229)プロポリスに含まれるカフェイン酸フェネチルエステルの抗がん作用

図:プロポリスの抗がん成分であるカフェイン酸フェネチルエステル(CAPE)は水に不溶性であるため、水に加えてミキサーで数分攪拌しても水に溶かすことができない(左側のコップ)。したがって、CAPEをそのまま服用しても腸管からの吸収は極めて低い。10倍量のガンマ・シクロデキストリン(gamma CD)を添加してミキサーで数分間攪拌すると、CAPEを水に溶解でき、ミルク状の液体を作ることができる(右側のコップ)。ガンマ・シクロデキストリンを利用すると、CAPEの腸管からの吸収を高め、経口摂取によるCAPEの抗がん作用を高めることができる。


229)プロポリスに含まれるカフェイン酸フェネチルエステルの抗がん作用


 【プロポリスとは】
プロポリスは、蜜蜂が花々や樹皮などから採取してきた樹液と蜜蜂の唾液や酵素が混ぜ合わされて出来たニカワのような物質です。蜂が巣の中を無菌状態に保つために利用しており、強力な抗菌作用があります。プロ(PRO)というのは「防ぐ」「守る」という接頭語で、ポリス(POLIS)は「都市」を意味し、ここでいう都市とはミツバチの巣を示します。つまり、巣房をプロポリスでコーティングし消毒することにより、雑菌などの侵入を防ぐことから名付けられたといわれています。
古代エジプトでは、ミイラ化するための防腐剤として、インカ帝国では発熱を伴う病気などの治療薬として用いられていたと記録されており、現代に至るまで、ロシアや東欧諸国では、プロポリスが自然療法として盛んに使用されてきました。
蜜蜂が集める樹液はそれぞれの風土により様々ですが、樹液の種類によって薬効に大きな違いがあります。ブラジル産で、ユーカリの樹液を含むものが優れているといわれていますが、その理由は高温多湿地域で、バクテリアや細菌に犯されやすいため、強力なプロポリスを蜜蜂自身が必要とし、ユーカリをはじめ多様な植物の存在がそれを可能にしているとのことです。
プロポリスには非常に濃いフラボノイトが含まれていて、さらに種々のミネラル、アミノ酸、ビタミンなどを含み健康増進に効果があることが知られています。さらに、プロポリス抽出液中に抗がん作用のある物質が発見され、がんの予防や治療への効果も検討されています。
動物実験では、肝臓がん、乳がん、肺がん、皮膚がん、腎臓がん、大腸がんなどの発生や進展を抑制することが報告されています。培養細胞を使った実験では、抗がん作用を示す活性成分として、アルテピリンC(Artepillin C)カフェイン酸フェネチル・エステル(caffeic acid phenethyl ester)などが見つかっています。これらは、抗酸化や抗炎症作用の他、がん細胞を直接殺す作用などが報告されています。
プロポリス製品にはアルコール抽出の他に水抽出液や、錠剤、粉末入りカプセル等様々な製品が市販されています。がんの代替医療としてプロポリスを利用しているがん患者さんは多いようです。


【カフェイン酸フェネチル・エステルの抗がん作用】
プロポリスに含まれる抗がん成分の代表がカフェイン酸フェネチル・エステル(caffeic acid phenethyl ester:CAPE)です。培養細胞や動物実験で、発がん予防作用、がん細胞の増殖抑制やアポトーシスを誘導する作用、血管新生阻害作用などが報告されています。その作用機序として、がん細胞の増殖を促進するシグナル伝達を阻害する作用(転写因子のNF-kB活性の阻害など)などが報告されています。
プロポリスには含まれるCAPEの量は産地や製品によって異なります。CAPEを多く含む製品もあれば、ほとんど含まない製品もあります。プロポリスから精製したCAPEも販売されています。1グラムが350円程度です。
動物実験の結果から、1日1グラム程度のCAPEを摂取すると抗腫瘍効果が期待できます。そこで、プロポリスの代わりにCAPEを直接摂取するというがんの代替医療も可能性があります。カフェイン酸フェネチル・エステルは抗がん作用があり、毒性(副作用)が少ないからです。CAPEを含むプロポリスを多く服用するより、プロポリス中の抗がん成分であるCAPEを直接摂取する方が効率が良いと言えます。
しかし問題は、CAPEが水に溶けにくいことです。したがって、純粋なCAPEをそのまま経口しても、腸管粘膜から吸収されないため、効果が出にくいということになります。培養がん細胞を使った研究では、CAPEには強い抗がん作用があるのですが、腸管からほとんど吸収されないと体内のがん細胞に効果を出すことはできません。
CAPEに構造が似た物質にウコンに含まれるクルクミンがあります。このクルクミンも水に不溶で、そのまま服用しても腸管からの吸収が極めて悪いことが明らかになっています。
腸管からの吸収を良くするために、いろいろな工夫が行われていますが、その一つが疎水性のクルクミンやCAPEを親水性と疎水性の両方の性質をもったシクロデキストリンのような物質で包接する(包み込む)方法です。シクロデキストリンについては210話223話で解説しています。
例えば、上の図に示すように、CAPE 1gを100ccの水に溶かして、ミキサーのトップスピードで5分間攪拌しても、数時間後にはCAPEは下に沈殿して、水と分離してしまいます。このような状態では経口摂取しても腸管からほとんど吸収されません。
CAPE1gにガンマ・シクロデキストリンを10g加えて、水100ccに混ぜてミキサーで数分間攪拌すると、CAPEが水に溶け、ミルク状の液体になります。ガンマ・シクロデキストリンの分子量は1297でCAPEの分子量は284ですので、CAPE1gにガンマ・シクロデキストリンを5gでモル比が約1:1になります。
また、人参や黄耆などに含まれる
サポニンは界面活性作用があるので、疎水性(水に溶けにくい性質)の成分を溶かす効果があります。したがって、ガンマ・シクロデキストリンを使って水溶液中に分散させ溶解させたあと、漢方薬と混ぜると吸収効率を高めることができます。
このようにして、精製したCAPEを漢方薬に混ぜて漢方薬の抗がん作用を高めることもできます(224話225話参照)
ガンマ・シクロデキストリンは全く無毒で食品添加物として使用されています。ガンマ・シクロデキストリンは10gで200円程度です。
したがって、CAPE1gとガンマ・シクロデキストリン10gの1日分で550円、1ヶ月分で16500円程度で、カフェイン酸フェネチルエステルを使ったがんの代替医療が実践できます。
カフェイン酸フェネチルエステル1gにガンマ・シクロデキストリン10gを加え、水200~300ccを加えて、ミキサーで10分間くらい攪拌したものを、数回に分けて毎日服用する方法はがんの代替医療として効果が期待できます。ガンマ・シクロデキストリンは甘みがあり、そのままでも飲みやすく、また、豆乳や野菜ジュースや漢方薬などを使ったがんの代替医療を行っているときは、これらの飲料と混ぜて飲用するとその抗腫瘍効果を高めることができます。


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