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CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

火群のごとく

2010-09-02 22:47:01 | 読書感想文とか読み物レビウー
火群のごとく 作:あさのあつこ

なんの気なしに読んでみたのですが
随分と面白かった
そんなステキ時代小説でありました
まさに時代劇を観ているような
そういう独特の風景描写も見事で、
それでいて、青春の淡い感情というか、
友情と成長とを描きつつ、寂しくあり、悲しくありと
非常によくできていて、驚いた
流石、あさのあつこさんであります

バッテリー読んだことないのですが
青春モノとして随分よろしいと聞いておりましたので
これを読んで、その評判をなるほどと頷いた次第
江戸時代と言ったらいいのか
多分、架空と思われる藩でのある事件をとりまく話し
そんなところでありまして
こういう、いわゆる時代小説大好きの私としては
なかなかたまらなかったのであります

言葉遣いも丁寧で、それとなし、難しい言葉がちりばめられる
そういうところも、なんというか雰囲気があっていいなぁと
随分喜びながら、気付いたら、一晩で読み切ってしまったところ
サスペンスでもないのですが、
推理要素もありつつ、じわじわと後半に従って
事件の全容が見えてきて、顛末
そういう物語が楽しめるのであります

ただ、その推理部分というのが、結構あとから出てくるというか、
序盤は正直、友情というものを描いた
少年小説でありまして
その部分もそうとうに秀逸でありました
童子とよぶにはもう大人になりつつある
その機微を描きながら、葛藤とか理解ではなく、
消化できない感情とかが
かなり見事に描かれておりまして
ずいずいとひきこまれてしまう

終盤、突然にサスペンス仕立てになってしまったと
ちょっと戸惑うほど、中盤までの友情劇に
読みどころたっぷりなのであります

まぁ、そんなえらそうな感想を並べておきながら
一番素晴らしいと思ったのは
少年を扱っており、当然のように、これはもう
古典手法と読んでもよいのではないかというほど
驚くほど見事な
姉萌え小説であった
その部分が、一番、一等素晴らしかった

正直ネタバレになってしまうのですが
多分、この部分のネタバレは誰も気にしてないと思い
あえて書かせていただきますけども
実に見事な姉萌えであります
義理の姉という、ステキなジャンルでありながら
そこに懸想してしまう若い主人公
その、淡い憐憫というか、恋心を知らずと呼ぶか
まるで、姉からの描写をなくして
もんもんとさせておいて、
亡き兄を想い、出家する覚悟を聞かされる顛末

この、絶望的に弟扱いと呼ぶか
子供扱いから抜けきれないところが
本当、白眉でありました
この部分だけで、どんぶり飯が食べられてしまう
それほど見事な姉萌え小説でありましたので
絶賛して、ここにメモしておくのでありました