数々の名作・大作を数々手がけてきたロン・ハワード監督が、19世紀に捕鯨船エセッ
クス号を襲った実話を映画化したものです。ハーマン・メルビルの名著「白鯨」に隠され
た事実を明かしたノンフィクション小説「復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇」をも
とに、太平洋沖で巨大な白鯨に襲われた捕鯨船の乗組員たちの死闘と、余儀なくされ
た漂流生活を描き出しています。
主人公をクリス・ヘムズワースが演じるほか、共演にはベンジャミン・ウォーカー、キリ
アン・マーフィ、ベン・ウィショーらの見ごたえあるキャストが集結です。
間違いなく面白い映画を撮る監督といわれるロン・ハワードですが、今回も外していま
せん。主演?の白鯨はCGを使い全長30mのマッコウクジラとして迫力満点で登場し
ます。
物語は白鯨との闘いと漂流からなっていますが、どうしても対白鯨に目が行ってしまい
ますし、これだけでも一本分あります。漂流部分にも見どころありで、大岡昇平の「野火」
的挿話が入っていますが、この部分はサラリと描いているので助かります。色々と異論
を吐く人もいるでしょうが、やはり見ておくべき一本だと思います。
邦画の鯨作品といえば、大映の「鯨神」と日活の「荒れる海」くらいでしょうか。「鯨神」は、鯨がCGではなく実物大模型とミニチュアなので、多少つながりの悪いところもありますが、本郷さん・勝さんの主演コンビのほか、可憐な志保さんと勝気な江波さんというWヒロイン、北城寿太郎さんや上田吉二郎さんといった脇の方々まで、キャストが充実していたと思います。荒っぽい海の仕事をしている人たちが敬虔なクリスチャンという設定も少々びっくりでした。日本の捕鯨文化に関して、もっと注目されてもいい作品だと思います。
「鯨神」の原作者は当時新進気鋭の宇能鴻一郎氏です。この時、右能氏は福岡
在住でしたので私も何度かお会いしています。
映画の出来は正直言っていまひとつでした。この手の作品は日本映画の一番不得手
のものだと思いますよ。