CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】あひる

2022-12-17 20:51:52 | 読書感想文とか読み物レビウー
あひる  作:今村夏子

物悲しい短編だった
結構前の作品だと知らずに読んでしまったんだが、
読んでみると、「むらさきのスカートの女」を彷彿とさせるというか、
そういう感触のある内容なんだけども、あれほど狂ってないというか、
不条理が面白さに化けてない感じで、
ちょっと気持ち悪いでもないが、悲しさが先立つ物語だったと思うのである

表題作の家族のありようというか、
欠けているものを何かで埋めているという
知らず知らずの状況というのが、ものすごくありそうというか、
こう書かれると、人生そんなこと多そうだよなと気づかされるみたいで
居心地が悪いというか、怖いなぁと思って読んだりしてしまうんだが
なんとなし、語られないけども、声が聞こえてきそうな、
期待と、それを用意する残酷さみたいなのが見え隠れしてて
興味深い内容でありました

あひるを飼うという状況が、そんな朗らかなものを運んでくるとは思いもしなかったと
読み手も思うんだが、登場人物たちもそうで、
やがて、それが不穏なことから目を背けさせるでもないが、
オチで、その事実を突きつけられるのが、
またタイミングとしても、完全に遅きに失したところでという感じが
鋭くズドンときいててよかったと思うのである
あひるかわいそう

書下ろし二編がさらについてて、こちらは
どちらかというと連作に近い内容になってて、
ああ、そういう話もありそうだなと思って読んでたんだが
クジャクとキジを間違えるというか、勘違いするということが
子供時分には、わりとある話といった感じでエピソードになってたんだが
言われてみるとそうかもと思いつつも、
前にもどっかで書いた通り、野生状態のキジを一回も見たことないので
ちょっとわからないと思ってしまったのである
そういう問題ではない表現なんだけどもな

無邪気を装った悪意でもないけど、
全体的に、隠しているでもないけど、言われてないし、語られていない、
後ろ暗いところを匂わせるでもないが、そういうものとして描きながら
それをつっつくのは、無責任というか、無邪気なそれだというのが
共通している内容だったわけだけども、
世の中、あるいは、人生そういうもんで、
みんないろいろなことから目をそらして生きてんだよなと思ってしまったのだった