高峰秀子さんは生前に色々な名言を残していますが、彼女は原節子・山田五十鈴・入江
たか子を日本映画史上の三大美人と述べています。今回は少々時代を遡らせて大映時
代の入江たか子さんです。
私は大映後に新しい仕事に従事して、東京に三度ばかり住んでいます。時々でしたが有
楽町のツイーンビルにあった「とんかつ屋」で食事をするのも楽しみの一つでしたが、この
店は入江たか子さんのお嬢さん入江若葉ご夫婦が経営されていて、若葉さんがレジに居
られたりするほか、入江たか子さんも時々店のお手伝いをされていると聞き、お会い出来
ればと期待していたのですが、残念ながらご本人にお会いする機会はありませんでした。
彼女は子爵東坊城家の出身で華族の娘が映画女優に…と大きな話題を巻き起こして昭
和2年(1927)に日活へ。出演した映画はいずれも大当たりで、瞬く間にトップ女優に上り詰
めます。昭和7年(1932)には新興キネマと提携して、女優では最初に設立された入江プロ
ダクションを立ち上げます。その前後に結婚して出来た子が若葉さんです。製作する作品
は全て大ヒットしますが、昭和13年(1937)に東宝と契約、第一作が長谷川一夫との「藤十
郎の恋」でした。戦時中に3人のお兄さんを続けて亡くし、仕事への情熱も失った彼女に襲
い掛かったのはバセドウ病で、大手術により命を留められることになります。
そこに新興映画時代に知り合っていた永田社長に誘われて、大映と年間4本の出演契約
を結びますが、従来の彼女からは思いもつかない「化け猫映画」が企画されていて、思い
ついたのは永田社長だそうです。彼女は生活のためと割り切り、昭和28年「怪談佐賀敷」
(1953)をはじめ5本の「化け猫」作品に出ていますが、彼女の熱心で迫真の演技が大受
けで5本とも大当たりしました。私たちは彼女の心境は如何だったのだろうと思いました
が、化け猫を演じた姿を女優の生き様として知って欲しいと、若葉さんに言っていたそう
で、化け猫映画も進んで見せていたそうです。凄い女優魂ですね。
それと、彼女に絶頂期に彼女の作品を何本か撮った溝口健二監督は、その後に彼のプ
ライドが保たれなかったのか、反感だったのか、大映で鉢合わせした「楊貴妃」で執拗に
ダメ出しをした挙句、大勢のスタッフがいる前で「そんな演技だから化け猫映画にしか出
られないんだよ」と罵倒し、さすがの入江さんも降板してしまった話は有名です。
これは私が知る溝口監督の汚点の一つです。
昭和34年には芸能界に見切りをつけて引退し、銀座でバーを開いたり娘の店を手伝った
りして余生を送るのですが、無理に引っ張り出され「椿三十郎」など3本に出演していて渋
い演技を見せています。平成7年(1995)享年83歳、肺炎で亡くなりました。
入江たか子さんといえば化け猫ですが、ホラーものが苦手で、実は見たことがありません。初めて入江さんを見たのは「椿三十郎」の家老の奥方役でした。そのころはもう引退なさっていたのですね。今回初めて知りました。その後は2時間ドラマの「麗猫伝説」で上品なお顔を見せていただきました。入江若葉さんは何といっても東映の「宮本武蔵」のお通さんが初々しかったですね。なんだか大映の話題でなくて申し訳ありません・・・。
おつかれさまです
私が最初に 入江たか子さんを拝見した作品が大林宜彦監督「時をかける少女」での、「深町くんの御祖母ちゃん」役でした。
上原謙さんとご夫婦役と言う事も有り、とても短いシーンでしたが、上品で綺麗な方だなぁ・・と思いました
それからは、タム親父さんと同じく「椿三十郎」、「麗猫伝説」「猫モノ」とさかのぼって観て居ますが、戦前のスタープロ流行時に自前の撮影所まで所有した「入江プロ」を持っていたというのは驚きです。
戦前に撮影された入江さんの作品を中な拝見出来ないのがとても残念です・・
「
入江さんが大映に在籍された時期には私も在籍したので思い入れはひとしおです。
若葉さんには彼女がお店に出ていた「とんかつ屋」で何度もお会いしましたが、
晩年の入江さんにお会い出来ず、とても心残りです。
入江さんは美人に加えてとても品がある方でした。その入江さんがいくらなんでも
化け猫をやるなんて、私的にはびっくり仰天です。
先代の鈴木澄子さんも美人でしたが、入江さんともども美人だからあの壮絶さが
出たのかも知れません。
溝口組のあの現場には立ち会ったスタッフも多く、いつまでも話題になったお話です。
目黒幸子さんの訃報に接しました。「宇宙人東京に現る」で川崎敬三さんと主演でしたね。「女賭博師」や「成熟」やテレビの「海底人8823」など、私にとってはなじみの深い女優さんでした。ネットで調べましたが、最後まで大映に在籍されたそうで、中島様がおっしゃるところの「戦友」だった方ですね。井上監督と結婚されたことがあるというのは初耳でした。ご冥福をお祈りします。
目黒さんが亡くなりましたか、寂しいですね。東京撮影所の欠かせぬ名脇役さんだったと
思います。
今日のブログに書いたのですが、もと京都撮影所長・鈴木さんの奥様から、本のこと以外に、
ご本人が数年前に亡くなられていたお知らせがあり、考え込んでいたところでした。
戦友がどんどん減って行きます・・・。
入江たか子さんの化け猫映画出演に関わる話は色々あるようですね。
当時の大映重役夫人で母もの映画で著名だった某女優にもずいぶんと辛く当たられた、と何かで読んだ記憶がありますよ。芸能界は厳しいですね。
入江たか子さんをねたんだ業界人は大勢います。それだけ全盛時代の入江たか子人気は
凄かったということなのでしょう。
私は気品を備えた入江たか子さんが大好きでした。