がんの予防や治療における漢方治療の存在意義を考察しています。がん治療に役立つ情報も紹介しています。
「漢方がん治療」を考える
897)がん細胞のフェロトーシス誘導(その4):ドコサヘキサエン酸
図:ドコサヘキサエン酸(①)は微細藻類(②)や魚類(③)に多く含まれる。食事からドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取量を増やすと、がん細胞の細胞膜に多く取り込まれる(④)。抗がん剤、放射線照射、アルテスネイト、鉄剤、高濃度ビタミンC点滴、スルファサラジン、ジクロロ酢酸ナトリウム(⑤)は活性酸素の産生を高める(⑥)。飽和脂肪酸の多い細胞膜は脂質の過酸化が起こりにくい(⑦)。多価不飽和脂肪酸は酸化を受けやすいので、DHAを多く取り込んだがん細胞内では活性酸素の産生が高まると脂質の過酸化によって細胞は酸化傷害を受け(⑧)、脂質二重層が破綻し(⑨)、フェロトーシスの機序で死滅する(⑩)。つまり、食事からのDHAの摂取量を増やすと、がん細胞のフェロトーシスを増強できる。
897)がん細胞のフェロトーシス誘導(その4):ドコサヘキサエン酸
【細胞は脂質二重層で包まれている】
体を構成する個々の細胞は細胞膜で囲まれています。細胞膜は脂質二重層によりできており、この細胞膜によって細胞外と細胞内が分けられています。脂質二重層はリン脂質分子が膜状に並んで作られます。リン脂質分子は親水性のリン酸部分と、疎水性の2個の脂肪酸が尻尾のように繋がった構造をしています。
細胞の内外は主に水で満たされているので、リン脂質分子は親水性のリン酸部分(頭部)を外側に、水に反発する疎水性の脂肪酸部分(尾部)を内側にして、3〜6ナノメートル(nm)程度の厚さの2重の層を作って並びます(図)。
細胞の内外を分ける細胞膜は脂質二重層を土台にして、その中にタンパク質粒子が浮遊するように移動しています。脂質二重層に浮かぶタンパク質粒子は、受容体や物質を通すチャネルなどとして働きます。
図:リン脂質は親水性のリン酸部分(頭部)と、疎水性の脂肪酸部分(尾部)から構成される。疎水性の尾部は水によってはじかれ、互いに引き付けられて内側に並び、親水性の頭部の領域が水に接する外側に露出して膜状の二重層を形成する。この脂質二重層が細胞膜の基本構造になる。
【脂肪(油脂)はグリセリンと脂肪酸が結合している】
私たちは食物から様々な種類の「あぶら」を摂取しています。一般に、常温で液体のあぶらを油(oil)、固体のあぶらを脂(fat)と表記し、両方を総称して油脂と言います。ほとんどの植物性油や魚油は常温で液体であり、油になります。一方、多くの陸上動物(牛脂、豚脂、人間の脂肪など)と熱帯植物(ヤシ油、パーム油、ココアバターなど)のあぶらは常温で個体の脂です。
油脂は3価のアルコールであるグリセロール(グリセリンとも言う)1分子に3分子の脂肪酸 が結合した構造をしています。グリセロールには手(-OH)が3本あり、それに脂肪酸が結合して脂肪(油脂)になります。一般的には脂肪酸が3個ずつ結合してトリグリセリド(中性脂肪)と呼ばれます。グリセロールは全て共通するため、脂肪の種類による性状の違いは、脂肪酸の形態に依存します。(図)
図:脂肪(油脂)は3価のアルコールであるグリセロール1分子に3分子の脂肪酸が結合した構造をしている。グリセロールには手(-OH)が3本あり、それに脂肪酸が結合して脂肪(油脂)になる。 R1,R2,R3と示す脂肪酸は1 個ないし複数個の炭化水素(CH2)の連結した鎖 (炭化水素鎖)からなる。脂肪酸の鎖(R1,R2,R3)の構造の違いによって油脂の性状が違ってくる。
脂肪酸は1 個ないし複数個の炭化水素(CH2)の連結した鎖(炭化水素鎖)からなり、その鎖の両末端はメチル基(CH3)とカルボキシル基(COOH)で、基本的な化学構造はCH3CH2CH2・・・CH2COOHと表わされます。
脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸では、炭化水素鎖の全ての炭素が水素で飽和しています。一方、不飽和脂肪酸では炭化水素鎖中に1個ないし数個の二重結合(C=C)が含まれます。炭化水素(CH2)が連結した鎖の長さや二重結合の位置や数の違いによって、脂肪酸の性質が変わってきます。
【食べた脂肪酸が細胞膜に取り込まれる】
食事から摂取された脂肪は代謝されてエネルギー源となり、また分解されて生成した脂肪酸は細胞膜などに取り込まれます。細胞膜の構成成分として使われる場合、その脂肪酸自体は変化せず、それぞれの構造や性質を保ったまま使われます。つまり、細胞膜をつくるとき脂肪酸の違いを区別せず、手当たり次第にあるものを使用するのです。その結果、食事中の脂肪酸の種類によって細胞の性質も変わってきます。
さらに、その細胞膜の脂肪酸から作られるプロスタグランジンやロイコトリエンなどの化学伝達物質の種類も違ってきて、炎症やアレルギー反応や発がんに影響することが明らかになっています。例えば、リノール酸のようなオメガ6系不飽和脂肪酸を多く摂取すると、血栓ができやすくなり、アレルギー反応を増悪させ、がんの発生率を高めます。オメガ6系不飽和脂肪酸を多く取り込んだがん細胞は増殖が早く転移をしやすくなります。
一方、魚油に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)のようなオメガ3系不飽和脂肪酸を多く摂取すると、炎症やアレルギーを抑え、血栓の形成や動脈硬化やがん細胞の発育を抑える作用があります。
DHAやEPAを多く摂取するとがん細胞が抗がん剤で死にやすくなることも報告されています。その理由は、食事から摂取されたオメガ3系不飽和脂肪酸ががん細胞の細胞膜の脂質組成を変えることによって増殖シグナル伝達系に影響して増殖を抑えるからです。さらに、DHAが多く取り込まれるとフェロトーシスによる細胞死を促進することが報告されています。
人間を含め哺乳動物は体内でオメガ6とオメガ3の不飽和脂肪酸を合成できないので、食事から取り入れています。つまり、体内で作ることができないので、食事の変更による生体機能の変更を行うときの重要なターゲットになります。食事中の脂肪酸の種類によるがん細胞への影響の違いを知ることは、がんを抑える食事療法の実践において、極めて重要です。
【ドコサヘキサンエン酸はがん細胞の抗がん剤感受性を高める】
オメガ3系多価不飽和脂肪酸のα-リノレン酸は亜麻仁油や紫蘇油(エゴマ油)やクルミに多く含まれます。エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)は微細藻類や魚類の油に多く含まれますが、植物油には含まれません。
α-リノレン酸を摂取すると一部は体内でEPAに変換されますが、DHAへの変換は極めて少ないので、DHAは食事やサプリメントからの摂取が必要です。(図)
図:α-リノレン酸(①)は亜麻の種子や荏胡麻(エゴマ)の種子など植物油に含まれる(②)。エイコサペンタエン酸(③)とドコサヘキサエン酸(④)は微細藻類(⑤)や魚類(⑥)に多く含まれるが植物油には含まれない。α-リノレン酸を摂取すると一部はエイコサペンタエン酸に変換される(⑦)。しかしドコサヘキサエン酸への変換は極めて少ない(⑧)。したがって、完全菜食主義の人はドコサヘキサエン酸が不足しやすい。
ドコサヘキサエン酸(DHA)は細胞膜の構造成分です。食事やサプリメントで摂取後、DHAは血漿リン脂質に組み込まれます。細胞分裂しているがん細胞は、がん細胞の細胞膜を合成する過程で血漿リン脂質から脂肪酸を取り込みます。したがって、DHAの摂取を増やして血漿リン脂質のDHA濃度を高めると、がん細胞にDHAが多く取り込まれます。DHAは1分子に不飽和結合が6個存在し、活性酸素を産生しやすく、DHAを多く取り込んだがん細胞はアントラサイクリンなどの酸化ストレスを高める抗がん剤の効果が高まることが報告されています。
例えば、急速に進行する遠隔転移を伴う乳がん患者(n=25)のアントラサイクリンをベースにした化学療法に毎日1.8gのDHAを追加することの有効性と安全性を検討した臨床試験が行われています。その結果、血漿DHAの取り込みが高い患者では全生存期間が有意に延長する結果が得られています。この報告では「DHAの併用には有害な副作用がなく、がん細胞に高度に組み込まれると化学療法の結果を改善することができる」という結論になっています。DHAは抗がん剤治療の副作用を強めずに、がん細胞の抗がん剤感受性を高めるということです。
培養がん細胞を使用してこれらの細胞をDHA存在下で培養すると、さまざまな種類の抗がん剤に対する感受性が高まることが報告されています。さらに臨床試験で、化学療法の前に開始され、化学療法中に継続されたDHAの長期(数週間)補給は、抗がん剤に対するがん細胞の感受性を増加させることが示されています。特に、アントラサイクリンなどの酸化ストレス誘発性の抗がん剤の抗腫瘍効果を高めます。同様の結果が放射線療法でも観察されています。
アントラサイクリン関連の心筋毒性は、化学療法によって生成された活性酸素種による直接的な心筋傷害の結果として考えられているため、DHAの追加はこの毒性を増幅する可能性があります。しかし、この臨床試験では心臓毒性の増強は報告されていません。その理由の一つは、心筋細胞は細胞分裂していないので、食事から摂取したDHAは細胞分裂しているがん細胞に多く取り込まれ、心筋細胞にはあまり取り込まれないためと考えられます。
つまり、乳がんのアントラサイクリンベースの抗がん剤治療にDHAを併用しても、副作用は増強せず、抗腫瘍効果を高めることができます。この際、抗酸化物質のサプリメントは摂取しない方がよいと言えます。むしろ、抗酸化作用を阻害する治療法の併用が有効になります。
【ドコサヘキサエン酸は乳がんの補助化学療法の効果を高める】
術前補助化学療法は、手術前に抗がん剤を投与して、がんを小さくさせることで、がんの切除を可能にしたり、臓器の機能を温存させる目的で行います。一般的には、術前補助化学療法と手術を組み合わせることで治療効果を高めることができ、再発率を低下できると考えられています。乳がんの手術前の補助化学療法の効果をドコサヘキサエン酸(DHA)が増強することが報告されています。
手術前の補助化学療法としてシクロホスファミド/ドキソルビシン/5-フルオロウラシル(CAF)療法を受けた48人の局所進行乳がん患者を対象として、オメガ3不飽和脂肪酸(介入群)またはプラセボ(対照群)の無増悪生存期間と全生存期間を比較した二重盲検ランダム化比較試験の結果が報告されています。
細胞分裂の指標のKi-67の発現率は対照群が42.4±4.8%に対してオメガ3不飽和脂肪酸投与群では39.2±5.3%で統計的有意な低下を認めました。血管内皮細胞増殖因子の発現もオメガ3不飽和脂肪酸投与群で有意に低下しました。介入群の全生存期間(30.9±3.71週間)は、対照群(25.9±3.6週間)と比較して有意に延長しました。つまり、オメガ3系不飽和脂肪酸の補給は、CAF補助化学療法と乳房切除術で治療された局所進行乳がんの全生存期間と無増悪生存期間を改善することが示されました。
魚油の抗がん効果は主にエイコサペンタエン酸 (EPA) とドコサヘキサエン酸 (DHA) によると考えられています。しかし、DHAは細胞膜の組成を変化させるという独特の効果があるため、DHAの方がより抗がん作用が強いと見なされています。最近の多くの研究で、DHAが他の抗がん剤のアジュバント(補助療法剤)として非常に効果的であることが示されています。DHA を他の抗がん剤と組み合わせると抗がん剤の有効性が向上し、治療に伴う副作用も軽減されることが多くの動物実験や臨床試験で報告されています。DHAは抗がん治療の有効性を向上させる副作用の無い天然の強力な補助療法剤と考えられています。
【ドコサヘキサエン酸は肺がんの抗がん剤治療の奏功率を高める】
抗がん剤の有効性は、がんが縮小したかどうかで判断されます。CTなどの画像診断でがんの大きさ(腫瘍の最長径の和)が30%以上縮小した状態が4週間以上続いた場合に「有効」と言います。画像診断でがんが消失した場合を完全奏功と言い、30%以上縮小したが消失はしていない場合を部分奏功といいます。抗がん剤を使った患者のうち、完全奏功と部分奏功を足した割合を奏功率あるいは有効率と言っています。
進行肺がんにおいて、抗がん剤治療は延命や症状の緩和を目的に行われますが、非小細胞性肺がん患者に対するファーストライン治療の奏功率は30%以下です。「ファーストライン」とは、がんの化学療法において、最初に使う抗がん剤のことです。ファーストラインが効かなかったときに使う次の抗がん剤をセカンドライン、その次に使う抗がん剤をサードラインといいます。
ドコサヘキサエン酸(DHA)の併用が、抗がん剤の副作用を強めずに抗腫瘍効果を高めることが多くの臨床試験で示されています。例えば、進行した非小細胞性肺がん患者のファーストラインの抗がん剤治療(カルボプラチン+ビノレルビン or ジェムシタビン)に魚油のサプリメントを併用した場合の奏功率と臨床的有用性が、併用しなかった場合と比べてメリットがあるかどうかを比較した臨床試験の結果が報告されています。進行肺がん患者56例を対象にして、抗がん剤治療のみ(31例)と抗がん剤に魚油(EPA+DHAが1日2.5g)を併用した群(15例)に分けて検討しています。
奏功率(完全奏功+部分奏功)は魚油併用群が60.0%に対してコントロール群が25.8%で統計的有意(P=0.008)に向上が認められました。また臨床的有用性(完全奏功+部分奏功+病状安定)は魚油併用群が80.0%でコントロール群が41.9%で、これも統計的有意でした(P=0.02)。1年生存率は魚油併用群で60.0%に対してコントロール群は38.7%でした(P=0.15)。副作用の程度には両群の間に差は認められませんでした。
以上の結果から、抗がん剤治療に魚油(EPA+DHA)を併用すると、抗腫瘍効果を高め生存率を高める効果が期待できると言えます。
【ドコサヘキサエン酸はがん細胞のフェロトーシスを促進する】
がん細胞は細胞分裂をして細胞数を増やすために、細胞膜に使う脂肪酸の合成が亢進しています。さらに、がん細胞は自分で作った脂肪酸以外に、食事から摂取して血液中に存在する脂肪酸を積極的に取り込んで、細胞膜の合成に使います。食事からのDHAやEPAの摂取を増やすと、がん細胞の細胞膜にDHAやEPAが多く取り込まれます。
DHAは二重結合が6個存在する多価不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸は酸化されて過酸化脂質になります。DHAは酸化されやすいので、鉄を多く含み活性酸素の産生が増加しているがん細胞では、DHAは過酸化脂質を増やし、細胞膜の酸化傷害を増強します。つまり、DHAを多く取り込んだがん細胞はフェロトーシスが起こりやすくなるのです。したがって、食事からのDHAの摂取を増やすと、放射線や抗がん剤による細胞死を起こしやすくなります。
抗がん剤や放射線に対するがん細胞のDHA誘発性の感受性増加は、抗酸化物質であるα-トコフェロールを添加することによって用量依存的に阻止されました。これはDHAの抗腫瘍効果が酸化傷害と関連することを意味します。6つの二重結合を持つDHAは最も過酸化性の高い脂肪酸の1つであり、細胞膜にDHAが多く取り込まれると、抗がん剤によって誘発される細胞膜の脂質過酸化を増強して、フェロトーシスを促進します。(図)
図:食事(①)からのドコサヘキサエン酸(DHA)は細胞膜に取り込まれる(②)。DHAは酸化を受けやすいので、細胞内で活性酸素の産生が高まると(③)、脂質の過酸化によって細胞は酸化傷害を受け(④)、細胞膜が破綻してフェロトーシスで死滅する(⑤)。抗がん剤と放射線照射はがん細胞にフェロトーシスを誘導する(⑥)。食事からのDHAの摂取量を増やすと、がん細胞のフェロトーシスを増強できる。星印は活性酸素による脂質酸化を示す。DHAは酸化を受けやすいことを示している。
抗がん剤や放射線に対するがん細胞のDHA誘発性の感受性増加は、抗酸化物質であるα-トコフェロールを添加することによって用量依存的に阻止されることが示されています。これはDHAによる抗腫瘍効果増強が酸化傷害と関連することを意味します。6つの二重結合を持つDHAは、最も過酸化性の高い脂肪酸の1つであり、細胞膜に取り込まれたDHAは抗がん剤によって誘発される細胞膜の酸化傷害を増強して細胞膜を破綻してフェロトーシスを増強すると言えます。
【培養した微細藻類由来DHAが注目されている】
魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は魚の体内で合成されているのではありません。EPAとDHAを作っているのは微細藻類です。プランクトンが微細藻類を食べ、小型魚がプランクトンを食べ、大型魚が小型魚を食べるという食物連鎖によって、サバやサンマやカツオやマグロなどの魚油にEPAやDHAが蓄積しています。人間はこれらの魚を食べることによってEPAやDHAを摂取しています。
がんや認知症や循環器疾患の予防や治療にDHAやEPAが有効であることは確立しています。従って、DHAやEPAの多い脂の乗った魚を多く食べることが推奨されています。しかし、メチル水銀など海洋汚染に由来する有害物質の魚への蓄積の問題が、魚食を安易に推奨できないレベルまで深刻になっています。特に魚のメチル水銀汚染が重要な懸念になっています。
メチル水銀は毒性が強く、血液により脳に運ばれ、やがて人体に著しい障害を与えます。また、母親が妊娠中にメチル水銀を体内に取り込んだことにより、胎児の脳に障害を与えることもあります。魚摂取が増えるとメチル水銀の体内摂取が増え、胎児の脳の発育に悪影響を及ぼすことが明らかになり、厚生労働省は平成15年(2003年)に妊婦の魚摂取に関する注意事項を公表しています。
米国食品医薬品局は、マグロなどの大型魚に水銀濃度が高い例をあげ、妊婦や子供は食べないようにと呼びかけています。つまり、妊婦や小児にとって魚は多く食べてはいけない食品になっています。
そこで、海洋でDHAとEPAを作っている微細藻類を培養して、培養した微細藻類からDHAとEPAを取り出せば、汚染物質がフリーのDHA/EPAを製造できます。閉鎖環境での培養のため、汚染の心配がありません。藻類由来なので菜食主義の方も安心して摂取できます。
図:オメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は微細藻類が合成している(①)。プランクトン(②)が微細藻類を食べ、小型魚(③)がプランクトンを食べ、大型魚(④)が小型魚を食べるという食物連鎖によって、魚油にEPAやDHAが蓄積している。人間は魚油からDHAとEPAを摂取している(⑤)。環境中の水銀(⑥)が魚に取り込まれてメチル水銀になって魚に蓄積する(⑦)。DHAとEPAを産生している微細藻類をタンク培養して油を抽出すると(⑧)、汚染物質がフリーで、植物由来のDHA/EPAが製造できる(⑨)。
がん治療には1日3から5グラムのDHAの摂取が有効であることが多くの研究で示されています。通常の魚油の場合、DHA含有量は10%から20%程度です。1日5グラムのDHAを摂取するには25gから50gの魚油の摂取が必要になります。
そこで、微細藻類の中でもDHA含有量が極めて多いシゾキトリウム(Schizochytrium sp.)をタンク培養して製造したDHA(フランス製)を原料にした「微細藻類由来オイル(DHA含有量51%)」を製造してがん治療に使用しています。閉鎖環境での培養のため、汚染の心配がありません。しかも、植物由来なので、菜食主義者(ベジタリアン、ヴィーガン)も摂取できます。
詳細は以下のサイトで紹介しています。
http://www.f-gtc.or.jp/DHA/DHA-51.html
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