CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】サボテンの文化誌

2022-03-05 21:18:12 | 読書感想文とか読み物レビウー
サボテンの文化誌  著:ダン・トーレ

サボテンを主体にした多肉植物様々の歴史と
人間とのかかわり、歴史なんかを紹介した本でありました
思いのほか面白かった

自分も趣味でサボテンを育てているので、
がぜん興味をもって読んだわけでありますが
サボテンの歴史となりたち、様々な分野への活用
まぁ、しょーもないといえば、しょーもない、
キャラクター化の多様さなんかが、結構面白くて
確かにサボテンは、やたらめっぽう見かけるデザインだよなと思うのである

著者がイギリス人ということもあってか、
西洋人からの視点というか、コレクターの趣味嗜好や、
世間評判のとらえ方が、若干、日本人のそれと異なるようにも思ったりしていたんだが
画一的な大量生産品の中から、変わったものを見つけることを好むコレクターが
少数派みたいな書かれ方をしていたのが印象的で
日本だと、絶対そんなことなくない?とか、感じたりしたのである
いや、これは自分がそういうコレクター側だからなんだろうか

サボテンの歴史なんかで面白かったところでは、
食用として優れている点の解説で、
ここに書かれていることが、実際本当なんだけども、
こんだけ栄養的にも立派なら、もっと流行ってもよさそうだなと
日本におけるサボテン食用市場の可能性をちょっと考えたりしたのである
まぁ、大半が果実になってしまって、
ドラゴンフルーツと競合することになりそうだが、
あれは、日本だとまだそこまで甘いのがないからか、
人気ないから難しいのかもな
それよりも、糖尿病にきくらしい葉茎の話が興味深く
これこそ日本人のためなんじゃないかとか思ったりしたのである

もう一つ、私がサボテン収集を始めるきっかけにもなった
烏羽玉の話が興味深くて、当初よこしまな目的というか、
まぁ、食べるとトリップするという現地情報にひかれて育ててきていたんだが、
この認識が、若干異なるというか、
正式には、食べてひどい嘔吐とかが初期症状に出てから、陶酔感に至るというものなんだそうで
手持ちのを食べなくてよかったと安堵したのでありました
嘔吐ののちにという、このバッドトリップっぽいのは、
そういう傾向の人たちの中では当たり前のものかもしれんが
お手軽に食べるだけで気持ちが高揚するのを期待していた自分には合わないと思ったのである
すごい増えたけど、今後も食べずに育てていこう

本の目的としては、サボテンに関する様々なトピックを
網羅的に紹介したという本なので、
何がどうしたというものはまったくないのだけども、
なんとなく、サボテンを知るということに関しては
すごくよくできた本だったと思うのでありました
栽培や、品種紹介に偏っていないというのが、ある意味新鮮だと感じたんだが
サボテンというものそれ自体が、著者によるところのある種の置物と同じであるという
この生物なのにそうじゃない楽しみ方に集約されると
思ったのでありましたとさ
なんにせよ、楽しかった、また新しいのほしいなぁ
でも私より長生きするから、あんまり買うのはよくないなぁ

【読書】ノーベル文学賞が消えた日: スウェーデンの#MeToo運動、女性たちの闘い

2022-03-02 20:53:51 | 読書感想文とか読み物レビウー
ノーベル文学賞が消えた日: スウェーデンの#MeToo運動、女性たちの闘い  著:マティルダ・ヴォス・グスタヴソン

ノンフィクションであります
一連のMeToo運動と、スウェーデン・アカデミーのスキャンダルを追った内容で、
正直、この問題が世界的に大騒ぎだったという外縁しか知らない身分で読んだので
こういう話だったのかと驚いて読み終えたのでありました
いくつもの問題といいたいところだけども、
根っこはごく単純な、セクハラという程度では済まないおぞましいことがあった、
それを許容してきた世界というものがあった
この運動のあとで、それが明るみにでて、人類史で初めて正されたと
歴史的な事件ともいえる、人類における性的搾取への追及を行った内容でありました

大きなテーマとしては、性的搾取というものの在り方を問う、
それを許容しつづけてきた、これまでの人類をどうみるかと
そんな大きな話にもなりかねない内容だったわけだけども、
イベントというか、事件としては、
スウェーデンアカデミーという、ノーベル文学賞を選定するほどの権威ある会合にて、
その首魁がセクハラというか、レイプ事件を起こしまくっていたと
そういうお話であります
セクハラという単語だとずいぶん軽くなってしまうが、
事件の内容は完全に強姦罪のそれで、どうしようもないのに
それを見て見ぬふりしてきたのか、どうしてだか、
長らく訴えられることがなかったという問題でありました

結局は、その権威をかさにきて、様々な便宜、あるいは脅迫を含めて、
性的搾取を迫っていた男が、アカデミーの首魁であったというのも問題なんだが、
それはその人の本質によるものなのか、
権威というものがそうさせていたのか、両方なのかと
読んでいて、そこまで好色になれるものか、
いや、当たり前に許容されている世界というのがあったんだろうかと
考えさせられてしまった

スウェーデンアカデミーという権威でもあるが、文化的な象徴、
ある種のサロンといった様相の中だからこそ、
そのグロテスクな事件が、さも当然のように許容されていたとすら思えてしまう
扱いの難しい事件であったように感じる
女性たちも、何かを期待したからなのか、逆らえなかったのか、
そのあたりがトレードオフになったりという論争にされてしまい、
それ以前に、性的搾取というそれそのものの善悪にたどり着けないで苦しんでいたというのが
ごく世間にありふれた内容でもあるんだろうとすら思わされる

きわめてデリケートな問題だなとも思ってしまうんだが、
強姦というものを定義するのは、きわめて難しいと改めて思い知ったというか
明らかに搾取された側が被害者なのに、その被害が情緒や、被害者側への瑕疵を探す行為につながってしまうというのが
この問題の難しいところなんだと、改めて思い知ったのでありました

この事件によって、そういった論争が前進したのか、
思想に対してものすごくインパクトのあるものだったのではないかと
思うのでありました