CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】夜果つるところ

2023-11-11 21:04:57 | 読書感想文とか読み物レビウー
夜果つるところ  作:恩田陸

SFかと思えば、奇譚のようでもあり、不思議な世界観の物語だった
それでいて、バックボーンにロシア王朝があったり、
趣向が凝っていて、大正から昭和の初めころには、こういう雰囲気があったのかもと
思わされるような、独特の淫靡さもあって楽しく読めた

ある娼館と思しき館の話で、
そこにいつからか住み着いている子供の視線、視点から、
その館の様子や、人間模様、そして幻視される幽霊のようなもの
それらと触れる日々、目にするものに対しての自分でもどうしたらよいかわからぬ気持ちなど
様々なことをごたまぜにしつつ、だんだんと狂騒が極まっていくと
そんな感じで、もう、最初っから、破滅に向かっていくような雰囲気が
実によい塩梅で、すごく面白いわけでもないのに
ずいずい読まされていったのである
どう終わるんだ、何が起こるんだ

三人の母と呼ばれる人たちがいて、その描写もさることながら、
娼館にやってくる怪しい軍人たちのいで立ち、その過去、人間性なんかが
露骨にグロテスクで、なんとも嫌な気分になるんだが
不思議なもので、その陰湿さみたいなのが
物語にぴったりとしていて、嫌悪とは異なる感情を催すのでありました

人間の弱さやら、過去なんていうもの、
それをどうともしないおぞましさみたいなのが、
上塗りされ続けていくような、地獄とも異なる不気味な世界で、
別に子供には何も起こらないような、あるいは、触れられないだけで、
何かに巻き込まれているようなという
浮いた雰囲気が漂い、最期の時には、やっぱりなという
妙な納得すらあるようで、非常に興味深かった

序盤、ずいぶんと描写が観念的すぎて、ちょっと入り込むのに時間がかかってしまったけど、
慣れてくるとその描写と、それによって想起される情景や、館そのものが
なんとも面白いものと読めるようになって、
じっくりと没頭して読むべき本だなと思ったのである
外連味といえばいいのか、「夜果つる」なる単語の良さが、
中身はともかく、非常にかっこよく決まっていると感じた