入りのワインで眠らされていた。加藤には汐野亜美というストーカーめいた女性がいたが、彼女は地震により閉じこめられていたという。事件の捜査に乗り出す火村たちだったが、彼らがそこで再会したのは、設楽氏の妻となっていた、“妃”だった……第二部 残酷な揺り籠を収録。

作家アリスシリーズ。2つの事件を“幕間”で繋いだ長編。
1部は『猿の手』をモチーフにしたお話でしたが、わたしもアリス同様ホラーな感じでとらえていたので、火村(=有栖川先生)の解釈は新鮮でした。
2部では、火村の役職(?)が、助教授から准教授に変わってましたね(笑)。

<08/8/20>